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元夫の苦難42
俺には甘いチョコレートのような恋人がいる。
寮を出ると手を振って駆け寄ってくるのは恋人。
「おはよう!!朝ご飯を作ったの。一緒に食べよう!!今日も可愛い?」
「可愛いよ。ありがとう。嬉しいよ」
可愛いと聞くのは彼女の習慣。彼女のバスケットと鞄を持つと嬉しそうに笑う顔も可愛い。腕を抱かれて椅子に座る。頬を染めて口に運んでくれるケーキを食べる。甘いチョコレートもチョコケーキもどんなに食べても飽きない。ずっと食べていたい。
「リオが好き。ずっと好きだったの。好きになってほしかったの!!」
「俺もだよ。君のような可愛い人に好かれるなんて男達の嫉妬の視線に焼かれても本望だ。レテ」
唇にチョコレートを当てられたので、口に含むと甘みが広がる。
「大好き。ずっと一緒にいたいの!!ずっと一緒にいて!!」
固いチョコレートを舌で転がす。独特のチョコレートの甘みが癖になり口の中からチョコレートが消えると物足りなく感じる。ずっと一緒、ずっと―――。
「恋人になれるなんて嬉しい!!夢みたい!!私は恋人よね?」
「――ああ。美しい銀の」
新たに口の中に含んだチョコレートを舌で転がし味わっていると手を繋ぎたいというので手を握る。指が絡まり合い体が熱を持つ。物足りなくなると食べさせてくれるチョコレートの甘さを堪能しながら耳を傾ける。
「私といると幸せなの。私がリオを愛してあげる。意地悪な婚約者の分も」
意地悪な婚約者―――。婚約、だれだ?
チョコレートの甘みが口内に、甘い香りが全身に広がり夢見心地な気分になる。
「私が恋人よ。リオが好きになったのは私。私よ。夢のような時間なのよ。私達が一緒にいるのは幸せ」
甘い香りの恋人との時間は夢のようだ。授業が始まるので腕を抱かれて登校する。
「可愛い?」
「可愛いよ」
「リオの一番になりたい。一番可愛い恋人に。私のためになんでもしてくれるなんて」
甘い香りを纏う全てが可愛い人。世界で一番可愛い恋人のためならなんでもする。
恋人が言うように可愛い恋人を持つ俺に嫉妬の視線が集まるのは仕方がない。守ってほしいと怯える彼女を傷つける者がいるなら容赦しない。俺の一番大事な可愛い人。彼女を送り教室に行くとサイラスに声を掛けられた。
「おはよう。もう少し早く来れば良かったのに。レティシア嬢が来てたよ」
「興味ない」
「は?具合悪いの?」
「別に悪くないけど」
「聞き間違いか。そうだよな。うん。移動だからそろそろ行かないと」
一人で頷いて席に座るサイラスは大丈夫だろうか。言動と行動が合っていない。午前中は武術の授業なのでボケているサイラスに声を掛けて移動した。切れが悪いとロベルト先生に叱責を受けたがいつもとの違いがわからなかった。
「リオ、見ろよ。3年生が魔法の演習してるよ」
友人が指差す先には水を操る銀髪。水飛沫の中で笑う顔に目が奪われる。ずっと見ていたい。
「移動しようよ。リオ?仕方ないか。行くよ」
友人達に腕を引かれて教室に戻った。
「リオ!!会いたくて来ちゃった!!これ、作ったの!!食べて!!恋人だから」
唇にあてられたのはチョコレート。甘さが口に広がり恋人が可愛く見える。可愛い恋人に視線が集まっている。
「は?」
「なんで?」
「そろそろ教室に送ろうか。遅れるだろう」
「もっと一緒にいたい。二人がいい。可愛い?」
一日くらい授業を休んでも問題ないだろう。可愛い恋人のお願いには敵わない。サイラスが俺の可愛い人に見惚れている。可愛いさに視線を集めているから俺の部屋に移動して二人で過ごすことにした。手作りのお菓子を食べて、可愛い声に耳を傾ける。恋人の可愛さを伝えるともっと聞きたいとねだるので心のままに。優しくて可愛くて放っておけない恋人を寮まで送ると伝えると嬉しそうに頷くのが可愛い。
