追憶令嬢のやり直し

夕鈴

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ビアード公爵令嬢の婚約者 7

ロベルト先生の授業の手伝いも害虫駆除も終わって魔力を探ると訓練場だった。
制服姿でぼんやりと空で訓練しているビアードを見つめているレティシアがいた。

「ここにいたのか。シア?」
「恋心は必要なんでしょうか?」

空を見上げたまま呟くのは答えを求めているわけではないだろう。
一人でぼんやりしているのはよくあることだ。
太陽の光の下だと銀髪はさらに輝き、短くなっても美しい髪は変わらない。伸ばした髪がもとの長さに戻るのは当分先だ。
短い髪は貴族らしくない、醜いと言うバカは誰よりも美しい仕草のレティシアを見ても気付かない。
蔑む姿のほうが醜いことを。
シオン嬢の研究のためと言えば表面的には何も言えないはずなのに、マナーを守らず醜い姿で蔑むから良縁は逃げていく。
たとえ俺が何もしなくても―――。

「価値観はそれぞれだ。恋にも才能があるって母上が言っていた。恋に夢中になり追いかけられるのは才能のある人だけだって」

ブツブツと呟くレティシアに言葉を返す。
生きる上では必要なくても、俺は知れて良かったと思う。
焦がれる存在がいるだけで世界が変わる。
しばらくして振り向いたレティシアが俺を見て目を大きく開けて驚いている。そしてすぐに銀の瞳を細めて上品に微笑んだ。

「私もエイベルもありませんわね。迷った所で結論は変わりませんね。どうされました?」
「手伝いが終わったから顔を見に」
「お嬢様、ビアードから伝令です!!外出届は処理してあります」

抱き寄せようとすると空を切った。駆けてくるロキの声にレティシアの顔つきが真顔になり駆け出した。

「伝令?」
「お嬢様への緊急要請です」
「緊急か?」
「治癒魔法が必要な時は伝令が走ります」

すでに背中は見えない。
ビアード領に風で飛んで戻り魔力を辿ると、マオを連れて村の診療所を背にして歩く姿を見つけた。
中から泣き叫ぶ声が聞こえる。
レティシアを追う前に状況把握か。中に入ると眠る女と血がついた服で泣き崩れる男。

「妻は」
「最後の時間を」

白衣を着た青年は泣き崩れる男に静かに告げた。
俺に気付いて礼をしたが気にしなくていいと伝えると椅子に座り書類を書き始めた。
ビアード領は変わっている。
風魔法での魔物の討伐や空を駆ける騎士に見慣れているため風魔法は詳しいが他の魔法への知識が少ない。領民はレティシア以外に水魔法を使う魔導士をほとんど知らないらしい。ビアード公爵夫人は水属性でも簡単な魔法しか使えないので披露することはなく、レティシアが高度な魔法を簡単に使うので風魔法よりも簡単で手軽な魔法と勘違いしている。

分厚い書類の束から一枚を取り目を通すと過去の診療記録。
患者の記録が細かく記載してあり、読みにくい字の横に綺麗な文字で処置の訂正が記入されている。
次の書類も同じで手遅れになった患者ほど細かく丁寧に記載されている。
広い診療所には白衣を着た医務官とローブを着た治癒魔導士が合わせて4人だけ。
マールなら10人は待機している広さと患者の数。明らかに少ない。往診にでも行っているのだろうか。
白衣姿の医務官が書いているのを覗くと回復薬も飲ませられず治癒魔法の反応なし。処置せず出血死と記載し、レティシア宛の封筒に入れている。レティシアが目を通し訂正をいれて返しているのか!?綴じてある診療記録書には全て訂正が入っている。前によくあることと言っていたのはこのことか。

診療所を出てレティシアを探すとは木の上に座っていた。
静かに空を見上げる瞳が思い描くのはわからない。
膝を抱えて頭を伏せたまま動かない。隣に座って頭に手を伸ばしそっと撫でるとゆっくりと顔を上げた。向けられたのは凪のような静かな銀の瞳。

「リオも帰られたんですね」

人形のように綺麗に微笑むレティシアの思考は読めない。いくつもある社交の顔の中でも一切の感情を隠した人形のような綺麗な笑みが一番手強い。レティシアが心を絶対に見せないときにする顔を見ると隣に座り触れているのに遠くにいるように思える。


誰にでも優しく領民を大事にしているレティシアが死者に何も思わないことはない。俺のように手続きだけすませればいいと思えるような性格もしていない。
重症者がでれば呼び出され、治癒魔導士達の指導をしながら一つ一つの死に向き合う。
他の診療所にも同じことをしてるんだろうか?
レティシアの体も心も大丈夫なのか?

