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閑話 取り巻きの呟き2 ステラ視点
サイラス様から面会依頼を受けました。不思議に思いながらもグランド伯爵邸に訪問し案内された部屋にいるのはサイラス様、フィル様、ベリー様、マール様です。
「レティシアと婚姻したいから協力してほしい」
挨拶をすませ着席すると突然頭を下げるマール様への返事を私は持っていません。
矜持の高い貴族が頭を下げる行為は覚悟がいるものと聞きますが私にとっては価値のないものです。
頭を下げるのも社交手腕の一つ。
それは隣に座っているフィル様も承知しています。
私達の社交の師匠は必要ならためらいなく頭も下げ、高貴な者の象徴となる髪を切る方です。体面を気にしますが大事なのは自身の持つ誇りであり、頭を下げたくらいで傷つく安い矜持は持っていないと美しく微笑む自慢のお友達です。
目的のためには手段を選ばないのは目の前のさらに高貴な方も一緒でしょう。
フィル様を見ると興醒めしたような視線で頷いてくださるのでお任せしましょう。
私達はレティシア様の味方ですが、マール様との婚姻に賛成しているわけではありません。
「俺達に言われても困りますよ。しがない伯爵家にできることはありません。頭を下げられても困るのであげてください。俺達は忠義の塊ではないので」
いつも冷静なフィル様は流石です。私はフィル様が焦ったお顔をされたのは一度しか見たことがありません。お可哀想にベリー様はマール様のらしくない行動に戸惑った顔をされています。
「レティシアとの婚姻に必要なのはビアード公爵への勝利とエイベル・ビアードの同意。エイベル・ビアードの同意を取るのに協力してほしい」
「ご自分で。他家のことに口出しするつもりはありません」
「ビアード公爵家はレティシアに依存している。レティシアは弱い回復薬も治癒魔法も効かない。いずれ魔力が枯渇すれば死ぬだろう。俺は部外者だから干渉できない」
フィル様に全てお任せするつもりでしたが、初めて聞く話にマール様の顔を見ると嘘の色はありません。レティシア様はよく魔力切れで倒れますが、そこまで深刻な…。
「どういうことですか?」
「ビアード公爵夫妻もエイベルも知っている。でも変わらなかった。治癒魔法を使い過ぎれば耐性ができ効果がなくなる。広いビアード領をたった一人の治癒魔導士が担うなんて無理なんだよ。ビアード公爵夫妻がレティシアに求めることは命を削らせている。レティシアの体に治癒魔法をかけられるのは本人と王国一の治癒魔導士のルーン公爵くらいだ。イナリアの世話でレティシアが怪我をしても治癒魔法で治すから咎めない」
レティシア様は昔から治癒魔法が得意で怪我人を見つけるとすぐに駆けていかれました。休養日のビアードの視察では診療所に顔を出し指示を。
イナリア様がお生まれになってからの惨事はロキから聞いています。
自由なイナリア様に振り回されるレティシア様。私の兄もとても優しいですがレティシア様ほどではありません。
イナリア様のお世話はお一人では大変そうなので時々お手伝いをしています。レティシア様へのイナリア様の不満にお付き合いして、暴れるなら隣で見守るフィル様が魔法で眠らせてくれますのでそこまで大変ではありません。年々多忙になるレティシア様の生活はマール様が介入すれば何か変わるんでしょうか。
「マール様が婚姻すれば改善されるんでしょうか」
「婿入りすれば部外者でなくなりルーン公爵家と縁戚になる。ルーンの治癒師を派遣させレティシアの補助に使う。レティシアの治癒魔導士育成計画の邪魔はさせないよ。補佐官業務と治癒魔導士の兼任は無理だ。補佐官に任命されれば今までのように緊急要請に抜け出すことはできない。学園よりも社交が優先でもレティシアの欠席の多さは学園一、殿下よりも多いんだよ。公爵令嬢とはいえ働きすぎだ。兄の分も全て引き受けているしな。婚姻すれば俺が全部引き受けてやれる」
レティシア様は学年が上がるにつれてお休みが増えました。
エイベル様が卒業されてからは半分はお休みしています。生徒会のお仕事と課題に追われているのはよくある光景です。いつも物凄い速さでペンを動かしています。
「この婚姻はマール様ではなくレティシア様のためのものですか?」
「俺自身の欲もあるが婚儀を急ぎたいのはレティシアのためだ」
令嬢達が好むマール様に微笑まれても、見惚れることはありません。
私はレティシア様がお幸せになる応援は大歓迎ですが、マール様を信用できるかはわかりません。
必要なら手を組みますがレティシア様をお幸せにする会の幹部にするほどの実績はありません。
