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閑話 諜報の呟き
諜報のために学園に潜んでいます。
クロード殿下が今までは気にされていなかったこと、学園が平等でないことに気付かれてから改革を発表されました。
誰もが平等に学べるような環境が整うように生徒会役員を中心に尽力されています。あえて私を含め、諜報員が潜り込める穴も作られています。
王族の命令は絶対です。
ですが平等の学園のため殿下は不敬を問わないので自由に声を掛けることも許すと公言されていました。あまりに無礼な生徒は護衛に排除されるでしょうが…。
とはいえそのようなことをできる貴族は限られています。
クロード殿下にきちんと反対意見を言うエドワード様、レオ殿下をお叱りになるのはレティシア様。それ以外の生徒は不満を抱えたまま追従するだけです。
ここは資質を試されるところです。
王族も万能ではありません。
王家が愚策を施すなら、臣下が進言して諫めることを温厚な王族は許しています。そして資質のある者はきちんと意見を言います。卒業生ではカトリーヌ様やリオ様はよく意見しており評価されていました。
クロード殿下が宣言されたのは平等の学園ではずっと掲げられていた理念であり、当たり前のことでした。
不正は厳しく取り締まりましたが、平等に学ぶ環境を作るのは学園の本質と同じです。
遊んでいても卒業できてしまう簡単な教育内容は見直され、少しだけ難易度が上がりましたがそこまで厳しいものではありません。それでも楽に慣れた生徒は不満を持ちます。
両殿下の優しい統治でさえも不満を持つ生徒達は二人が卒業され、あらたに学園を束ねるエドワード様とレティシア様に不満を爆発させました。
誰かの所為にするのは楽です。
自分に従う生徒が減ったこと、学園が変わったこと、試験に落ち進級できなかったこと、良縁を逃したことなどの不満を、嫌がらせを受けていると家族に泣きつく姿は見苦しいと思います。
そして諜報員を仕込んでいない愚かな生徒の家族は誤解をして子供の言葉だけを信じてしまいます。生徒会役員からの嫌がらせと話し、敢えて誰が元凶か言わない生徒はさらにたちが悪いと思います。
エドワード様とレティシア様はどんな時も冷静に対処しています。
二人に言葉で敵わないと気づいた生徒は野蛮な手段を選ぶようになりました。
不満を持つ生徒の家からの圧力は学園長が対応しています。学園長は生徒会の運営に理解を示しているので、圧力に負けることはありません。
今の生徒会は王族であるクロード殿下の意向のもと動いており、役員の多くは上位貴族。そんな生徒会がまとめる学園に圧力をかけられるのは、ルーン、マール、シオンの三家くらいということも気付かず圧力をかけようとする行為が心象をさらに悪くしていると気付かない親にして子もありということでしょうか。
親に頼っても何も変わらないと気付いた生徒達は禁忌を犯しはじめました。
学園を休むことが多くても登校されれば相談者には時間を作り快く対応されるレティシア様が呼び出された教室には男子生徒が忍んでおります。
教室に入ったレティシア様は礼をしました。
「ご用件を伺います。お顔を見せなくても構いません」
忍んでいる生徒達がレティシア様に気付かれていることに驚いています。
ビアード公爵令嬢ですから武術も身に付けられていますよ。
一斉に男子生徒達がレティシア様の前に出ました。
レティシア様の肩に手を掛けられて力任せに押し倒しています。
普通の令嬢ならすぐに救出に動きますがレティシア様には必要ありません。
ため息が聞こえ、ピシャリと音がしました。男子生徒達は水浸しです。
「手合わせにはきちんとした手続きを取ってください。次は生徒会で動きます。では失礼します」
レティシア様はのしかかる男子生徒を見事に投げ飛ばして立ち上がり埃を払いました。
上機嫌な笑みを浮かべて礼をして部屋を出て行きました。
「綺麗にきまりましたわ。でも知られたらうるさいので内緒にしてくださいませ」