レティシアの豊富な治癒魔法経験を聞いてからルーン公爵家で治癒魔法や治癒師については学び直した。
治療に携わるのは治癒師と治癒魔導士と医務官と医師。
学園で治癒魔法を学び試験に受かれば治癒魔導士と名乗れる。
治癒魔導士は治癒魔法の使い手。
医務官は魔導具と医術を使い治療。
医師は魔力を使わず医術のみで治療。
治癒師を名乗れるのはルーン公爵家に認められた者だけであり多くの治癒魔導士の憧れの職である。

優秀な治癒魔法の使い手はほとんどがルーンに流れるため王国一治癒魔導士を抱えているのがルーン領。
ルーン領はフラン王国で一番大きく最も管理が徹底されている領。規律は厳しいが王国一死亡率が低く手厚い支援が受けられるため転居者がほとんどいない領でもある。

ルーンの治癒師はフラン王国でも王家も認める特別な存在。
ルーンの治癒師の忠誠はルーン公爵家。
どこに住もうとどこに行こうとルーン公爵家の臣下であり、雇いたいならルーン公爵家との契約が必須。
申請は簡単で提示される賃金の支払いと治癒師達に無礼を働かない誓約をすれば契約が結べる。
自領で起こったことでもルーンの治癒師を裁く権利を持つのはルーン公爵であり、常に控える護衛に武力行使されても治癒師の邪魔をした者が悪いと判断される。
ルーンの治癒師に手を出せば契約破棄で二度目の契約はほぼ不可能。治癒師への無礼はルーン公爵家への無礼として処理されるので加害者も領主も裁かれるので徹底的に管理が必要とされる。それでも契約する価値のある存在がルーンの治癒師。
常に冷静な治癒師は礼儀正しいが愛想のカケラのない者ばかり。だが治癒魔導士や医務官とは比較にならないほどの腕を持つ。取引に応じず嘘をつかない治癒師は他領の治癒魔導士や医務官よりも高額だが全てを丸投げできて楽だとうちは毎年更新している。


マール領にはルーンの治癒師が派遣され、治癒師達の手に余る時はさらに上位の治癒師が呼ばれて治療する。
魔力が多い者の治療には高度な治癒魔法が必要になることも多く、ルーンの直系一族と分家当主が治癒師の派遣を管理。国一番の治癒魔導士の叔父上に直接治癒を頼む手段もあるが派遣されている治癒師で十分なため訳あり以外は使わない。

治癒師は全て事後報告。
流行り病さえもうちが気づく前に動き収束させ、報告書と高額な請求書が送られてくる。
父上は怒ることはない。いつもありがたいと感心している。
ルーンの求める対価は正当なもの。
マールは価値のあるものには金は惜しまない。
宰相一族だけあり、払えない額を請求することは決してない。
おかげでうちは人員を割かずに時間もできやりたいことに集中できるらしい。
マール領の衛生管理は治癒師達に一任しているため国外からの訪問者が一番多くても死亡率は国でも屈指の低さを誇る。ルーンに丸投げすれば死亡率が下がると気付いているのはレートとリールとターナー、グランド。最近はカーソンやストレインなどレティシアの親しい家も増え丸投げしている。うちの派閥でルーンと契約してないのはビアードだけである。