アロマの調べでは今のところはレティシア様以外に視線は向けてませんが、人は突然変わる危険なスイッチを持っているとレティシア様が言ってました。
ありえないことが起こってしまうのが人生なので情報を集めて速やかに動くしかないと。変わらないものなんてないのかもしれませんと寂しそうに溢したレティシア様を見てから、マール様は私達の警戒対象になりました。
「俺達は執念深い一族です。どんな事情があっても一度されたことを忘れません」
さすがフィル様です。
私達はサイラス様達のように簡単に味方をしませんわ。
私は口に出さずに微笑むだけです。味方のフリをして溶け込むのも大事なことです。そして危ないことや過激なことはフィル様に任せるのが約束です。
「俺がレティシアを傷つけるなら躊躇わずに斬ればいい。彼女を傷つけるのは自分自身でも許せない」
マール様が自身を許せるかはどうでもいいことです。
いつも前だけを見て誰にでも更生の道を説くのがレティシア様。レティシア様の心を乱すものは、歩みを妨げるものを排除することはマール様にできるのでしょうか。
「協力するかは役割を聞くまでは了承できません。エイベル様の説得に俺達を呼んだ理由もわかりません」
「エイベル・ビアードに卒業パーティーのレティシアのエスコートを賭けて決闘を挑むよ。審判と治療役を頼みたい。レティシアには知られずに」
レティシア様のために忠告を一度だけしましょう。
勝者の願いを叶える神聖な決闘がビアード公爵家でされるならビアード公爵令嬢であり治癒魔導士のレティシア様が見届け人になります。
「レティシア様は嫌がる行為です」
「わかっているがこれが最善。だから見つからないように協力を頼みたい」
忠告しても真剣な顔のマール様は引く様子はありません。
結果は見えていますが家格の高いマール様に命じられる前に当たり障りのない協力をしましょう。
「私の立場ではお役に立てませんがレティシア様が学園で過ごされる日はお教えます」
「感謝するよ」
「レティシアにキレられても知りませんよ。命に関わる時は止めます。審判だけなら引き受けます」
「治癒魔法もお任せください。及第点をいただいてます」
「ベリー嬢は給金を払うから在学中から、この話は後日だな」
マール様の考えていることは想像ができます。
武門貴族の令嬢達はマール様を見極めている最中です。学園で人気のマール様とレティシア様がモデルの物語で印象操作されるほど単純ではありません。でも確かにイナリア様のレティシア様への態度は姉妹とはいえ許されるものではないと思います。そして諫めないビアード公爵夫妻も。可愛いがりたい気持ちもわかりますが。
私はマール様のために説得はしません。
決闘される日はフィル様と一緒にビアード公爵領に訪問することにしました。
ビアード公爵夫人もいらっしゃるので何かあっても問題にはならないでしょう。
マール様がレティシア様のために動いているのはわかっても、協力するつもりはおきません。もしも、エイベル様に認められてもビアード公爵にはまだ敵わないでしょう。
レティシア様は生徒会の引継ぎで忙しそうに走り回っていますから、卒業パーティーのエスコート役のことは頭にないと思います。
「見てください。ビアードの騎士服です。お父様がくださいました」
「きっとお似合いですわ」
「ロキ、卒業パーティーは一緒にこれで出ませんか!?」
「ビアードの宣伝になりますね。来年の入団試験の希望者が殺到しますね」
「楽しみですわ」
ビアード公爵家の騎士服を嬉しそうに眺めています。
殿方の戦いが見えない場所でやるならお知らせする必要もないでしょう。もしもレティシア様が知ってお怒りになっても自業自得です。
結局はレティシア様に見つかりお怒りになりました。レティシア様はきちんと説明した上で決闘を申し込むのであれば反対せずに審判を務めてくれたと思いますが私は教えません。マール様がレティシア様のためにと暗躍されていますが、レティシア様は気付いていても何も言いません。
「またマール様が来てるよ」
「会いたくありません。ロキ、お願いできますか?」
「私が追い返そうか」
「リアナは課題をしてください。ロキに任せましょう。当分顔は見たくありませんわ」
レティシア様は根に持たない方ですが、逆鱗に触れると長いです。
「リオと婚約したい令嬢がいるなら喜んで譲りますわ。両公爵さえ説得してくださるなら。ポンコツの婿なんて早まりましたわ。サイラス様とソート様に求婚してもフラれましたわ。エイベルも婚約者を選びませんし、学園は平穏なのにうまくいかないものですわ」
