スライムスレイヤーZ! スライムに転生して俺Tueeeとかやってる馬鹿が影で支配する世界を僕はブチ壊す。

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第一話「死んだスライムだけが良いスライムだ」PART4

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 ……警備隊の詰め所に着くなり、惨劇が起こった。

 もう一人の小隊長のロドリゲス少尉とフーバー軍曹。
 サトルと言う少年は、この二人を目にするなり、問答無用で襲いかかった。

 すんなり武装解除に応じたので、ミリアとしては安心していたのだが……少年は素手でも十分凶悪だった……その拳の威力は凄まじく、ロドリゲス少尉の頭は少年の蹴りの一撃ではじけ飛び、フーバー軍曹も身体の真ん中に大穴を空けられて即死した。

 丁寧な物腰と温厚そうな風貌に、節度ある人物だと評価していたミリアには、この行動は全くの予想外で……誰も止める暇すらなくその凶行は一瞬で行われた。

 その結果、椅子に座ったまま首なしとなったロドリゲス少尉と壁に縫い付けられたフーバー軍曹……二人の惨殺死体が出来上がった。

 けれども、その直後に二人の惨殺死体に異変が起きた……流れるはずの血が一滴も流れず、その代わりに粘ついた粘液が撒き散らされ……挙句に、その身体が見る間にゼリー状の物体へと変化し、蠢き始めたのだから。

 それを見て、レインがすかさず浄化の炎で焼き払う……ゾンビだのスケルトンと言った不死者を滅ぼす浄化の炎……ミリアも見たことのある光景だった。

 スライムにも効くというのは、実際目にするまで、知らなかったのだけど。

 浄化の炎で滅せられるのは、邪悪な生物、理に反するモノだけ……。
 つまり、それは二人の同僚が人ならざるモノに成り代わっていたと言う衝撃の事実に他ならなかった。

 二人はぐねぐねと蠢きながら、見る見るうちに干乾びるように縮んでいき……やがて、完全に消滅する。

「やっぱり、治安部隊にも入り込んでたな……こりゃ、この街だけで何匹いるか解らんな……レイン、よくやった」

「えへへ……お役に立っちゃいました! けど、今のすごかったですね……このスライム、反応すらできなかったみたいですよ」

「スライムはしぶとい……まともに戦うもんじゃない……人化してる間は力も反応速度も大したもんじゃないから、不意打ちでコアを潰して動けなくさせるのが一番手っ取り早いな……と言うか、今までどうやってたんだ?」

「スライムの人化はパッと見区別がつかないから厄介だったんですよ……捕食対象の脳から直接情報を吸い取るから、本人しか知らないことを知ってたり、仕草から生活習慣とかそんなのまで再現しますからね……いっそ、斬りつけて血が流れるかどうかで判別するくらいしかありませんでした。」

「そりゃまた、随分大雑把と言うか……雑なやり方だな……誤認で一般人を殺したりしなかったのか?」

「実は、うっかり間違えたり、巻き添えで一般人を殺しちゃったりも日常茶飯事……権力者相手だとミスは許されないから、下調べとかすごく大変だったって、お姉ちゃんが言ってました! でも、サトル様なら見るだけで判別出来るし、誤爆もありえないから、怪しい奴のとこへ行って片っ端から殺し放題……最高ですね! ……レイン、スライムを浄化するのが、ちょっと快感になって来ちゃって……ちょっとヌレヌレになっちゃいましたわぁ……」

 そう言って、頬を赤く染めて、モジモジと腰をくねらせるレイン。

「はっはっは! どこがどうなってるとか、敢えて僕は聞かないからな……とりあえず、もう黙ってろって言わせてもらうぞ! お前、その見かけでそう言う下ネタはマジで止めような……」

 そう言って、サトルがレインにデコピンをするとレインのこめかみに拳をグリグリ押し当てる。
 顔は笑顔なのだけど、額に青筋を立てていて、明らかに怒っていた。

 何故か「ああんっ……サトル様ぁっ! イッちゃうッ!」なんて切なげな悲鳴をあげて、ビクンビクンと震えるレイン。

 
 たった今、同僚を惨殺した二人のあまりに軽薄な場違いなまでの会話に、ミリアも返す言葉を失う。

 だが……正確にはその表現は間違っていた……同僚を惨殺ではなく、同僚の形をした化物を駆逐した……そう言う事だった。

 ロドリゲス達が人間じゃなかったのは、先程見たゼリー状の身体で明らかだった。

 けれど、ミリアはその直前まで彼らが人間だと思いこんでいた……なにせ出動の直前まで、普通に会話していたし、士官同士と言うことで昼食を共にして、今週の勤務ローテーションについて話し合ったりしていたのだ。

