追憶令嬢のやり直し

夕鈴

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第九十六話 ラマン

茶会後、レオ様とエイベルとリオのファンが増えました。
新しいファンの方はしつこいです。エイベルのファンにはきちんと教育しましたが問題なのは1年生の目がギラギラしたリオのファンのご令嬢で、正直怖いです。

「リオ様」

最近はリオと一緒の見回りをクロード殿下に頻繁に言いつけられます。リオが後輩に声を掛けられたので繋がれた手を解きたいのに解けません。

「リオ様、先に行きます。離してください」
「すぐ終わるから。生徒会案件?」
「違います。あの」
「それなら用はない。俺は婚約者以外興味ないから」

私を巻き込まないでください。目の前の令嬢から敵意の視線を向けられました。

「リオ様、大事な相談かもしれません。困った後輩は放っておくなどいけません。私は失礼します。離していただけないなら、次の休養日はお付き合いしません」

リオの手が離れたので、礼をして立ち去りました。私の失態とはいえリオとの婚約は早まりましたわ。両当主が同意しているので拒否できないですがため息がこぼれます。
第二王子殿下を囲む無礼な令嬢はいないので、レオ様がご無事なのが救いです。
手を振るレオ様に足を止めます。

「レティシア、次の休養日出かけないか?許可が出た」
「エイミー様とは」
「素材を集めにビアードの森に行きたい」

楽しそうなレオ様に笑ってしまいました。

「わかりました。ビアード領を案内しますわ。転移魔法で来ますか?」
「ああ」
「来る時間だけ教えてください」

レオ様がビアード領で遊ぶのは初めてです。
魔物の素材採集なら護衛の手配だけはしっかりしましょう。せっかくだからフィルも誘おうかな。レオ様と一緒に見回りをして生徒会室に向かいました。

***

ビアードにレオ様を迎える用意に気を取られてリオとの約束を忘れていました。

「今日って俺と過ごしてくれるって」

不機嫌そうなリオに笑みを浮かべてごまかします。

「晩餐はご一緒しましょう。レオ様と素材集めに行ってきます。うちではご自由に過ごしてください」
「俺も行く」
「構いませんがリオ様が楽しくないと…」
「レティシア、準備できたよ」

フィルは最近はビアードの護衛騎士の制服を着ています。私に婚約者がいるため出かける時は護衛と言う名目で同行しています。
不機嫌そうなリオは気にせず馬屋に行きます。時間は有限ですもの。
事前にレオ様に欲しい素材は聞き、どれもビアードの森に生息するので問題ありません。
魔力を感じて見渡すと魔物を見つけました。
念の為リオにレオ様を任せましょう。

「リオ様、レオ様をお願いします。護衛がついてますが念の為」
「ああ」

魔力を持つ熊の魔熊です。フィルが気配を消して近づいていきます。
私は防御担当なので、フィルが斬りかかったので熊の爪から放たれる衝撃波を相殺します。首が落ちました。討伐は終わったのでレオ様達を呼んで一緒に解体をしました。
この熊は食べられます。

「レオ様、毛皮はいりますか?上で寝ると暖かいですよ」
「その上で?」
「はい。野営の時に見つけたら幸運です。必要なら処理しますよ」
「頼むよ」

皮を水魔法で洗ってフィルが火の魔法で乾かします。

「レオ様、この上に是非寝転んでください。乾かしたばかりなのでフカフカで気持ち良いですよ」
「レティシア、王子に勧めるものでは」

止めるフィルの言葉を気にせずレオ様が寝転がりました。

「これはいいな」
「私達は行ってくるのでここで休んでいてください」

レオ様達を騎士に任せてフィルと一緒に獲物を狩りに行きました。
レオ様は狩りではなく解体目的なので、狩ったものをマオに魔法で運んでもらう予定です。

3匹魔物を狩った後に全身に悪寒が走りました。フィルが警戒して周囲を見渡しています。
空から氷が降ってきました。見たことのない大きく銀色の鳥が足に赤いトカゲを持っています。

「グァ」

鳥の鳴き声で木々が凍り、切れ長の目に凶暴な顔をしているので討伐しないといけません。
レオ様達が離れていて良かったです。
逃げられないように一帯を結界で囲います。

「マオ、拘束を」

マオが風魔法で拘束しますが鳥の動きが速く、躱されます。
氷なら火がいいですよね。

「フィル、私の魔力を使ってください」

地面に突き刺さる羽は凍っているので剣は効きません。
フィルの背中にしがみつきます。フィルは私を背負っても自由に動けます。
マオがきっと捕まえてくれるので、フィルを信じてしがみついて魔力を送ります。目を閉じてフィルの魔力の波長に合わせるように集中します。
波長の合った魔力は属性が違うものでも体に馴染み、魔力が使いやすくなります。
魔力の少ないフィルが大技を使う方法を一緒に探し練習しました。魔力操作のうまいフィルだから私の魔力を即座に馴染ませすぐに行使できます。エイベルは繊細な操作はできないので、時間がかかりますが魔力量が多いのでエイベルには必要のない技術です。
暑さに目を開けると鳥が炎に包まれています。流石マオとフィルです。
フィルの背中から降りて、フィルに魔力を送り続けます。