決して学園は平穏ではありません。
ですがレティシア様にとっては些細なことのようです。
ビアード公爵家の問題に比べれば全てが。
出ていくロキを見送ってレティシア様は目の前で懇願しているカーチス様と呆れたお顔のスワン様を見てため息をついています。
「レティシア、シオン嬢の好みを教えてくれないか!?」
「被験者に進んでなってくださる殿方です。シオン伯爵家に人としての情緒を求めてはいけませんわ」
「やめたほうがいいって。クラムの手に負えないよ。侯爵の許しがあっても」
「自己責任で頑張ってくださいませ。私は色恋に関わりたくありません。貴族らしく家の利にならないことには関わりません」
「お前の婚姻だって利がないだろうが」
「両公爵が決めました。ですが後悔してますわ。クラム様が婿入りしてくださいますか?セリアとは定期的に面会するので愛人にしても構いませんよ」
「マール様に殺される」
「どこかにマトモな婿が転がっていれば。人生思うようになりませんわ。ステラは幸せになるんですよ」
「お茶の時間に丁度いいかな。父上から試作品が届いたから感想聞かせて」
「まぁ?ルーン領のものは全てが美味しいので試食はいらないと思いますが、美味しい。濃厚な香りが広がりますがいつもと違いますわね」
「製法を変えたんだよ」
憂いのお顔がエドワード様のお土産のおかげで幸せそうに笑っています。
私も恋には興味がありません。
将来レティシア様に相談されることがあればもちろん協力します。マール様が婚姻できるかはわかりません。
エスコートする権利を手に入れてもレティシア様の怒りは卒業式までに冷めないと思います。
私は残り少ない学園生活を楽しみましょう。久しぶりに今度の休養日はレティシア様がうちに泊まりにくるのでハンナも呼んで3人で過ごしましょう。
ルーン公爵邸ではマール様が訪問されるので嫌だそうです。
エイベル様からの手紙も読まずに燃やしています。
巻き添えになったフィル様はすでに許してもらっています。そしてフィル様も無駄とわかっているので説得することはありません。
このレティシア様を動かせるのはお二方だけでしょう。それに気づく余裕がマール様にあるとは思いませんし、私は教えてあげませんよ。
レティシア様は今日も楽しそうです。生きる気力もわかずに一人だった私を照らしてくださる太陽の輝きが曇りませんように。
レティシア様が信じられない変わらないものの証明も些細な夢も叶えられるように、私も頑張りましょう。
「レティシアと婚姻したいから協力してほしい」
挨拶をすませ着席すると突然頭を下げるマール様への返事を私は持っていません。
矜持の高い貴族が頭を下げる行為は覚悟がいるものと聞きますが私にとっては価値のないものです。
頭を下げるのも社交手腕の一つ。
それは隣に座っているフィル様も承知しています。
私達の社交の師匠は必要ならためらいなく頭も下げ、高貴な者の象徴となる髪を切る方です。体面を気にしますが大事なのは自身の持つ誇りであり、頭を下げたくらいで傷つく安い矜持は持っていないと美しく微笑む自慢のお友達です。
目的のためには手段を選ばないのは目の前のさらに高貴な方も一緒でしょう。
フィル様を見ると興醒めしたような視線で頷いてくださるのでお任せしましょう。
私達はレティシア様の味方ですが、マール様との婚姻に賛成しているわけではありません。
「俺達に言われても困りますよ。しがない伯爵家にできることはありません。頭を下げられても困るのであげてください。俺達は忠義の塊ではないので」
いつも冷静なフィル様は流石です。私はフィル様が焦ったお顔をされたのは一度しか見たことがありません。お可哀想にベリー様はマール様のらしくない行動に戸惑った顔をされています。
「レティシアとの婚姻に必要なのはビアード公爵への勝利とエイベル・ビアードの同意。エイベル・ビアードの同意を取るのに協力してほしい」
「ご自分で。他家のことに口出しするつもりはありません」
「ビアード公爵家はレティシアに依存している。レティシアは弱い回復薬も治癒魔法も効かない。いずれ魔力が枯渇すれば死ぬだろう。俺は部外者だから干渉できない」
フィル様に全てお任せするつもりでしたが、初めて聞く話にマール様の顔を見ると嘘の色はありません。レティシア様はよく魔力切れで倒れますが、そこまで深刻な…。
「どういうことですか?」
「ビアード公爵夫妻もエイベルも知っている。でも変わらなかった。治癒魔法を使い過ぎれば耐性ができ効果がなくなる。広いビアード領をたった一人の治癒魔導士が担うなんて無理なんだよ。ビアード公爵夫妻がレティシアに求めることは命を削らせている。レティシアの体に治癒魔法をかけられるのは本人と王国一の治癒魔導士のルーン公爵くらいだ。イナリアの世話でレティシアが怪我をしても治癒魔法で治すから咎めない」