たぶん私に気付かれているんでしょう。小首を傾げて笑うお顔は可愛らしいですが、申し訳ありませんが報告します。
レティシア様を傷物にしようとしている生徒は華麗に撃退されています。
傷物になれば公爵令嬢としての価値が下がります。ですが傷物になったところで本当に価値のあるものは重宝されます。
レティシア様は傷物にされても、脅しに屈して命令を聞くようなご令嬢ではありません。何度水浸しにされれば理解されるんでしょうか。
エドワード様も同じです。
華奢な体のエドワード様は、武術の授業を受けていないので知られていませんが武術が得意です。ターナーの天才であるルーン公爵夫人に幼い頃から仕込まれていたので騎士見習いにも負けません。
強いことが知れると油断を誘えず餌になれないからと敢えて隠してます。
力に屈することはありません。
公爵家出身の矜持の高いお二人が膝を折り従うのは当主と王族だけですから。
エドワード様とレティシア様は不正は許しませんが自分達が襲われても処罰しません。
決して個人のために家の力を使わない二人。これが勘違いをよんでいます。
何をしても家が動かない、平等の学園は何をしても許されると。
二人が家の力を使わないのは必要ないからです。個人で対処できる自信があり、動けば多くの生徒の家が連座で裁かれ血の海になるとわかっているので言葉で語りかけています。フラン王国でも序列の高い公爵家に手を出すのは禁忌ですから。
「立場がわかってるのか!!」
「見苦しいですよ。ここは平等の学園であり権力を使うことは許されません。どうしてもでしたら相手になりますよ」
「ルーン!?」
「誰でも間違いはあります。どうされますか。理解していただけて感謝します。それでは」
貴族に虐められている生徒を保護して笑顔で去っていくエドワード様。
「次があれば生徒会に教えてください。できれば複数で動いてください。行き届かなくてすみません」
「ありがとうございます」
爽やかに微笑むエドワード様に小柄な生徒が礼をして去っていきました。私の方を見てため息をついています。
「想定内」
エドワード様は敵と信者を増やしています。
「価値あるものは正しく評価されます。学んだことを生かして欲しいと思います」
そして爽やかな笑顔でフラン王国の明るい未来を語るお姿に純粋な生徒からは羨望の視線を集めています。
エドワード様とレティシア様が並ぶと美しく、側に控えるロキ様も美少年です。美しいものにひかれるのは血筋も身分も関係ありません。
「スカウトはどう?」
「声は掛けましたが決めるのは皆様です。でもまだ足りませんのでうちで鍛えてからお傍に引き入れましょう。学園の授業だけでは時間が足りません。質の悪さに恥ずかしくて殿下の傍にはとても」
「鍛えるのはうちも引き受けるよ。スカウトだけ」
「スカウトは任せてください。ありがとうございます。中々言葉が届きませんね。卒業までは見逃しますわ。成人すれば容赦は致しません」
「ここは平等の学園。夢のような世界ではなく広がっている現実に気付くか」
「甘美な夢に浸れるのが羨ましいですわ。後輩達も育ちましたし、あとは任せましょう」
「騒がしくなる。どれだけ残るだろうか」
「そこまで難しくありませんし、ほぼ残るのでは?」
微笑む姿は美しい。
ですがレティシア様の言葉通りにはならないでしょう。
甘やかされて育った貴族、現実に気づかない生徒も多いでしょう。
そしてうすうす気づいてましたがリオ様はおバカでした。
学園に頻繁に訪問されるリオ様に今日もレティシア様から絶対零度の視線が送られています。
リオ様とレティシア様の不仲の噂が出ています。リオ様はレティシア様を怒らすことが得意です。レティシア様を恋い慕う少年を容赦なく叩きのめしてやりすぎと怒られ面会謝絶中です。
リオ様は落ち込んでいますが、レティシア様の生活には支障はなさそうです。
学園ではレティシア様が怪しい薬でリオ様を操っていると言われていますが、そのような様子はありません。
レティシア様がローブを着て部屋で薬を調合するのは有名なため、ビアードの魔女と言われてます。