「バキッ、」

音に視線を向けると炎の中、大きいトカゲが鳥を食べています。トカゲがどんどん大きくなります。
これまずいですわ。
先ほどの鳥と比べ物にならない強力な魔力を感じます。

「レティ、駄目」

水魔法で攻撃しようとするとディーネが肩の上に姿を現し止められました。

「大丈夫だから、そのまま待ってて」

ディーネの言葉を信じて魔法を使うのはやめました。
大きいトカゲが神々しく光り、背中が割れて赤髪の人?が出てきました。

「久しぶりだな。一戦やるか?」
「いやよ。契約者がいる世界を滅ぼしたくないわ」
「ほぉ。選んだか。確かに良い形をしてるが欠けてる。奇特な者を」
「沈めるわよ」
「愉快だ」

ディーネは親しそうに赤髪の綺麗な赤い瞳を持つ男性と話しています。

「ディーネ、よくわかりませんが、世界が滅びることはやめて。お友達ですか?」
「水に愛されし娘か。輪廻の渦に戻りたいなら手を貸そう」
「レティに手を出したらその炎を消すわ」
「助けてもらった礼をしよう。遅れをとった。我に炎をくれたのはそなたか」

フィルの前に赤髪の男性が立ちました。
なぜか私はフィルに困惑した視線を向けられてます。

「見えんか」

フィルが炎で包まれました。

「フィル!?何しますの!?」

炎を消すために魔法を使おうとするとフィルの炎が消えました。

「フィル、怪我は!?火傷は!?」
「大丈夫。なんか一瞬体が熱くなったけど、誰?」
「トカゲ。人に化けるみたい。初めて見ますね」
「助けてくれた礼を言う。望みはあるか?」
「は?」

赤髪の人はフィルの頭に手を置きました。

「強さを求めるか。我が力を貸そう。そなた名はフィルか。我の名はラマン」
「は?」
「ラマンと呼べ」
「ラマン?」
「我が力を貸そう」

フィルの足元が光りました。この光景ってもしかして…。

「ディーネ、もしかして」
「ラマン、説明しなさいよ」
「ディーネの契約者がすればいい」

マオには声は聞こえてません。
精霊の声は精霊の許しを得た者か強い魔力のある者しか聞こえません。
契約が強引過ぎます。今まで見た中で一番の強引さですわ。

「ラマン様、レティシアと申します。よろしくお願いします」
「ディーネの契約者にしては礼儀正しいのう」

フィルと私を防音の結界で覆います。
不思議そうな顔をしているフィルの肩を叩いて、
にっこり笑います。

「フィル、おめでとうございます。精霊様に選ばれました」
「え?」

精霊について説明するとフィルの顔が真顔になりました。

「俺、魔力はあまりないんだけど」
「フィルよ。我の力を送った」

力を送ったと自慢気に話すラマン様に不安になります。

「ディーネ、大丈夫なんですか?」
「勝手なのよ。火はいつも無礼で野蛮でやりたい放題。でも契約者の願いを無視はしないわ」

「火の精霊か。よろしく。フィルだ」

笑顔で握手を求めるフィルの器に感服します。是非エイベルに見習ってほしいです。

「フィル、精霊のことは秘密ですよ」
「わかってる。その猫も」
「私の相棒のディーネです。水の精霊様です」

ストーム様のことは言わなくていいでしょう。見つかったら教えましょう。

「ラマンも姿が変えられるのか?」
「我にできんことはない」

ラマン様が人の姿からトカゲに代わり、フィルの肩の上に登りました。
トカゲは可愛くないです。ディーネを抱きしめます。

「ラマン様に申しわけないですが私のディーネが一番可愛くて美しいですわ」
「我だって変化できる」
「今の姿も格好良いよ」
「ディーネよりもか」
「ああ。ディーネよりも」

フィルはラマン様の扱い方を早速覚えたみたいです。
ラマン様はお昼寝中に鳥に捕まり、魔力を吸われて動けなかったみたいです。
フィルの炎で動けるようになり、鳥を食べて魔力が回復してもとの姿に戻ったようです。
鳥の羽が落ちていたので、レオ様のお土産に拾って帰りました。
ラマン様の力でフィルの魔力保有量が上がったそうです。ディーネが言うには失敗すると魔力が溢れて体が弾け危険なので、あまりやらない方がいいそうです。説明もなく、勝手に危険なことをしたことに文句を言いたいですが精霊様に失礼はできません。
戸惑うことなく魔力が上がって良かったと笑顔で受け入れるフィルは凄いです。
レオ様達のところに戻りお昼を食べて、お昼寝をしてからビアード公爵邸に戻ることにしました。私は非常識なラマン様に疲れましたわ。
最初に出会ったのが良識的な精霊様達で良かったですわ。
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