レティシア様は昔から治癒魔法が得意で怪我人を見つけるとすぐに駆けていかれました。休養日のビアードの視察では診療所に顔を出し指示を。
イナリア様がお生まれになってからの惨事はロキから聞いています。
自由なイナリア様に振り回されるレティシア様。私の兄もとても優しいですがレティシア様ほどではありません。
イナリア様のお世話はお一人では大変そうなので時々お手伝いをしています。レティシア様へのイナリア様の不満にお付き合いして、暴れるなら隣で見守るフィル様が魔法で眠らせてくれますのでそこまで大変ではありません。年々多忙になるレティシア様の生活はマール様が介入すれば何か変わるんでしょうか。
「マール様が婚姻すれば改善されるんでしょうか」
「婿入りすれば部外者でなくなりルーン公爵家と縁戚になる。ルーンの治癒師を派遣させレティシアの補助に使う。レティシアの治癒魔導士育成計画の邪魔はさせないよ。補佐官業務と治癒魔導士の兼任は無理だ。補佐官に任命されれば今までのように緊急要請に抜け出すことはできない。学園よりも社交が優先でもレティシアの欠席の多さは学園一、殿下よりも多いんだよ。公爵令嬢とはいえ働きすぎだ。兄の分も全て引き受けているしな。婚姻すれば俺が全部引き受けてやれる」
レティシア様は学年が上がるにつれてお休みが増えました。
エイベル様が卒業されてからは半分はお休みしています。生徒会のお仕事と課題に追われているのはよくある光景です。いつも物凄い速さでペンを動かしています。
「この婚姻はマール様ではなくレティシア様のためのものですか?」
「俺自身の欲もあるが婚儀を急ぎたいのはレティシアのためだ」
令嬢達が好むマール様に微笑まれても、見惚れることはありません。
私はレティシア様がお幸せになる応援は大歓迎ですが、マール様を信用できるかはわかりません。
必要なら手を組みますがレティシア様をお幸せにする会の幹部にするほどの実績はありません。
アロマの調べでは今のところはレティシア様以外に視線は向けてませんが、人は突然変わる危険なスイッチを持っているとレティシア様が言ってました。
ありえないことが起こってしまうのが人生なので情報を集めて速やかに動くしかないと。変わらないものなんてないのかもしれませんと寂しそうに溢したレティシア様を見てから、マール様は私達の警戒対象になりました。
「俺達は執念深い一族です。どんな事情があっても一度されたことを忘れません」
さすがフィル様です。
私達はサイラス様達のように簡単に味方をしませんわ。
私は口に出さずに微笑むだけです。味方のフリをして溶け込むのも大事なことです。そして危ないことや過激なことはフィル様に任せるのが約束です。
「俺がレティシアを傷つけるなら躊躇わずに斬ればいい。彼女を傷つけるのは自分自身でも許せない」
マール様が自身を許せるかはどうでもいいことです。
いつも前だけを見て誰にでも更生の道を説くのがレティシア様。レティシア様の心を乱すものは、歩みを妨げるものを排除することはマール様にできるのでしょうか。
「協力するかは役割を聞くまでは了承できません。エイベル様の説得に俺達を呼んだ理由もわかりません」
「エイベル・ビアードに卒業パーティーのレティシアのエスコートを賭けて決闘を挑むよ。審判と治療役を頼みたい。レティシアには知られずに」
レティシア様のために忠告を一度だけしましょう。
勝者の願いを叶える神聖な決闘がビアード公爵家でされるならビアード公爵令嬢であり治癒魔導士のレティシア様が見届け人になります。
「レティシア様は嫌がる行為です」
「わかっているがこれが最善。だから見つからないように協力を頼みたい」
忠告しても真剣な顔のマール様は引く様子はありません。
結果は見えていますが家格の高いマール様に命じられる前に当たり障りのない協力をしましょう。
「私の立場ではお役に立てませんがレティシア様が学園で過ごされる日はお教えます」
「感謝するよ」
「レティシアにキレられても知りませんよ。命に関わる時は止めます。審判だけなら引き受けます」
「治癒魔法もお任せください。及第点をいただいてます」
「ベリー嬢は給金を払うから在学中から、この話は後日だな」
マール様の考えていることは想像ができます。