そして違法な惚れ薬を作っていると思い込んでいる女子生徒が時々薬を分けてほしいとレティシア様の部屋を訪ねています。
シオン様の被験者を減らそうと学園を走り回るレティシア様がそのようなことはしないときちんと考えればわかるのに。
そして公爵令嬢に図々しく物を強請るのも普通ならありえないこと。
「どうぞ。洗浄してから使ってください」
笑顔でレティシア様は傷薬を渡されます。
最近は生徒に配るように常備しているお優しさが悲劇を呼んでいます。
傷によく効く塗り薬を女子生徒に飲まされ苦さに悲鳴をあげる男達に同情します。
手作り料理が流行っているのを利用し、苦いものを騙して強引に食べさせた女子生徒が避けられ良縁が逃げるのも当然でしょう。
飲み薬と塗り薬の区別もつかずレティシア様に騙されたと逆恨みを持つ女子生徒達は卒業試験に受からないでしょう。
色恋嫌いなレティシア様は悲劇や喜劇が起こっていることに気付いていません。
つい先日は異母兄と婚姻したい伯爵令嬢の相談を受けて勘違いをしていました。
「お兄様はいつも寝室を共にします。帰るといつも一緒で、離れてくださらず」
伯爵令嬢が不満そうな声で話しているのは長男夫婦のことです。
仲睦まじい夫婦の様子ですが、レティシア様はシスコンの次男と伯爵令嬢のことだと思い込み真剣な顔をしていました。
伯爵家は伯爵令嬢が嫡男の異母兄に本気で恋い焦がれていることを隠しています。深く調べなければわからないことでしょう。次男のシスコンは隠していません。
シスコンの兄に妹が襲われることを危惧したレティシア様は伯爵夫人に事情を説明して対処するように求められましたが本気にされず、偶然事情を知った嫡男夫婦が顔を真っ青にしていました。
公爵令嬢の命令に逆らう伯爵夫人の無礼は取り潰されてもおかしくない行為。
寛大なレティシア様だから許されたこと。
また礼儀を知らない伯爵令嬢がレティシア様に頻繁に面会し物を強請っていることもありえないこと。
嫡男夫婦は友人の妹であるステラ様に頼んで動いてもらいました。
そしてベリー様が伯爵令嬢を遠ざけるように動かれました。
レティシア様はシスコンの伯爵家次男の婚約が決まったので伯爵令嬢の調査をやめたためお友達が動いていることは知りません。
婚約者のリオ様が動かなくてもレティシア様を慕う皆様が勝手に動きます。
レティシア様を守りたいと言うのに空回りが得意なリオ様と違いご令嬢達は逞しく見ていて気持ちがいいものです。
「お二人の婚約は破棄されるんですか!?」
「両当主の判断に従います。失礼します。マトモな婿が転がっていないでしょうか。フィルに双子の弟は」
「一戦やるか」
「お願いします。ロキ、任せますわ」
連日のリオ様の面会を全てロキ様に任せているレティシア様はフィル様と一緒に訓練場に行きました。
そして卒業も近いためレティシア様に焦がれる男子生徒が殺到してます。
リオ様への不服をご友人に話す様子に聞き耳を立てていた女子生徒はリオ様へのアプローチに燃えています。
愛人でもいいから侍りたいと。公爵子息の愛人なら贅沢な生活が約束されます。夢を与えるリオ様は現実では、レティシア様以外には見向きもしません。レティシア様に会ってもらえずに途方にくれています。
主にとっては卒業試験に落ちた生徒達がエドワード様とレティシア様を逆恨みしていることよりも二人の不仲のほうが問題です。
「サイラス様、うちに婿入りしませんか?」
「俺には荷が重い。リオは」
「知りません。ビアードの未来のためにマトモな婿が」
レティシア様は理想の婿のサイラス様にまた求婚されています。そして大量にレティシア様に届く恋文を見てため息をついています。
「愛人ではなく婿が欲しいんです。どうして愛人の誘いばかりですの」
私は頭を抱えるであろう報告書をまとめて提出しました。
エドワード様とレティシア様が卒業試験に合格したことは記載しなくてもわかるので敢えて書いていません。
報告書を読んだカナト様は呆れた声をエレン様はため息をつきました。
「この大事な時期に何をしてるんだ」