「ルーンの力を借りないのか?」
「頑張りますよ。ふがいないですわね。私の指導不足ですわ」

澄んだ瞳で俺を見た口から溢された言葉は非常識なもの。治癒師の育成はルーンの分家当主一族が任され多くの人員を割いている。たった一人で担うのは無理がある。

「どう考えても」
「新しいことを始めるよりも変えることのほうが大変です。歴史があるものは尚更。それに救われているのも事実です」

明るく笑うレティシアの考えは読めない。救われている?
死亡率の高いビアードに医療の歴史があるのか?
治癒魔導士はレティシアだけって言っていたよな…。風の音に視線を向けるとレティシアが木から降りていた。
レティシアがマオに送るように頼んでいるので肩を掴んで口を挟む。

「俺が送るよ」
「マオが」
「一緒にいたい。魔力もあり余ってる」

子供を見るような目をされているけど気にするのはやめた。
この顔をするときはいつも折れてくれるから。そして銀の瞳が細くなり楽しそうに笑う顔を見れば男としてのプライドに拘るよりも有意義な時間にするほうが得策。マオがいなければ抱きしめて口づけるけど送る役目を譲ってもらっただけありがたいと思うか。

「わかりました。お願いします」
「その格好で飛んだのか?」
「マオのマントに包まれるので私とは見つかりません」
「すぐ戻るから待ってて。渡したいものがある」

制服姿で風魔法で飛ぶのは危ないので、急いで部屋に戻り追跡魔法と防御魔法を仕込んだレティシアのために仕立てさせたローブを着せた。これを着て作業してくれればある意味牽制になる。

「ローブなら私も持ってますよ」
「マールの新商品。洗浄の魔法陣と防御魔法を仕込んである。感想聞かせて欲しいから学園でも使って欲しい。俺は調合しないから」
「さすがマール公爵家。かしこまりました。報告書にまとめておきますわ」
「口答で俺に教えてくれればいい」
「かしこまりました。生地の触り心地もよいので貴族にも好まれますわね」

フードを被せて抱き上げると目が輝き楽しそうに笑う顔は無理をしているようには見えない。風を纏いゆっくりと浮かび空の散歩に嬉しそうに笑う。久々に腕の中で満面の笑みを浮かべるレティシアは物凄く可愛らしい。
学園に着き俺の腕から抜け出したレティシアの小さい声を耳に拾う。

「恋とは難儀なものですわね。手が届かなくても欲しくてたまらなくなります。そして反対されるとさらに盛り上がるのが初めてわかりましたわ」
「シア!?」
「送っていただきありがとうございます。気を付けて帰ってくださいませ」

礼をして上機嫌で門の中に入っていくレティシア。
どういうことだ?
恋ってまさか好きな相手ができたのか!?
真っ暗なのでレティシアの行先は寮だからもう話せないよな。
明日の放課後会いに行こう。
魔導鏡だとすぐに切られてしまい、ゆっくり話せないから直接聞いたほうがいい。
診療所について調べてみるか。

****

調べた結果ビアード領の治癒魔導士と医務官の少なさは異常だった。
ビアード公爵よりもビアード領を把握をしている執事長を呼び出した。俺に仕事を教えてくれているのも文官ではなく執事長である。

「ビアード領の治癒魔導士と医務官は補充はしないのか?」
「お嬢様がスカウトを一任されています」

スカウトって学生だろう?
卒業するまで使えない。
それにレティシアが指導している中で見込みがあり、ビアード入りを示している生徒は片手の数だけ。

「それでも数が足りない」
「お嬢様がいらっしゃるので」

優秀な治癒魔導士がいても関係ない。
質も大事だが量が必要だ。
狭い男爵領ならともかくビアードは国で4番目に広い。
危険な森を抱えるため領民は公爵領の中では少ないが、あくまで公爵領の中でである。

「補充はしないのか?」
「はい。辞職が激しいですがお嬢様が治癒魔法を覚えてからは死亡数は減っています。お嬢様の治療の評判がよくこのままでいいと言う判断を」
「ルーンに派遣要請しないのか?」
「お嬢様が治癒魔法を覚えてからは契約を切っております。冷血なルーンを嫌っておられますので」

