じゃあパパでいいよ。

吉井春樹

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56いるからだいじょうぶ。

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ムスメがはじめて、

ジブンで育てるといって、

ジブンで選んで買ったお花。



小さなピンクのお花が

ぱっとあかるくかわいらしく

いくつも咲いていました。

お花屋さんに聞けば

育てやすいからおすすめ、とのこと。



そうして、それから

ムスメはじょうろに水をたっぷりと入れて

お花に水を注いでいました。

それはまるで、妹とか弟とか、

もっというと、ジブンの子供みたいに、

ジブンよりも弱い存在を

守ろう、とか、育てよう、とか、

なんかそんなたくましさを感じるほどでした。


それから数日たって、

朝、ムスメが水をあげようとすると

一輪、お花が咲いたままのカタチで落ちていました。


とても悲しそうだったこともあって

オクサンがそのお花は、

水を入れた花器に入れてあげることにしました。


次の日、こんどは2輪、お花が落ちていて。

それがつづいて、ムスメのお花からピンクは消えて

ぜんぶ緑色の葉っぱと茎だけになってしまいました。


それはそれは寂しそうで、

「お花さん死んじゃったん?」ときいたり

「お花さん、もう咲かないのかなあ」といったり

「お花さん、咲いてくれるの待ってるからね」といったり

とにかく、話しかけるようになりました(笑。


そんな風に思っていたとき、

オクサンと出かけてたムスメが

出先でお花に水をあげることを忘れた日がありました。


そのことをムスメがオクサンと話していると

「パパがお水あげてくれてるから、だいじょうぶ」

と言ったそうで、それをオクサンから聞きました。


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子どもの素直に、親は弱い。

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正直、その日はお水はあげてなかったんですが、
そんな風に、先に信じてくれてるコトバをもらうと、
その翌日からは、お花の土の濡れ具合を確認しては
ときどき、ぼくがお花に水をやるようになりました。

ぜんぶお花が枯れ落ちてから
1週間か2週間ほどつづけていると、
ようやく、1輪のお花が咲いてくれたのでした。

お花に話しかけるって
不思議なことなんだけど
コドモにとっては自然なことで
待ってあげられることや、
先にまわりを信じることとか、
そゆことを、学ばせてもらったのでした。

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