「卒業パーティーのエスコートは婚約者として認められているとアピールする場なのに」
「わかってます。レティシアさえ同意してくれれば任せてもらえる手配はすんでます。あの猿の所為で」
「殿下に頼みなさいよ。襲われていることよりもエスコートできないほうがまずいわよ。エドワードとレティシアの噂が囁かれてるでしょう?」
「愛人を飼うならうちの別邸貸すから、ビアード公爵家に見つかるなよ」
「シア以外はいりません。シアに婚約破棄されたらシアの愛人を目指します」
リオ様が愛人に迎えられることはないでしょう。
私にレティシア様に恋文を渡した男の名前を聞く前にやることがあると思いますよ。
リオ様は自分を追いかけるファンを嫌っているのは同族嫌悪だと思います。マール公爵家では学園の改革よりもお二人が無事に婚姻できるかが気に掛けられています。
「卒業したら容赦せずに潰してやる」
「その前にレティシアの怒りを鎮めなさい。レティシアは怒りという感情がないと思ってたわ」
エレン様、レティシア様は短気ですよ。
微笑みながらよく怒っていらっしゃいますよ。両殿下のお傍を離れた近衛騎士に冷たい笑顔で諫めていました。
はたしてリオ様が本当に婚姻できるかわかりません。
令嬢達にリオ様は大人気ですが私は理解に苦しみます。
レティシア様の一押しの頼りになるフィル様やサイラス様のほうが幸せにしてくれると思います。リオ様は情けなくおバカですから。
お勉強はできるのに、肝心な時に愚策を。
お2人が婚約できたのは奇跡でしょう。婚約したことで全ての運を使い果たしてしまったのかもしれません。
私は求められるままに動くだけです。
帰りたいんですがまだ用があるんですか?
レティシア様がリオ様のことをどう言っていたかって、マトモな婿が欲しいと嘆かれていましたよ。もしサイラス様がレティシア様に求婚されたらリオ様はフラれるでしょう。
レティシア様がお慕いするサイラス様がお友達で良かったですね。
フィル様も婿入りできませんし。リオ様にはカナト様達によるお説教が始まったのでようやく解放されそうです。初恋が叶うかどうかはまだまだわかりません。
レティシア様はリオ様のことなど頭になく駆け回っていると思いますよ。エドワード様と作戦会議をしながら。
クロード殿下が今までは気にされていなかったこと、学園が平等でないことに気付かれてから改革を発表されました。
誰もが平等に学べるような環境が整うように生徒会役員を中心に尽力されています。あえて私を含め、諜報員が潜り込める穴も作られています。
王族の命令は絶対です。
ですが平等の学園のため殿下は不敬を問わないので自由に声を掛けることも許すと公言されていました。あまりに無礼な生徒は護衛に排除されるでしょうが…。
とはいえそのようなことをできる貴族は限られています。
クロード殿下にきちんと反対意見を言うエドワード様、レオ殿下をお叱りになるのはレティシア様。それ以外の生徒は不満を抱えたまま追従するだけです。
ここは資質を試されるところです。
王族も万能ではありません。
王家が愚策を施すなら、臣下が進言して諫めることを温厚な王族は許しています。そして資質のある者はきちんと意見を言います。卒業生ではカトリーヌ様やリオ様はよく意見しており評価されていました。
クロード殿下が宣言されたのは平等の学園ではずっと掲げられていた理念であり、当たり前のことでした。
不正は厳しく取り締まりましたが、平等に学ぶ環境を作るのは学園の本質と同じです。
遊んでいても卒業できてしまう簡単な教育内容は見直され、少しだけ難易度が上がりましたがそこまで厳しいものではありません。それでも楽に慣れた生徒は不満を持ちます。
両殿下の優しい統治でさえも不満を持つ生徒達は二人が卒業され、あらたに学園を束ねるエドワード様とレティシア様に不満を爆発させました。
誰かの所為にするのは楽です。
自分に従う生徒が減ったこと、学園が変わったこと、試験に落ち進級できなかったこと、良縁を逃したことなどの不満を、嫌がらせを受けていると家族に泣きつく姿は見苦しいと思います。