***
「リオ!!しつこい婚約者がいても私はわかってるから。リオが好きなのは私だけ。汚い銀の髪の婚約者が嫌なことも」
恋人の作ったチョコレートを食べて教室に送って登校すると俺の前に止まって礼をするのは汚い髪のしつこい婚約者。
「おはようございます。貴重な本をありがとうございました」
「用はそれだけか?」
微笑む顔は汚い?綺麗な顔立ちに―。
甘い香りが広がり腕に抱きつくのは恋人。そう。甘い香りを持つ笑顔で俺を見つめる恋人。
「会いたくて!!」
「俺も会えて嬉しいよ」
恋人の体が震えるので抱きしめると目が潤んでいる。
「どうした?」
「ビアード様がリオと別れろっておっしゃるの。私に身の程をしれって。リオと一緒にいたいだけなのに」
「俺の恋人は君だけだ。潤んだ顔を見せるのは俺だけにして。可愛い君に他の男が夢中になる」
「私はリオを愛してるわ。リオの一番?」
「もちろん」
授業は休んで恋人を慰めることにした。部屋で恋人が好きな蜂蜜菓子を振る舞うとお礼にとチョコレートを食べさせられる。俺がいないと生きれない。俺も恋人がいないと生きれない。婚約者が怖いとチョコレートを食べさせてくれながら甘える仕草も可愛く彼女を害するものがいるなら…。願いはなんでも叶える。そして――。
***
俺の恋人は婚約者のビアード嬢に虐められている。俺が手を出そうとするのを優しい彼女は望まない。腕に飛び込んでくる恋人を抱きしめる。家の決めた婚約者は俺が見てない所で恋人に酷い言葉をかける。
「ビアード様が私に」
「ごめん。俺が守りきれなくて」
「いいの。認めてもらえるように頑張る。ビアード様は酷い人だけどきっと私達の愛を認めてくれる。リオの婚約者とは仲良くしたいの。リオが傍にいてくれればいい。大好きだもの」
「美しい銀の」
「美味しい?」
「ああ。おいしいよ」
「放れないでね。一番、私を好きになって」
落ち込んでもすぐに笑顔を見せてチョコレートを食べさせてくれる可愛い人。チョコレートを食べるとどんどん愛しくなりなんでも叶えてあげたくなる。傍にいないといけない。
恋人は第二夫人でもいいと言う。俺と一緒にいられれば何もいらないという可愛い人。形ばかりの婚姻で愛人を迎えるのは珍しくない。そんな健気な恋人が歩み寄ろうとしているのに俺の婚約者は身の程をわきまえろと言うか。忠義のビアード公爵家とは名ばかり。名ばかりの婚約者に恋人を傷つけさせないようにそばで守ろうと決めた。
恋人を1年3組に送り教室に行くと婚約者が近づいて来た。
「おはようございます。リオ様、マール公爵が一度帰省してほしいと」
俺の可愛い人を傷つけているのに、堂々と声を掛ける姿も名前を呼ばれるのも不快だ。彼女がいないなら遠慮しなくていいよな。
「俺は君に名前を呼ばれる許しは与えてない」
俺より家格が低い婚約者が頭を下げた。今から立場を教えるか。俺と彼女に逆らうことは許さない。
「失礼しました。マール様。どうか一度マール公爵家にお帰りください」
「君に指図される筋合いはない。迷惑。目障りだ」
身の程をわきまえない図々しい婚約者。恋人の言うように醜い笑顔。笑顔を浮かべながら弱い立場のものを容赦なく傷つけているんだろう。俺に逆らうなら不敬罪で裁けるよな。消せばいい。そうすれば恋人は傷つけられることはない。簡単だった。
「リオ、いい加減にしなよ。どうしたんだよ」
「レティシア、大丈夫か!?」
サイラス達がビアード嬢を背中に庇って教室から連れ出した。武門貴族筆頭公爵家の令嬢なら仕方ないか。貴族は相応しくない者を裁き排除する資格を持つ。俺一人の声だと説得力がないよな。公爵令嬢を排除するならある程度の数の証言は必要だ。
「忠義のビアードのカケラもない公爵令嬢に資格があるのか?身分が低い後輩を影で虐め、醜い言葉をかけるなんて生徒会役員としても許さないだろう。無礼講だ」
