追憶令嬢のやり直し

夕鈴

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第百二十八話 準備

学園には教師の数が増えました。どのクラスも平等に誰もが最優秀を狙えるように教育するようにとクロード殿下が命を出しました。差別の禁止についてクロード殿下が朝礼で話しているおかげか去年より取り締まる件数は減りました。授業や試験の難易度が上がると聞き私は必死に勉強してます。すでに最終学年までのお勉強が終わっているエドワードに教わりながら。ルーン公爵の好意で治癒魔法を教えていただけることになり週に2日、放課後ルーン公爵邸でお世話になっています。邸内は自由に過ごしていいと許可をもらいケイトと一緒にルーン公爵夫人のための栄養満点・疲労回復メニューを研究しています。放課後にはレオ様と一緒に作ったレシピも試していますよ。レオ様の発案レシピのおかげでルーン公爵夫人の顔色も良くなり体重も増えてほっとしています。妊娠経過は順調と聞いていますが二人のお腹が大きくなるペースが速い気がします。
一つ問題が起こりました。クロード殿下が外交に出かけます。ルーン公爵が随行予定でしたがルーン公爵夫人にとっては大事な時期。ルーン公爵の代わりに私が随行できませんかと試しに聞くとマール公爵夫妻が手配してくれました。ルーン公爵の代わりにマール公爵が都合をつけて私と一緒にクロード殿下に随行してくれることになりました。マール公爵夫妻もルーン公爵夫人を心配されているんでしょう。私で代わりが務まるかわかりませんが精一杯がんばりますわ。明日から出立するのでビアード公爵邸に帰ってきました。

「お母様、順調な経過と聞きますがいささか早くありませんか?」
「命の神秘よ。元気な子が生まれてくるわ。しっかり動いてるもの」

優しく笑うビアード公爵夫人のお腹に手をあてると元気に動いています。

「出産が近づいたら帰ってきます。社交は滞りなく」
「心配性ね。大丈夫よ。レティが楽しみにしてくれて嬉しいわ。エイベルは、」
「訓練に夢中です。まだまだ時間はありますが今年は武術大会優勝を両部門で狙うと意気込んでます。近衛騎士試験もありますので」
「旦那様のよう」
「無理をさせないように気をつけます。私は視察に行ってきます。ゆっくりお休みくださいませ」

新たに生まれる子のために部屋の準備が整えられました。部屋には贈り物で溢れています。愛情深いビアード公爵家。この体に宿るはずだった命の誕生に安堵します。誰かを犠牲にしてまで生きたくはありません。

「レティ?」
「なんでもないですよ。ディーネと出会えて幸せです」

妹の部屋を眺めながらディーネを抱きしめているとリオが入ってきました。

「ここにいたのか。賑やかだな」
「無事に生まれるのを祈るばかりです」
「シアは模様替えしないのか?」
「必要ありませんわ」

私の部屋にあるものを返してと言われたら譲りましょう。そっと抱きしめられる腕の温もりに目を閉じます。

「二人で過ごしたい」
「これから視察に行きますが」
「終わったよ。今夜も別行動?」
「はい。リオにはこの2件を。こちらは私が。心配なのでこの夜会は最後まで」
「侯爵家の婚約披露。バカがいるだろう」
「学園を厳しく統制している所為か綻びが。感情を制御できない令嬢が多く困ったものですわ。リオはビアードにもったいないとおっしゃるのでご自由にと伝えてありますわ」
「認めて欲しいのは違うんだが」
「それはリオ次第ですわ。私が動いても構いませんが」
「一番認めて欲しいシアがわかってくれればいい。他は適当に。今日は俺が髪を結っても?」

頷くと嬉しそうに笑います。最近は私の着るドレスはリオが選んでいます。楽しそうなのでお任せしています。

リオと一緒にビアード領を歩き、民が元気に手を振る姿に笑みを浮かべます。診療所に顔を出し治癒魔導士や医務官に回復薬を納品しました。治癒魔法が必要のない軽傷者ばかりなので手は出しません。治癒は経験です。私が全部携わると彼らが育ちませんので。まだまだ未熟なのできちんと成長していただけるように厳しく指導は続けています。見極めの甘さが助かる命を失わせます。ビアードでは助からないと諦めらてた命はルーンなら助けられた命をでした。回復薬で治せるものとすぐに緊急要請が必要なものをきちんと見極めるように厳しく教えたことに後悔はありません。心が折れてやめた方もいますが命を軽くみる者に治癒魔法を扱う資格はないので止めませんでした。
私が国内にいないときに重傷者が出た時はルーン公爵家を頼るように極秘で伝えてあります。ビアード公爵夫妻は反対しますが命には代えられないので私の責任で治癒師派遣の緊急手続きを整えてあります。当主の意向に逆らうのは許されないので極秘でお願いしてあります。昔よりも行動範囲が増えたので間に合いません。
孤児院の子供達を連れて家族が眠る集合墓地に祈りを捧げにいきました。家族を亡くした子供達が立ち直って笑顔で空に話し掛ける様子に喜び半分悲しみ半分。ここに眠るのは流行り病の発見が遅れて亡くなった民達。ルーンなら病を見落とすことなく助かった命もあったでしょう。休養日に帰ってきて気づいた時には手遅れでした。悲劇がこれ以上起きないように尽力しますと亡き命に祈りを捧げます。


最近はドレスにワインをかけるのが令嬢達に流行ってます。ビアードでは流行っていないことにほっとしてます。私は華麗に避けるので問題ありませんが勿体ないですので。ビアードの森の罠の確認もしました。まだ仕掛け直す必要はなさそうですわ。



