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2 招かれざる客

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「おいっ、猫をここへ入れるな!鳥と猫は犬猿の仲なんだって何度言えばわかる、てかそいつにかまっている暇があるなら掃除をしろ」
 驚いて振り向くと、セツナさんは俺をにらみながら腕の羽毛を撫でていた。よく見ると眼孔も開いていて俺はあわてて掃除を始める。横目で彼女たちの方を見ると、ユウナさんがにゅーるをあげ、セツナさんもなんだか嬉しそうにそれを見つめている。実は猫が好きだったり。
「そういえば、今日も動画撮影しているグループがいたね」
 膝でくつろぐ猫を撫でながらユウナさんが困ったように言う。
「あ、そうそう、ショーの最中なのに結構大きな声で喋ってるし、こどもたちよりも前へ出ようとするから困るんすよね」
 ここ最近、いわゆる動画投稿者が多く来場する。ある件で今ヨッツミ(四谷見ミシックワールドの愛称)がそこそこ話題となっているからだ。配信者たちの大半はマナーを弁えているが、たまに周りの迷惑をいともしない輩がやってくる。そういうときは俺らや他のスタッフが対応するのだが、こうも続くと嫌になる。
「来場者が増えるのはいいんでしょうけど、なんとかできないすかねえ」
「きぐるみにも平気で触ってくるし、なにか起きてからじゃ遅いものね」
 そう話していると、セツナさんが大きな目をにっと細める。
「今まで我慢していたが、そろそろ不満が爆発する頃だな。私にいい案がある」
 人間よりも長い年月を生きる妖怪は聡明で、大胆だ。俺は嫌な予感がしたが、ユウナさんとチャチャはきらっと目を輝かせてセツナさんを見る。
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