そして諜報員を仕込んでいない愚かな生徒の家族は誤解をして子供の言葉だけを信じてしまいます。生徒会役員からの嫌がらせと話し、敢えて誰が元凶か言わない生徒はさらにたちが悪いと思います。
エドワード様とレティシア様はどんな時も冷静に対処しています。
二人に言葉で敵わないと気づいた生徒は野蛮な手段を選ぶようになりました。
不満を持つ生徒の家からの圧力は学園長が対応しています。学園長は生徒会の運営に理解を示しているので、圧力に負けることはありません。
今の生徒会は王族であるクロード殿下の意向のもと動いており、役員の多くは上位貴族。そんな生徒会がまとめる学園に圧力をかけられるのは、ルーン、マール、シオンの三家くらいということも気付かず圧力をかけようとする行為が心象をさらに悪くしていると気付かない親にして子もありということでしょうか。
親に頼っても何も変わらないと気付いた生徒達は禁忌を犯しはじめました。
学園を休むことが多くても登校されれば相談者には時間を作り快く対応されるレティシア様が呼び出された教室には男子生徒が忍んでおります。
教室に入ったレティシア様は礼をしました。
「ご用件を伺います。お顔を見せなくても構いません」
忍んでいる生徒達がレティシア様に気付かれていることに驚いています。
ビアード公爵令嬢ですから武術も身に付けられていますよ。
一斉に男子生徒達がレティシア様の前に出ました。
レティシア様の肩に手を掛けられて力任せに押し倒しています。
普通の令嬢ならすぐに救出に動きますがレティシア様には必要ありません。
ため息が聞こえ、ピシャリと音がしました。男子生徒達は水浸しです。
「手合わせにはきちんとした手続きを取ってください。次は生徒会で動きます。では失礼します」
レティシア様はのしかかる男子生徒を見事に投げ飛ばして立ち上がり埃を払いました。
上機嫌な笑みを浮かべて礼をして部屋を出て行きました。
「綺麗にきまりましたわ。でも知られたらうるさいので内緒にしてくださいませ」
たぶん私に気付かれているんでしょう。小首を傾げて笑うお顔は可愛らしいですが、申し訳ありませんが報告します。
レティシア様を傷物にしようとしている生徒は華麗に撃退されています。
傷物になれば公爵令嬢としての価値が下がります。ですが傷物になったところで本当に価値のあるものは重宝されます。
レティシア様は傷物にされても、脅しに屈して命令を聞くようなご令嬢ではありません。何度水浸しにされれば理解されるんでしょうか。
エドワード様も同じです。
華奢な体のエドワード様は、武術の授業を受けていないので知られていませんが武術が得意です。ターナーの天才であるルーン公爵夫人に幼い頃から仕込まれていたので騎士見習いにも負けません。
強いことが知れると油断を誘えず餌になれないからと敢えて隠してます。
力に屈することはありません。
公爵家出身の矜持の高いお二人が膝を折り従うのは当主と王族だけですから。
エドワード様とレティシア様は不正は許しませんが自分達が襲われても処罰しません。
決して個人のために家の力を使わない二人。これが勘違いをよんでいます。
何をしても家が動かない、平等の学園は何をしても許されると。
二人が家の力を使わないのは必要ないからです。個人で対処できる自信があり、動けば多くの生徒の家が連座で裁かれ血の海になるとわかっているので言葉で語りかけています。フラン王国でも序列の高い公爵家に手を出すのは禁忌ですから。
「立場がわかってるのか!!」
「見苦しいですよ。ここは平等の学園であり権力を使うことは許されません。どうしてもでしたら相手になりますよ」
「ルーン!?」
「誰でも間違いはあります。どうされますか。理解していただけて感謝します。それでは」
貴族に虐められている生徒を保護して笑顔で去っていくエドワード様。
「次があれば生徒会に教えてください。できれば複数で動いてください。行き届かなくてすみません」
「ありがとうございます」
爽やかに微笑むエドワード様に小柄な生徒が礼をして去っていきました。私の方を見てため息をついています。
