追憶令嬢のやり直し

夕鈴

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閑話 新入生の呟き

冷たくなったお母さんとお父さん、弟を抱っこして運んでくれた坊ちゃん、抱きしめてくれたお嬢様。
連れて行かれたのは大きな家。
それからは大きな家の子供がたくさんいる場所が私達の家になりました。お父さんもお母さんもいないけど先生とたくさんのお兄さんとお姉さん弟と妹ができました。
大きな家の名前は孤児院。皆が協力して暮らします。
時々扉の前にたくさんのお菓子が置かれる不思議な場所。
甘いお菓子を食べても、遊んでも…。

「おとうさん、おかあさん、」

お父さんとお母さんに会いたかった。
孤児院を抜け出してたくさん歩いた。
歩いても歩いてもお家はない。
歪んだ視界に映るのはお嬢様だった。

「ここにいましたか。そうですか。行きましょうか」

涙をハンカチで拭いてもらっても涙は止まらない。
お嬢様は私の手を繋いで歩きました。見覚えのある場所、お家があったはずの場所まで連れて行ってもらった。お家はなくなってお花畑になっていました。

「お家が」

「目に見えるものだけが全てではありません。胸に手を当てて、目を閉じて。楽しかったご両親との思い出が浮かびませんか?触れられなくてもいつでも会えますよ」

目を閉じるとお父さんとお母さんの顔と声が聴こえました。
抱きしめてくれる腕の柔らかさも、香りも違うけど、温かさは同じでした。

「皆には内緒ですよ」

涙が止まるとお嬢様がお菓子を食べさせてくれました。
花畑に一緒に寝転がり、空を見上げると綺麗な青空が見えました。

「お出かけしたい時は誰かにお話ししてください。心配します」

お嬢様と一緒に帰ると、先生に怒られ、泣いている弟に突進されました。
お姉さんが頭を撫でて、お兄さんが温かいミルクを淹れてくれました。

「お嬢様の魔法を教えてあげる」

お姉さんが教えてくれた魔法はお嬢様が教えてくれたもの。
皆、この魔法を使っているみたいです。
お父さん達に会える魔法を教わってからは寂しいは少しずつ小さくなって、楽しいや嬉しいが増えていきました。
お嬢様が作ってくれる虹が大好きになり、弟と一緒に眺めるのがお気に入りになりました。
育てたお花を摘んでお姉さんと弟と一緒に毎月お父さん達の眠っている場所にお祈りに行きお話するのが楽しくなりました。

「幸せを掴むにはたくさん学んでください。今はわからなくても大きくなったときにわかります」

お嬢様のお話はよくわかりませんが皆と一緒に毎日勉強しました。
学園に通うとお嬢様達がご褒美をくれると言われさらに頑張って勉強しました。
領主一族の命令は絶対です。入学試験の合格通知が届いた日にお嬢様と坊ちゃんがたくさんのお菓子を持ってきてくれました。

「おめでとうございます。貴方達は私達の宝です。平等の学園できちんと将来自分が生きる上でたくさんの武器を手に入れて下さい。誇り高い自慢の私達の領民なら掴んでくれると信じてます」
「期待している」

坊ちゃんとお嬢様が笑って褒めてくれました。そして1年1組に入れたお祝いに名前の入った綺麗なペンとノートとハンカチとお洋服をご褒美にくれました。
それからは学園でのルールをハンナに教えてもらいました。
私達を宝だと笑ってくれた二人にまた褒められるようにお勉強を頑張ります。



入学式はお嬢様のお揃いの髪のイケメンの祝辞にキラキラした王子様の笑顔の歓迎に眼福でした。お嬢様達も綺麗ですが学園には綺麗な人がたくさんいます。
学園では色々あるとハンナに聞いてましたがこれもその一つでしょうか?

「ありえない!!補佐官って何?私が選ばれるはずでしたのに」

高くてよく響く声で話す綺麗なクラスメイトの周りに人が集まっています。

「またあの女が!!リオ様を誘惑して、殿下にルーン様まで」

誰かわかりませんが悪口で盛り上がっています。悪口は信頼できる人と密室でが常識です。知らない人の前では我慢するようにってお嬢様が教えてくれました。

「平等?バカみたい。誰よりも権力で人を支配して」

怖い人や怪しいものには近づかず、すぐにお嬢様達に知らせるのがビアード領民の教えです。
迷ったら逃げる!!先手必勝!!が合言葉です。

「初めまして。生徒会役員のハリーです。入学おめでとうございます。放課後や休養日に自由授業を開いています。詳しくは書類を配りますのでよく御覧ください。なにかあれば生徒会に。失礼します」

ハリーは楽しそうに悪口を言っているクラスメイトにも紙を配って去って行きました。
ハリーは孤児院で時々勉強を教えてくれるので大人気です。
一番人気は楽しいお話をしてくれるハンナです。うちの弟も大好きですよ。
授業を終えても髪の長いクラスメイトが怒っています。

「どうしてマール様はアリッサ様を捨ててあんな女を!!」
「権力を使ったんですよ。ビアードの力で脅されれば」

髪の長いクラスメイト達はいつも怒っています。笑ったほうが可愛いのにもったいないです。怒っている人には近づいてはいけないので声をかけません。
初めての魔法の授業に向かうと声が聞こえました。