武門貴族の令嬢達はマール様を見極めている最中です。学園で人気のマール様とレティシア様がモデルの物語で印象操作されるほど単純ではありません。でも確かにイナリア様のレティシア様への態度は姉妹とはいえ許されるものではないと思います。そして諫めないビアード公爵夫妻も。可愛いがりたい気持ちもわかりますが。
私はマール様のために説得はしません。
決闘される日はフィル様と一緒にビアード公爵領に訪問することにしました。
ビアード公爵夫人もいらっしゃるので何かあっても問題にはならないでしょう。
マール様がレティシア様のために動いているのはわかっても、協力するつもりはおきません。もしも、エイベル様に認められてもビアード公爵にはまだ敵わないでしょう。
レティシア様は生徒会の引継ぎで忙しそうに走り回っていますから、卒業パーティーのエスコート役のことは頭にないと思います。
「見てください。ビアードの騎士服です。お父様がくださいました」
「きっとお似合いですわ」
「ロキ、卒業パーティーは一緒にこれで出ませんか!?」
「ビアードの宣伝になりますね。来年の入団試験の希望者が殺到しますね」
「楽しみですわ」
ビアード公爵家の騎士服を嬉しそうに眺めています。
殿方の戦いが見えない場所でやるならお知らせする必要もないでしょう。もしもレティシア様が知ってお怒りになっても自業自得です。
結局はレティシア様に見つかりお怒りになりました。レティシア様はきちんと説明した上で決闘を申し込むのであれば反対せずに審判を務めてくれたと思いますが私は教えません。マール様がレティシア様のためにと暗躍されていますが、レティシア様は気付いていても何も言いません。
「またマール様が来てるよ」
「会いたくありません。ロキ、お願いできますか?」
「私が追い返そうか」
「リアナは課題をしてください。ロキに任せましょう。当分顔は見たくありませんわ」
レティシア様は根に持たない方ですが、逆鱗に触れると長いです。
「リオと婚約したい令嬢がいるなら喜んで譲りますわ。両公爵さえ説得してくださるなら。ポンコツの婿なんて早まりましたわ。サイラス様とソート様に求婚してもフラれましたわ。エイベルも婚約者を選びませんし、学園は平穏なのにうまくいかないものですわ」
決して学園は平穏ではありません。
ですがレティシア様にとっては些細なことのようです。
ビアード公爵家の問題に比べれば全てが。
出ていくロキを見送ってレティシア様は目の前で懇願しているカーチス様と呆れたお顔のスワン様を見てため息をついています。
「レティシア、シオン嬢の好みを教えてくれないか!?」
「被験者に進んでなってくださる殿方です。シオン伯爵家に人としての情緒を求めてはいけませんわ」
「やめたほうがいいって。クラムの手に負えないよ。侯爵の許しがあっても」
「自己責任で頑張ってくださいませ。私は色恋に関わりたくありません。貴族らしく家の利にならないことには関わりません」
「お前の婚姻だって利がないだろうが」
「両公爵が決めました。ですが後悔してますわ。クラム様が婿入りしてくださいますか?セリアとは定期的に面会するので愛人にしても構いませんよ」
「マール様に殺される」
「どこかにマトモな婿が転がっていれば。人生思うようになりませんわ。ステラは幸せになるんですよ」
「お茶の時間に丁度いいかな。父上から試作品が届いたから感想聞かせて」
「まぁ?ルーン領のものは全てが美味しいので試食はいらないと思いますが、美味しい。濃厚な香りが広がりますがいつもと違いますわね」
「製法を変えたんだよ」
憂いのお顔がエドワード様のお土産のおかげで幸せそうに笑っています。
私も恋には興味がありません。
将来レティシア様に相談されることがあればもちろん協力します。マール様が婚姻できるかはわかりません。
エスコートする権利を手に入れてもレティシア様の怒りは卒業式までに冷めないと思います。
私は残り少ない学園生活を楽しみましょう。久しぶりに今度の休養日はレティシア様がうちに泊まりにくるのでハンナも呼んで3人で過ごしましょう。
ルーン公爵邸ではマール様が訪問されるので嫌だそうです。
エイベル様からの手紙も読まずに燃やしています。
巻き添えになったフィル様はすでに許してもらっています。そしてフィル様も無駄とわかっているので説得することはありません。
このレティシア様を動かせるのはお二方だけでしょう。それに気づく余裕がマール様にあるとは思いませんし、私は教えてあげませんよ。
レティシア様は今日も楽しそうです。生きる気力もわかずに一人だった私を照らしてくださる太陽の輝きが曇りませんように。
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