「想定内」
エドワード様は敵と信者を増やしています。
「価値あるものは正しく評価されます。学んだことを生かして欲しいと思います」
そして爽やかな笑顔でフラン王国の明るい未来を語るお姿に純粋な生徒からは羨望の視線を集めています。
エドワード様とレティシア様が並ぶと美しく、側に控えるロキ様も美少年です。美しいものにひかれるのは血筋も身分も関係ありません。
「スカウトはどう?」
「声は掛けましたが決めるのは皆様です。でもまだ足りませんのでうちで鍛えてからお傍に引き入れましょう。学園の授業だけでは時間が足りません。質の悪さに恥ずかしくて殿下の傍にはとても」
「鍛えるのはうちも引き受けるよ。スカウトだけ」
「スカウトは任せてください。ありがとうございます。中々言葉が届きませんね。卒業までは見逃しますわ。成人すれば容赦は致しません」
「ここは平等の学園。夢のような世界ではなく広がっている現実に気付くか」
「甘美な夢に浸れるのが羨ましいですわ。後輩達も育ちましたし、あとは任せましょう」
「騒がしくなる。どれだけ残るだろうか」
「そこまで難しくありませんし、ほぼ残るのでは?」
微笑む姿は美しい。
ですがレティシア様の言葉通りにはならないでしょう。
甘やかされて育った貴族、現実に気づかない生徒も多いでしょう。
そしてうすうす気づいてましたがリオ様はおバカでした。
学園に頻繁に訪問されるリオ様に今日もレティシア様から絶対零度の視線が送られています。
リオ様とレティシア様の不仲の噂が出ています。リオ様はレティシア様を怒らすことが得意です。レティシア様を恋い慕う少年を容赦なく叩きのめしてやりすぎと怒られ面会謝絶中です。
リオ様は落ち込んでいますが、レティシア様の生活には支障はなさそうです。
学園ではレティシア様が怪しい薬でリオ様を操っていると言われていますが、そのような様子はありません。
レティシア様がローブを着て部屋で薬を調合するのは有名なため、ビアードの魔女と言われてます。
そして違法な惚れ薬を作っていると思い込んでいる女子生徒が時々薬を分けてほしいとレティシア様の部屋を訪ねています。
シオン様の被験者を減らそうと学園を走り回るレティシア様がそのようなことはしないときちんと考えればわかるのに。
そして公爵令嬢に図々しく物を強請るのも普通ならありえないこと。
「どうぞ。洗浄してから使ってください」
笑顔でレティシア様は傷薬を渡されます。
最近は生徒に配るように常備しているお優しさが悲劇を呼んでいます。
傷によく効く塗り薬を女子生徒に飲まされ苦さに悲鳴をあげる男達に同情します。
手作り料理が流行っているのを利用し、苦いものを騙して強引に食べさせた女子生徒が避けられ良縁が逃げるのも当然でしょう。
飲み薬と塗り薬の区別もつかずレティシア様に騙されたと逆恨みを持つ女子生徒達は卒業試験に受からないでしょう。
色恋嫌いなレティシア様は悲劇や喜劇が起こっていることに気付いていません。
つい先日は異母兄と婚姻したい伯爵令嬢の相談を受けて勘違いをしていました。
「お兄様はいつも寝室を共にします。帰るといつも一緒で、離れてくださらず」
伯爵令嬢が不満そうな声で話しているのは長男夫婦のことです。
仲睦まじい夫婦の様子ですが、レティシア様はシスコンの次男と伯爵令嬢のことだと思い込み真剣な顔をしていました。
伯爵家は伯爵令嬢が嫡男の異母兄に本気で恋い焦がれていることを隠しています。深く調べなければわからないことでしょう。次男のシスコンは隠していません。
シスコンの兄に妹が襲われることを危惧したレティシア様は伯爵夫人に事情を説明して対処するように求められましたが本気にされず、偶然事情を知った嫡男夫婦が顔を真っ青にしていました。
公爵令嬢の命令に逆らう伯爵夫人の無礼は取り潰されてもおかしくない行為。
寛大なレティシア様だから許されたこと。
また礼儀を知らない伯爵令嬢がレティシア様に頻繁に面会し物を強請っていることもありえないこと。