無礼を許すと公言すると教室の空気が緊張感に包まれた。相応しくないと思っても婚約者よりも身分が低い者は口には出せない。学園で殿下の次に家格が高い俺の無礼講発言は視線を集めている。
「無礼講か。ならいいよな?お前が誰と恋仲になろうと関係ない。だがなビアード公爵令嬢の批判は許さない。いい加減にしろよ。婚約者に不義理をしてるのはお前だろうが!!そんなに嫌なら婚約破棄しろよ。お前の恋人への不満を抑えてんのはレティシアだ。レティシアはお前との婚約を望んでなかった。家の力で外堀埋めて婚約者になったくせに。ずっとレティシアが嫌がって避けてたのに付き纏って」
「落ち着けよ。ソート、エイベルの獲物だ。レティシアが干渉不要を望んでいる。生徒会が忙しいから余計な仕事を増やさないで欲しいってさ。必要なら自分で動くだろう?レティシアに任せようよ。自分でやりたがりだろう?もしも武で仕掛けるなら代理に受けて立てばいい。俺らの至宝は大丈夫だ。それにこのままならいずれ婚約破棄だ。レティシアを溺愛する公爵が第二夫人なんて許さないだろう。至宝が相応しくないと正式に貶められるなら受けて立てばいい。結束の固さもレティシアが築き上げてきたものも負けない。たとえマールが敵に回っても」
武門貴族は騙されているのか。罪の意識もカケラも持たない綺麗な笑顔を見せる少女に。外見だけは綺麗だから脳筋は騙されるのか。教師が来たので時間が足りずに一度引くことを決めた。
「マール公爵家に帰れよ」
「は?」
「公爵の呼び出しを」
「嫌だ。目を放した隙に」
武門貴族を騙している狡猾な婚約者が策を巡らせている。どんなに聞いても婚約者への不満はクラスメイトからは出ない。昼休みに会った恋人から聞いたのは幼稚な策ばかりだが油断はできない。
「ご心配なら私が伯爵令嬢をお預かりしましょう。レティシアは生徒会なので伯爵令嬢に声を掛ける暇はないと思いますが」
リール嬢は婚約者と仲が良い。婚約者は取り巻きを使って嫌がらせをしている。恋人が俺に相応しくないと言うのは婚約者の取り巻き達だ。
「信用できない」
「でしたら伯爵令嬢を連れてマール公爵家に帰られれば?」
「できない。彼女を害する女の誘いに乗れと?」
「言葉も届かず道理も持たない。資格がないのはどなたでしょうか。私が責任を持ちます。武力行使で構いません。力を貸してくださいませんか」
眠気に誘われ抗うも耐えられない。守らないと。可愛い人を。甘い香りの彼女を。
傍にいないといけない可愛い人。甘くて、綺麗で、強くて、弱い人―――――。
寮を出ると手を振って駆け寄ってくるのは恋人。
「おはよう!!朝ご飯を作ったの。一緒に食べよう!!今日も可愛い?」
「可愛いよ。ありがとう。嬉しいよ」
可愛いと聞くのは彼女の習慣。彼女のバスケットと鞄を持つと嬉しそうに笑う顔も可愛い。腕を抱かれて椅子に座る。頬を染めて口に運んでくれるケーキを食べる。甘いチョコレートもチョコケーキもどんなに食べても飽きない。ずっと食べていたい。
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「俺もだよ。君のような可愛い人に好かれるなんて男達の嫉妬の視線に焼かれても本望だ。レテ」
唇にチョコレートを当てられたので、口に含むと甘みが広がる。
「大好き。ずっと一緒にいたいの!!ずっと一緒にいて!!」
固いチョコレートを舌で転がす。独特のチョコレートの甘みが癖になり口の中からチョコレートが消えると物足りなく感じる。ずっと一緒、ずっと―――。
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「私が恋人よ。リオが好きになったのは私。私よ。夢のような時間なのよ。私達が一緒にいるのは幸せ」