「魔法の制御が甘いですよ。合同魔法でも綻びがあれば崩せます。生粋の侯爵令嬢と胸を張るなら嗜み程度の魔法のコントロールを覚えてくださいませ」
「野蛮な力で」
「野蛮だろうと結果が一番ですわ。操れない魔力は身を滅ぼしますよ。基礎から学んでくださいませ。あら?初めての授業は難しいかもしれませんが諦めなければ道は開けます。頑張ってくださいませ」

笑顔で手を振るお嬢様に手を振りました。
初めての授業は魔石を作ります。個人差があるので焦らなくていいと教わっています。速さではなくきちんと作れるようになることが大事です。私は風属性を持っているので小さい石ができました。先生に見せると合格をもらいました。

「小さい石。なにが平等よ。生まれが一番なのに」

長い髪のクラスメイトの持っている石は私よりも大きいですがあまり綺麗ではありません。
魔石は大事なのは綺麗さです。価値観はそれぞれなので気にしません。
話しかけられもお返事する前にいつも怒って去っていきます。
学園には色んな趣味の人がいるので怒るのが趣味なんですね。坊ちゃんの趣味は訓練でお嬢様の趣味は泳ぐこと、私はお菓子を食べること、弟はハンナのお話を聞くことです。

「なんで!?貴方不正をしましたの!?これだからビアードは」

試験の成績が発表されました。私は3位でした。皆で集まって一生懸命勉強しました。ハリーとアロマが教えてくれましたが、不正?もしかして怒るのが趣味なクラスメイトも誘って欲しかったんでしょうか。

「今度誘ってあげるよ。誰でも大歓迎だよ。お菓子も分けてあげるよ」
「認めますのね!!ビアードは不正をしていると」
「誘ってあげなくてごめんね。お友達がいないなら教えてくれればよかったのに」

長い髪のクラスメイトに腕を掴まれ連れて行かれたのは豪華な広い部屋でした。部屋の中にはハリーとロキがいました。他にも綺麗な人がたくさんいます。

「不正が発覚しました。ビアードは試験での不正を証言しました」
「会長は留守だから俺が聞くよ」
「ビアードが集まり試験問題の横流しを証言しました」
「どうやって試験問題を手に入れた?」
「ビアード様を調べればすぐに証拠が」
「レティシアは兄上と一緒に先に試験を受けたが、その足で出国している。エイベルは今は出ているから明日聞いてみようか」
「は?」
「レオ様、僕が任されます。ビアードに関する誤解なら適任かと。お嬢様から代行権を預かってますので。こちらへどうぞ」

よくわかりませんがロキに案内されて先程よりは小さいですが豪華な部屋に入りました。椅子に座るとお茶とお菓子が出てきました。

「自由に食べてください。誤解の理由を聞きましょうか。試験問題は先生が管理しているので生徒会は介入してません」

いつも怒っているクラスメイトがロキをじっくりと見つめて笑いました。

「誤解でした。申し訳ありません。お名前を」
「ロキと申します」
「え?」
「なにかあれば生徒会にどうぞ」

美味しいお菓子を食べおえると送るとロキに言われて立ち上がりました。ご褒美のお菓子くれるために呼ばれたんでしょうか?ロキのくれるお菓子はいつも美味しいので大歓迎です。
次の日に怒るのが趣味なクラスメイトに笑顔で話しかけられました。怒っている顔よりも可愛いです。

「ロキ様は恋人は」
「いないよ」
「どんな方が好みか」
「お嬢様」

怒るのが趣味のクラスメイトはロキの話を聞くのが趣味になりました。怒ってるよりも笑っているほうが可愛いと言ったら顔を赤くしたのが面白かったです。
私の話を聞きながらお芋の皮むきをしていたハリーが笑ってます。

「今日はデザートがあるんだよ。お嬢様から試験のご褒美を頼まれた」
「ケーキかな!!次の試験も頑張るから教えて」

学園は美味しい物や変わったこと、色々あって楽しいです。
ロキのファンクラブができましたが入りません。
女の子達の中で悪者を退治する遊びが流行っています。逃げるのではなく退治を選ぶなんて凄いです。私は魔物に襲われれば戦いません。学園とは強い女の子がたくさんいるんですね。皆、お嬢様みたいに勇敢に戦うんでしょう。


「殺されそうだったの。泉に落とされて」
「泉には近づいたらいけないのは常識だよ。殺されなくて良かったね」
「は?」
「パンって弾かれるか、シュッと斬られるか、瞬殺だから大丈夫だよ」

泉は危険なので中に入ってはいけません。
魔物は坊ちゃんとお嬢様が瞬殺してくれます。目の前の叫んでいるクラスメイトに常識を教えてあげました。助け合いは大事です。そして価値観はそれぞれでも掟は絶対です。
魔物に捕らわれている人がいるそうです。すぐに殺さないで人を捕えるのは知能のある強い魔物なので弱い私達は近づいてはいけません。
ハリーに話すと報告を引き受けてくれました。すぐにお嬢様が退治してくれるから安心です。楽しいものに夢中になりすぎて勉強が疎かにならないように気をつけましょう。孤児院に帰ったら弟に教えてあげます。学園は楽しいからお勉強を頑張るようにと。そして美味しいお菓子がいっぱいもらえるよって。
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