嫡男夫婦は友人の妹であるステラ様に頼んで動いてもらいました。
そしてベリー様が伯爵令嬢を遠ざけるように動かれました。
レティシア様はシスコンの伯爵家次男の婚約が決まったので伯爵令嬢の調査をやめたためお友達が動いていることは知りません。
婚約者のリオ様が動かなくてもレティシア様を慕う皆様が勝手に動きます。
レティシア様を守りたいと言うのに空回りが得意なリオ様と違いご令嬢達は逞しく見ていて気持ちがいいものです。
「お二人の婚約は破棄されるんですか!?」
「両当主の判断に従います。失礼します。マトモな婿が転がっていないでしょうか。フィルに双子の弟は」
「一戦やるか」
「お願いします。ロキ、任せますわ」
連日のリオ様の面会を全てロキ様に任せているレティシア様はフィル様と一緒に訓練場に行きました。
そして卒業も近いためレティシア様に焦がれる男子生徒が殺到してます。
リオ様への不服をご友人に話す様子に聞き耳を立てていた女子生徒はリオ様へのアプローチに燃えています。
愛人でもいいから侍りたいと。公爵子息の愛人なら贅沢な生活が約束されます。夢を与えるリオ様は現実では、レティシア様以外には見向きもしません。レティシア様に会ってもらえずに途方にくれています。
主にとっては卒業試験に落ちた生徒達がエドワード様とレティシア様を逆恨みしていることよりも二人の不仲のほうが問題です。
「サイラス様、うちに婿入りしませんか?」
「俺には荷が重い。リオは」
「知りません。ビアードの未来のためにマトモな婿が」
レティシア様は理想の婿のサイラス様にまた求婚されています。そして大量にレティシア様に届く恋文を見てため息をついています。
「愛人ではなく婿が欲しいんです。どうして愛人の誘いばかりですの」
私は頭を抱えるであろう報告書をまとめて提出しました。
エドワード様とレティシア様が卒業試験に合格したことは記載しなくてもわかるので敢えて書いていません。
報告書を読んだカナト様は呆れた声をエレン様はため息をつきました。
「この大事な時期に何をしてるんだ」
「卒業パーティーのエスコートは婚約者として認められているとアピールする場なのに」
「わかってます。レティシアさえ同意してくれれば任せてもらえる手配はすんでます。あの猿の所為で」
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「愛人を飼うならうちの別邸貸すから、ビアード公爵家に見つかるなよ」
「シア以外はいりません。シアに婚約破棄されたらシアの愛人を目指します」
リオ様が愛人に迎えられることはないでしょう。
私にレティシア様に恋文を渡した男の名前を聞く前にやることがあると思いますよ。
リオ様は自分を追いかけるファンを嫌っているのは同族嫌悪だと思います。マール公爵家では学園の改革よりもお二人が無事に婚姻できるかが気に掛けられています。
「卒業したら容赦せずに潰してやる」
「その前にレティシアの怒りを鎮めなさい。レティシアは怒りという感情がないと思ってたわ」
エレン様、レティシア様は短気ですよ。
微笑みながらよく怒っていらっしゃいますよ。両殿下のお傍を離れた近衛騎士に冷たい笑顔で諫めていました。
はたしてリオ様が本当に婚姻できるかわかりません。
令嬢達にリオ様は大人気ですが私は理解に苦しみます。
レティシア様の一押しの頼りになるフィル様やサイラス様のほうが幸せにしてくれると思います。リオ様は情けなくおバカですから。
お勉強はできるのに、肝心な時に愚策を。
お2人が婚約できたのは奇跡でしょう。婚約したことで全ての運を使い果たしてしまったのかもしれません。
私は求められるままに動くだけです。
帰りたいんですがまだ用があるんですか?
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レティシア様がお慕いするサイラス様がお友達で良かったですね。
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