甘い香りの恋人との時間は夢のようだ。授業が始まるので腕を抱かれて登校する。
「可愛い?」
「可愛いよ」
「リオの一番になりたい。一番可愛い恋人に。私のためになんでもしてくれるなんて」
甘い香りを纏う全てが可愛い人。世界で一番可愛い恋人のためならなんでもする。
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「おはよう。もう少し早く来れば良かったのに。レティシア嬢が来てたよ」
「興味ない」
「は?具合悪いの?」
「別に悪くないけど」
「聞き間違いか。そうだよな。うん。移動だからそろそろ行かないと」
一人で頷いて席に座るサイラスは大丈夫だろうか。言動と行動が合っていない。午前中は武術の授業なのでボケているサイラスに声を掛けて移動した。切れが悪いとロベルト先生に叱責を受けたがいつもとの違いがわからなかった。
「リオ、見ろよ。3年生が魔法の演習してるよ」
友人が指差す先には水を操る銀髪。水飛沫の中で笑う顔に目が奪われる。ずっと見ていたい。
「移動しようよ。リオ?仕方ないか。行くよ」
友人達に腕を引かれて教室に戻った。
「リオ!!会いたくて来ちゃった!!これ、作ったの!!食べて!!恋人だから」
唇にあてられたのはチョコレート。甘さが口に広がり恋人が可愛く見える。可愛い恋人に視線が集まっている。
「は?」
「なんで?」
「そろそろ教室に送ろうか。遅れるだろう」
「もっと一緒にいたい。二人がいい。可愛い?」
一日くらい授業を休んでも問題ないだろう。可愛い恋人のお願いには敵わない。サイラスが俺の可愛い人に見惚れている。可愛いさに視線を集めているから俺の部屋に移動して二人で過ごすことにした。手作りのお菓子を食べて、可愛い声に耳を傾ける。恋人の可愛さを伝えるともっと聞きたいとねだるので心のままに。優しくて可愛くて放っておけない恋人を寮まで送ると伝えると嬉しそうに頷くのが可愛い。
***
「リオ!!しつこい婚約者がいても私はわかってるから。リオが好きなのは私だけ。汚い銀の髪の婚約者が嫌なことも」
恋人の作ったチョコレートを食べて教室に送って登校すると俺の前に止まって礼をするのは汚い髪のしつこい婚約者。
「おはようございます。貴重な本をありがとうございました」
「用はそれだけか?」
微笑む顔は汚い?綺麗な顔立ちに―。
甘い香りが広がり腕に抱きつくのは恋人。そう。甘い香りを持つ笑顔で俺を見つめる恋人。
「会いたくて!!」
「俺も会えて嬉しいよ」
恋人の体が震えるので抱きしめると目が潤んでいる。
「どうした?」
「ビアード様がリオと別れろっておっしゃるの。私に身の程をしれって。リオと一緒にいたいだけなのに」
「俺の恋人は君だけだ。潤んだ顔を見せるのは俺だけにして。可愛い君に他の男が夢中になる」
「私はリオを愛してるわ。リオの一番?」
「もちろん」
授業は休んで恋人を慰めることにした。部屋で恋人が好きな蜂蜜菓子を振る舞うとお礼にとチョコレートを食べさせられる。俺がいないと生きれない。俺も恋人がいないと生きれない。婚約者が怖いとチョコレートを食べさせてくれながら甘える仕草も可愛く彼女を害するものがいるなら…。願いはなんでも叶える。そして――。
***
俺の恋人は婚約者のビアード嬢に虐められている。俺が手を出そうとするのを優しい彼女は望まない。腕に飛び込んでくる恋人を抱きしめる。家の決めた婚約者は俺が見てない所で恋人に酷い言葉をかける。
「ビアード様が私に」
「ごめん。俺が守りきれなくて」
「いいの。認めてもらえるように頑張る。ビアード様は酷い人だけどきっと私達の愛を認めてくれる。リオの婚約者とは仲良くしたいの。リオが傍にいてくれればいい。大好きだもの」
「美しい銀の」
「美味しい?」
「ああ。おいしいよ」
「放れないでね。一番、私を好きになって」