サラリと言っている執事長の言葉は非常識と思う俺がおかしいのか?
嫌いって私情じゃないか?
冷血?
ルーンの治癒師は愛想はないが冷血ではない。
患者には真摯で嘘をつかない治癒師達はうちの領では好かれている。
助からない命に祈りを捧げて残りの時間を真っ当できるように力を尽くす姿に暴言を吐くバカはいない。どんなに悲惨な姿でも顔色一つ変えずに手を伸ばす。
家族のいない者には最期の瞬間に手を握って祈りを捧げる。完治できなくても決して見捨てないのが治癒師。
うちの領民には治癒魔法が高度で万能ではないことをきちんと教え、必ず従うように躾け領主一族と同等に扱うように命じてある。逆らえば追放。
治癒師は患者には寛大で暴言を吐かれても流すし、暴れるなら眠らせる。邪な気持ちを持つ者が危害を加えた時しか護衛騎士はルーン公爵家に報告しない。
マールの規律を守れない領民は庇護しない。
ルーンは加害者が平民なら罪人を厳しく罰し、教育し直すなら契約は更新。貴族なら破棄して報復とわかりやすい。

思考が逸れたが執事長も頼りにならないのがよくわかった。
領の治め方は領主次第。
王家もきちんと税を納め、魔法を継承させ、法を守り自治していれば介入しない。
王家が滅んでも領主が自治しているので特に問題がないと思っている忠誠心の欠片もないのがマールである。
うちは王家よりもルーンとの交流が切れるほうが怖いだろう。
王家を絶対にしているのはビアードだけだろう。
建国して長い時が流れていけばありがたみは薄れる。初代国王に忠誠を誓ったのも魔力を授けてもらったのも本の中の話。
王族に従うほうが利があるからそのままなだけ。父上は王家と母上なら迷わず母上を選び爵位を返すだろう。貴族としての矜持はあっても忠誠心が欠片もないのがマール。ルーンも同じか…。

ビアードの年間の死亡率の高さは公爵家では上位。
王国で一番危険な森を抱えるゆえだと思っていたが原因は確実に違う。
ビアード領で一番古い診療所に行くと医務官が一人だけ待機していた。

「記録を見せてほしい」

案内されたのは書庫。
棚にはぎっしりと資料が詰まっている。
医務官の滞在記録を読むと流行り病があった年を境に大量に辞職が続き補充はない。

「大量の辞職は理由があるのか?」
「心が折れて辞めました」
「心が折れた?事情を詳しく聞かせてくれないか。心の中に留めるよ」
「ビアード領では治癒魔導士は重宝されていました。私を含め多くの治癒魔導士も医務官も井の中の蛙と気付いたのは天才治癒魔導士との出会いから。私達が無知と驕りで諦めた命を幼い少女が次々と救った」

その幼い少女はレティシアって落ちだろうか?
レティシアが心が折れるようなことをするだろうか。


「ローブを着た小さな少女の正体に気付いたのは流行り病の収集がついた時。村を襲った流行り病を誤診と言いルーンに緊急要請すれば多くの命が救われたと豪語しました。私達の誤診を一つづつ正し「救えた命を奪うのは殺人」と命を扱うものの責任を説くお嬢様の言葉に心が折られた者が多く、まっすぐな強い瞳で睨みながら「命を失わせた治癒魔導士も医務官も一生命を背負って生きなさい」と厳しく命令され反論する気力もなく立っているのがやっとでした。心が折れて辞職者が出始め、それからお嬢様の厳しい指導にまた減り、今ではここに残るのは3人だけ。お嬢様が雑務を全て引き受け回復薬等も調合し納品してくださるので回っています。正論は胸を貫きましたが自分よりも幼い少女が患者の暴言には私達に向ける態度とは正反対に優しく受け入れ看病し倒れるまで治癒魔法をかける姿を見たら自分が恥ずかしくなりました。お嬢様の指示通りに動くと助かる命は増えました。自分の腕がいかに未熟で―――」

