夢みる令嬢の悪あがき

夕鈴

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10歳編

第十八話 隣国

私はお父様と一緒に船に揺られています。
目指すは海の向こうのお隣の国です。

「気分は悪くないかい?」
「はい。お父様。風が気持ち良いですわ」
「そうか。リリー、これからはどんな危険があるかわからない。だから護衛をつける」
「護衛ですか?」
「ああ。今日からは常に彼を側から離してはいけないよ。どこに行くときも必ず連れて歩きなさい」

お父様の後ろから背の高い騎士が近づいてきて、私の前で止まり跪きました。

「ディーンです。これよりお嬢様の御身をお守り致します」
「リリア・レトラです。よろしくお願いします」

挨拶を終えてからディーンは私の後に控えるようになりました。
船に揺られしばらくすると陸が見えてきました。
船から降りて、馬車に乗り、これから1か月間滞在する屋敷に案内されました。
ここは外務大臣であるお父様のために用意されている屋敷です。
屋敷には使用人もおり、生活に不自由がないように配慮されています。

「リリー、仕事に行ってくる。3日後のパーティーには連れて行くから今日は休みなさい」
「わかりました。いってらっしゃいませ」

お父様が出かけて行ったので私はこの辺りを散策することにしました。
ディーンは何も言わずについてくるので気にせず歩きます。
活気が溢れており、道はきちんと設備され整えられています。
まぁ外務大臣が滞在する屋敷を治安の悪い場所には用意しないので、この辺りは安全でしょう。
ディーンがいますし、もしも何かあっても危険はないでしょう。



知らない場所に行くときにはいつもニコラスが一緒でした。
もういない。
もしかして愛しい少女に出会ったのかもしれませんね。
ニコラスの幸せを祈りましょう。
きっと今頃、あら?
露店があります。
並んでいるのは、見たことのないものばかりです!!
この国のお金は持っているので、初めて見る料理を買いました。
この独特な匂いに土みたいな色の物体は食べ物には見えません。
美味しそうに食べている人もいるので、立派な料理のはずです。
スプーンですくって口に入れると辛っ!?
こんなに辛いのに周りの方々は平気なお顔で食べています。
泣きたい。
でも、こんな時に仕方がないなって代わりに食べてくれるニコラスはもういません。

「お嬢ちゃん、大丈夫かい」
「大丈夫です」
「お嬢ちゃんには早かったか。ほらこれと順番に食べてみな」

すっと渡された果物を受け取りかじりつくと甘くておいしい。
もう一度料理を口に入れる。
やっぱり辛い。急いで果物をかじる。果物の甘味で紛らわせて食べるしかないです。
残すのはマナー違反ですから。
なんとか食べ終わりました。
食事を頑張ったのは初めてです。知らない人に頭を撫でられました。

「嬢ちゃん、えらかったな。根性あるじゃないか」
「ありがとうございます。お代を」
「いや、いらないよ。そろそろ暗くなるから帰んな」

手を振って去っていく男の人を見送りました。

「お嬢様」
「わかってます。帰ります」

ディーンの言いたいことはわかります。
活気があり、整備されている場所でも夜は危険ですから、帰りますよ。
屋敷に着くと、大事なことに気付きました。
私、このあとは晩餐です。
きちんとお腹を減らさないといけません。

「ディーン、訓練してください」
「お嬢様?」
「お願いします」
「俺は優しくありませんよ」
「構いません」

屋敷の庭でディーンに訓練してもらうことにしました。
私、剣の心得はあります。
一瞬で剣を飛ばされました。

「お嬢様、弱すぎます」
「頑張ります。でも、魔法を使えば」
「いいですよ。それで俺に向かってきてください」

魔法を使ったのに惨敗です。
私の魔法が全然ディーンに当たりませんでした。
私、自衛に自信があったのに…。

「お嬢様、なんで落ち込んでるんですか?」
「私は自分の力を過信していました」
「筋は悪くないですが、経験不足です」
「私は剣の天才の指導を受けたのに」
「彼が教えたのは自衛方法と逃げ方でしょ?相手を倒せと教わりました?」

ニコラスは、「大事なのは逃げる隙を作るんだ。戦うのは最後の手段だよ」って言ってました。

「戦うのは最終手段だから、逃げろって」
「そうでしょうね。お嬢様の魔法は妨害や足止めばかり。きっと自分が守る気だったんでしょう。まぁ事情が変わったみたいですけど」
「ディーン?」
「帰ってくるまでは守りますよ。守りきらなかったら俺がどんな目に合わされるか」
「聞こえません。もっと大きな声で話してください」
「帰りますよ。お嬢様」

よくわからないけど、ディーンに言われ屋敷に帰りました。
使用人に晩餐の量は少なめに用意してもらったので、完食できました。
お父様は帰ってきませんでした。

****

翌日も散策に出かけました。
昨日の辛い料理はもう食べたくありません。
晩餐の席で気づきましたが、この国の味付けは濃いものが主流みたいです。
市を見ていますが、甘そうな物や果物が見当たりません。

「お嬢様!!」

ディーンに腕を引かれました。
驚いて見上げると、馬車が目の前をすごい勢いで通り過ぎました。

「ディーン、ありがとうございます」
「気をつけてください」
「はい」

市でいくつか本を見つけたので買いました。
明日はお父様とパーティーなので、この国の歴史の復習をしましょう。
甘い物は見つからなかったので、屋敷に帰って自分で作ろうとしたら料理長に止められました。
ここではお行儀よく過ごさなければいけないのを忘れてました。
この地域は甘味は高価なので市では売られていないそうです。
料理長にお願いすればいつでも作ってくださると言われましたが、そんな高価なものはお願いしにくいですわ。
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