落ち込んでもすぐに笑顔を見せてチョコレートを食べさせてくれる可愛い人。チョコレートを食べるとどんどん愛しくなりなんでも叶えてあげたくなる。傍にいないといけない。
恋人は第二夫人でもいいと言う。俺と一緒にいられれば何もいらないという可愛い人。形ばかりの婚姻で愛人を迎えるのは珍しくない。そんな健気な恋人が歩み寄ろうとしているのに俺の婚約者は身の程をわきまえろと言うか。忠義のビアード公爵家とは名ばかり。名ばかりの婚約者に恋人を傷つけさせないようにそばで守ろうと決めた。
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「おはようございます。リオ様、マール公爵が一度帰省してほしいと」
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「俺は君に名前を呼ばれる許しは与えてない」
俺より家格が低い婚約者が頭を下げた。今から立場を教えるか。俺と彼女に逆らうことは許さない。
「失礼しました。マール様。どうか一度マール公爵家にお帰りください」
「君に指図される筋合いはない。迷惑。目障りだ」
身の程をわきまえない図々しい婚約者。恋人の言うように醜い笑顔。笑顔を浮かべながら弱い立場のものを容赦なく傷つけているんだろう。俺に逆らうなら不敬罪で裁けるよな。消せばいい。そうすれば恋人は傷つけられることはない。簡単だった。
「リオ、いい加減にしなよ。どうしたんだよ」
「レティシア、大丈夫か!?」
サイラス達がビアード嬢を背中に庇って教室から連れ出した。武門貴族筆頭公爵家の令嬢なら仕方ないか。貴族は相応しくない者を裁き排除する資格を持つ。俺一人の声だと説得力がないよな。公爵令嬢を排除するならある程度の数の証言は必要だ。
「忠義のビアードのカケラもない公爵令嬢に資格があるのか?身分が低い後輩を影で虐め、醜い言葉をかけるなんて生徒会役員としても許さないだろう。無礼講だ」
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「無礼講か。ならいいよな?お前が誰と恋仲になろうと関係ない。だがなビアード公爵令嬢の批判は許さない。いい加減にしろよ。婚約者に不義理をしてるのはお前だろうが!!そんなに嫌なら婚約破棄しろよ。お前の恋人への不満を抑えてんのはレティシアだ。レティシアはお前との婚約を望んでなかった。家の力で外堀埋めて婚約者になったくせに。ずっとレティシアが嫌がって避けてたのに付き纏って」
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「マール公爵家に帰れよ」
「は?」
「公爵の呼び出しを」
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武門貴族を騙している狡猾な婚約者が策を巡らせている。どんなに聞いても婚約者への不満はクラスメイトからは出ない。昼休みに会った恋人から聞いたのは幼稚な策ばかりだが油断はできない。
「ご心配なら私が伯爵令嬢をお預かりしましょう。レティシアは生徒会なので伯爵令嬢に声を掛ける暇はないと思いますが」
リール嬢は婚約者と仲が良い。婚約者は取り巻きを使って嫌がらせをしている。恋人が俺に相応しくないと言うのは婚約者の取り巻き達だ。
「信用できない」
「でしたら伯爵令嬢を連れてマール公爵家に帰られれば?」
「できない。彼女を害する女の誘いに乗れと?」
「言葉も届かず道理も持たない。資格がないのはどなたでしょうか。私が責任を持ちます。武力行使で構いません。力を貸してくださいませんか」
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