後悔を語る男。
レティシアがキレて大量解雇?
それで責任感じて駆け回っているのか?
倒れるまで治癒魔法をかけるって、危険じゃないか?
記録を読むと前の診療所よりも訂正が少なかった。
新しい治癒魔導士や医務官を入れてもレティシアの指導に心が砕ければやめるか。医務官の手伝いに侍女や騎士が足を運んでいるらしい。
記録を読むと緊急要請の遅れでの死亡原因ばかり。
そのたびにレティシアが傷つくんだろうか。




イナリアが生まれて上機嫌のビアード公爵夫妻だが、ルーンは信用できないから頼りたくないと折れる雰囲気はない。
レティシアの腕を信用しているのはわかるが無理があるだろうが…。物理を好み、細かいことは気にしないビアード公爵家。見つからなければいいか。

叔父上に診療記録を見せ現状を話すとため息をついて記録の訂正と極秘でルーンの緊急要請の手続きも整えてくれると言われた。
ビアード公爵夫妻の非常識は学生時代を共にした叔父上には日常茶飯事らしい。
それからレティシアの前に俺に連絡をするように診療所の伝令と護衛に命じた。ビアードの臣下は単純だから扱いやすい。
レティシアが訂正した膨大な記録を見てビアード公爵家は何も思わないんだろうか。成人してない少女がどれだけの死と向き合ってきたのか。

代わってやりたくて治癒魔法を学んでも小さい傷を治す程度しかできない俺は役に立たない。
風は治癒魔法とは相性が悪く適性はどうにもならない。できないことを悩む時間は無駄か。
まず民に風魔法以外の価値を教えることから始めるか。


****

レティシアの予定を聞いて放課後会いに行った。
部屋に入りしばらくすると書類を纏めていたレティシアが俺に気付いて視線を向けた。

「無茶振りになれているのか?」
「はい?」

首を傾げるレティシア。何が無茶かわかっていない?

「頼まれて断ることはあるのか?」

何度か瞬きをしたレティシアが微笑んだ。

「社交デビューを10歳にしてもらいました。他は思いつきませんが。慣れてますよ。目の前の命に真摯に向き合うだけですわ。いずれは整えあげますわ。令嬢は当主の意向に従うものでしてよ」

遠回しの拒絶。
レティシアは部外者は口を出すなと言っている。少し近づいたと思っても部外者扱いは変わらないのか。
婚約者でも認められてない俺に口を出す権利はない。
ビアード公爵家の意向を確認して暗躍するしかないか。物凄い速さでペンを走らせているレティシアの意識はすでに俺にはない。

「恋がどこかに転がってませんかね。難題には慣れてましたが、これは人生で一番かもしれませんわ」
「シア?」
「恋は落ちるもの。人は危険なスイッチを持っているので――――」

ぼんやりしているレティシアに俺の声は届かない。
カーチスに話を聞くと学園にはレティシアの特別はいなかったはずだ。
きっかけはわからない。俺に愛人を勧めるレティシアはもしかして……。そのときは相手に消えてもらえばいいか。婚約者の俺には消す権利はあるよな。でも可愛らしいレティシアが―――。

「またいるの?」
「言葉には気をつけてください。ノックを忘れないでください」

嫌そうな顔のルメラと笑顔で嗜めているロキが部屋に入ってきた。レティシアの友人達も次第に集まり自由に寛いでいる。ルメラが菓子をテーブルに広げ、ロキがお茶を用意し、アロマは書類を読んでいる。グレイ嬢がお茶を一口飲み、顔を上げるとレティシアが書類から顔を上げて目を丸くした。

「声をかけてください。それでは初恋計画を話し合いましょう」

ペンを置いたレティシアが立ち上がり笑みを浮かべて意見を求めている。
ビアードの初恋計画はことごとく失敗に終わっているらしい。ビアードは成人すればレティシアに世話をやかれなくなるのか?
早くレティシアの代わりに世話をしてくれる令嬢が欲しい。いつもエスコートはビアードに奪われる。
このままだと卒業パーティーでビアードにエスコートされるのはレティシアだろう。
弱ったビアードを助けて恋に落とすという計画のために、ボロボロにする役目を引き受けると伝えると関わらないでと言われてしまった。心を折るのは得意なのに。
レティシアに大事にされ優先されているビアードが羨ましい。
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