 だが、彼らはその正体を一瞬で暴かれた上に、不浄なるものだけを焼き払う浄化の炎で焼き尽くされた。

 生真面目なロドリゲス少尉と、お調子者のフーバー軍曹はもう何処に居ない……それは、紛れもない事実だった。

「さて……ミリアさん、これ以上無いほどに解りやすいスライムの脅威と言うものを、肌で感じ入ってくれたと思うんだけど、僕達にまだなにか言うことがあるかな?」

「……今のは……なんなんだ……今のが偽物だとすれば、本物のロドリゲス少尉は……どうなったのだ?」

 答えなんて解りきっていたのだけど、それでもミリアはそう尋ねずには居られなかった!

「彼らは、もうとっくの昔に死んでいたんだよ……スライムの成り代わりは人を捕食して、その者に成り代わる……だから、成り代わられた時点でもう手遅れなんだ。
そこに居たのは、そのロドリゲス少尉の姿を借りただけの化物だ……だから殺した……それ以外の対応はありえないだろ?」

「……バカな……だからと言って……こんな事が許されて良い訳が……」

 ミリアも内心では、彼らを恨むんだり、非難するのは筋違いだと言うことは解っていた。

 要はアンデット化した者を葬り去った……彼らのやったことは、それと何ら違いがなかったから。
 いくら知り合いと同じ姿をしているからと言って、ゾンビ相手に躊躇ったら、確実にあの世行きだ。
 闇の生き物たちに、一切の同情も手加減も無用……殺るか殺られるかのどちらか。

 それは騎士として、常識以前の問題だった。

『いい化物は死んだ化物だけだ! 化物相手に情けは無用! 手加減なんて出来るなんて思うな! 貴様らも甘い考えはすぐに捨てろ! さもなくば自分か仲間の誰かが死ぬ……良く覚えておけ!』

 騎士団訓練学校の訓練教官の言葉が思い起こされる。

「……悪いね……事情を説明するくらいはしておくべきだった。けど、これが現実なんだ……人の世に平然と化物が紛れ込んでいる……僕は、それを一目で見分けられる。君にとっては、彼はよく知る人だったのかもしれないけど……諦めて欲しい……人と化物の共存なんて夢物語を本気にしてる訳ではないだろう?」

「す、すまない……理屈では解ってるんだ……君の言っていることは恐らく正しい……。だが、彼らは私の同僚だったのだ……昼食だって共にして、いつもどおりフーバー軍曹のくだらないセクハラ質問を笑い飛ばして……そ、それが目の前で……。すまん! 駄目だな……気持ちが追いつかない……なんとも、情けない話だ」

 葛藤している様子のミリア……他の兵士達もどうして良いか解らず、呆然としていた。
 サトルはそんな彼女を見つめると、その頭に軽く手を乗せると微笑みかけた。

「ミリアさん、ありがとう。逆上して斬られるくらいは覚悟してたんだけどね……君はたぶん正しいと思う。割り切れないのが普通なんだ……だからこそ、僕は……人の良心に付け込む奴らが許せない! ……ここから先の事はすべて僕が引き受ける……この街から奴らを駆逐する! 僕を憎んだり恨んだりして構わない。それで君達の気が済むのなら安いものだ……君達は自分達の正義の為に、己が責務をまっとうするんだ……いいね?」

 まるで子供のように諭されて、ミリアは思わずボッと顔を赤くする。

 ……一見優男にしか見えないのだけど、この男は別格だとミリアはそう感じた。

 軽薄そうな笑みを受かべてはいるのだけど……己が信念を貫く強い意志を感じさせる眼には一点の曇すら無かった。

 魔王軍の侵攻からこの国を守りきった大将軍サラトガ、ミリア最愛の父親でもある護庭騎士長ファルネリウス……このサトルと言う少年は彼らと同じ眼をしていた。

 ミリアは姿勢を正すと返事の代わりに、無言で敬礼を送る。
 他の兵士達もミリアに習って、一斉に敬礼を行う。

 サトルも同じように、ミリア達警備隊の面々に、見事なまでの敬礼を返すと、一礼と共に詰め所を後にした……。


 ……これは、この世界の歴史の一幕の物語。

 平和と安寧を求めて、一匹のスライムから成り上がり、恒久平和を実現しようとしたひとりの異世界人と、ただひたすらスライムを憎み、スライムを駆逐する為に女神の使徒として戦った若き戦士の……互いの存亡を賭けた壮絶な戦いの記録であるっ!
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