ビアードは落ち着いているので当分は留守にしても大丈夫でしょう。
いつも通りに夜会を終えてビアード公爵邸に帰り翌朝、リオとロキとナギに見送られ船に乗りました。青い空に心地よい風に出立日和ですわ。クロード殿下の護衛として随行するロダ様にはローナとナギお手製のお菓子を渡すと嬉しそうに笑いました。

「マール公爵、この度は我儘を聞いていただきありがとうございます」
「義妹と義娘のためだ。優しくしないよ」
「はい。ご指導お願いします」

マール公爵の優しい指導のもと外交官の勉強をしました。宰相は外交官としても動けるなんてさすがお父様ですわ。できないことなどなさそうですわね。マール公爵にフォローしてもらいながら王族と親睦を深めることに成功しました。最後の日はクロード様の希望で遺跡を見学に行きました。

「クロード様、それはいただいていいものですか?」
「誰も触れた形跡がない。責められたら動く」
「かしこまりました」

クロード様はまた地下の怪しい通路を見つけて怪しい魔導書を満足そうに手にしています。中々大変な外交だったのでお礼にいただきましょう。この国の王族とのお付き合いはマール公爵と違い若輩者の私もクロード様も正気を保つのが大変でした。私達にとって非常識な風代わりな相手でも本音を隠して笑顔でお付き合いするべきですから。今世は王妃教育の令嬢モードが役に立ってますわ。私は余力がなかったのでマール公爵に集めて欲しいと頼まれた情報はディーネが集めてくれました。
帰国の船に乗ると体の疲れを感じほとんど眠って過ごす船旅でした。学園に帰れば茶会の準備が待っています。今年は演者は断りました。茶会は帰国した一週間後。楽器を練習する時間はどう頑張ってもありませんでした。


クロード様と一緒に学園に帰りました。ゆっくり休むように言われましたが机の上にある大量の招待状を見てクロード様の部屋に駆け込みました。

「クロード様、どういうことでしょうか?茶会の招待状が大量に」
「去年は不正があったから、学生の招待客は主催者に選ばせた。招待客と組んでもいい。どう趣向をこらすか様子を見る」
「他のご令嬢に譲るのは許されますか?」
「そのやり取りも学びになる。任せるよ」
「殿下、次は一言ご相談くださいませ」
「会議で話した」
「申し訳ありません」

私がぼんやりしていて聞き逃していたみたいです。きっとルーン公爵の随行をどうやって止めようか悩んでいた時の会議でしょう。楽しそうに笑っているクロード様に礼をして退室しました。招待状をくださった令嬢には事情を話して他の令嬢に代役を頼みました。後輩達にお茶会の作法をきちんと教えておいて良かったですわ。茶会では多少のトラブルはありましたが言葉で解決できるものばかり。何事もなく無事に終わってなによりですわ。
リオが卒業してもリオのファンには関係はないようです。卒業前ほどは絡まれませんが未だに婚約についての不服は言われます。何を言われても答えは変わりません。たとえクロード様の婚約者を勧められても。令嬢が王族の婚約者を勧めるのは不敬ですが通じないので諦めました。

「ビアード様は殿下の婚約者を?」
「私には務まりません。すでに婚約者がおりますゆえ」
「国益にならない婚姻は」
「両公爵にお伝えください。私はお父様の命に従います。失礼します」

令嬢達に礼をして私は訓練場を目指します。
最近は令嬢が武術を選考することが流行ってます。自衛は大切ですので、訓練の手配の希望があれば整えます。訓練場には令嬢の姿をよく見かけます。

「お兄様、心惹かれる令嬢は?」
「母上に任せる」
「お母様にせめて初恋くらいは学生時代に経験させてほしいと」
「手のかかる妹で手一杯だ。支障はない。レティシア、一戦やる。風読みを極めたい」

ビアード公爵夫人は恋の話が大好きです。恋に関わりたくなかった私ですがビアード公爵夫人の命なら叶えないといけません。来週からはビアードに帰る予定です。生徒会の業務はロキに任せてあります。ロキに魔導鏡を贈ったのでビアード公爵邸でもやりとりはできます。ロキは天才です。勉強、運動、魔法、音楽とできないことがありません。学園ではお友達を作り楽しそうにする姿をロダ様に教えてあげましょう。ディーネと一緒にエイベルの訓練に付き合うと人が集まってきます。ビアードの力を見せつけましょう。そしてビアード家門にスカウトですわ。

「シア、手伝うよ」

今日はリオがロベルト先生のお手伝いに来る日だったんですね。私の肩を抱いてエイベルの風を乱すリオ。ストーム様は使わないようなのでいい勝負になるでしょう。もう少し二人が仲良くなってくれればいいんですが。

「これ俺の婚約者だから覚えておいて」

頬に口づけを落としてリオが空に上がっていきましたわ。エイベルが何か叫び集中力が乱してますわ。これはリオの勝利でしょう。近づいてきたフィルとステラに手を振ります。

「見慣れたな」
「仲良くなってほしいんですが中々。エイベルの初恋という無理難題に困ってます」
「ビアード公爵夫人も冗談だよ」
「そうであればいいのですが。ポンコツに恋は難しいですわ。ビアードに戻りますのでロキをお願いします」

明るく笑うフィルと優しく笑うステラと共に空を見上げます。ポンコツな二人がしっかりしてくれることを祈りましょう。
ルーン公爵夫人の出産予定日はしばらく先です。先に生まれるだろうビアード公爵夫人の出産に備えてビアードに帰ります。経過が順調でもビアードの医療水準は低いので恐ろしくてお任せできませんわ。
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