メティス・ラヴァルの冒険書

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学生編

116話 ボスコ砦26

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116話 ボスコ砦26

私達がトレントの変異種を倒して砦に帰還してから数時間、全ての変異種の討伐が終わり、その頃には集まっていたモンスターも森に退散して、見える範囲に生きているモンスターは全ていなくなっていた。

そこからは交代しながら警戒と魔核や素材の回収と処理をしていった。
まぁ素材に関してはモンスター同士の戦いや爆発や魔法でボロボロにしたから、ほとんどとれなかったんだけどね。

全てが終わったのは丸一日経ってからだった。




「メティスちゃ~ん、おはよぉ~。」
食堂でご飯を食べていると、向かいの席に魔法使いちゃんが座ってきた。

「おはよー帰ってきてからずっと寝込んでたって聞いたけどもぅ大丈夫なの?」

「ふぇ~むりぃまだ身体が痛いよぉ。」

「無理しちゃダメだよ。
っというか、一人で[紫眼]倒したって本当?」

「ぅん~一人ってのはぁ大袈裟だよぉ。
新技を試しただけだよぉ。」

「どんな技なの?噂だと竜になったとか翼が生えたとかよくわかんないんだけど。」

「なにそれぇ~変身なんてできないよぉ~。
雷魔法を全身にぃ発動させ、、、」

「メティス君!いるか?!」
突然食堂の入り口から大きな声が聞こえ、そっちの方を向くと、アムル様の所に一緒に行ったエルフさんがいた。

「はい!ここです!」

手を上げて返事すると、エルフさんが駆け寄って近くまで来た。
その表情は冷静さを装いながらもどこか焦った感じがする。
そして小さな声で
「アムル様がお呼びだ。」
と。



砦に帰還した後アムル様は意識を失い、樹の状態になった。
魔力や水分を与えても反応がなく、暫く見守ろうという事になっていた。

アムル様が現在いるのは砦の中心部から少しズレた広場で、日がよく当たり、騎士団の方々の憩いの場になっている場所。

到着するとアムル様を囲うように無数のスプライトが飛び交っていて、その更に外側に騎士団の方々がその様子を見守っていた。

「アムル様!メティスです!」
人垣を掻き分けながらアムル様の前に立つ。

「アァメティス、、、間に合ってヨカッタ。」
苦しみながらも優しく微笑んでくれるアムル様がそこにいた。

「お呼びで、、、」

「時間がスクナイ、シャベラセテくれ。」

頷きアムル様の目を見る

「マズは私はモウスグ死ぬ。
その前にワタシタイモノがアル。」
そう言うとアムル様の身体から細く長い枝のような蔓のような物が分離して浮かび上がり、ゆっくりと私の前に降りてきた。
それを両手で受け取ると、優しく温かい魔力をそこから感じ取れた。
「ソレはワタシの身体のイチブで魔力がカヨッテイル。
ヒトはそれからブキをツクルとキク。
メティス、キミにツカッテホシイ。」

涙ぐみながら頷く

「アリガトウ。
そして、メティスをキニイッテイタスプライトがいたね。
ソノコをメティスのソバニイサセテくれナイか?
ソノコは他のスプライトと少しチガウカワッタコだケド、好奇心がアリ優しいコなんだ。」

二度三度と頷き返事をする
するとアムル様の側から一体のスプライトが飛んできて私の周りを嬉しそうに飛び回っている。

「ヨカッタね。
アトは、アツシユに私の最後を伝えて欲しい。」

「はい。」

「アリガトウ。
次はイツモ来てイタエルフはイルか?」

「はい!ここに。」
エルフさんがスッと私の横に並び返事をして姿勢を正す。
逆に私は下がり、みんなと同じ場所に戻ってアムル様の最後を見届ける。


「イママデアリガトウ、君にもメティスとオナジモノを与えよう。」
そう言いながらアムル様の身体から素材が浮かび上がる。形は私のより太く短い。
「ユミがトクイだったネ。
ユミノカタチにデキればヨカッタが、コレが限界ダ。」

エルフさんがそれを受け取り震えていた。

「キミがイロンナ事情がアリここにイルのはシッテイル。その事情がコレで解決デキるコトをネガッテイル。」

それを聞いて深々とお辞儀をするエルフさん。
その光景を見て自然と拍手が湧き上がり、その拍手を聞いて振り返ったエルフさんの顔が更に涙に溢れた。

「ミナにキイテホシイ。
キタノサンミャクノ龍ノ盟主がカワッタ。
コンカイは戦いニヨル交代ダ。
ソレが原因スタンピートだ。
暫くハ森がアレルダロウ。
注意シナサイ。
。。。
。。

ハァ、、、
ツカレタナ。。。」



そして

アムル様の周りにいたスプライトは別れを惜しむように暫くその場を飛び回り、やがて森に帰って行った。



その後も遠征は続き、調査と討伐を繰り返した。
っと言っても討伐は既に大多数のモンスターを倒していたから。生態系が壊れない程度にして、基本的には追い返していった。
また調査に関してはスプライトちゃんが色々と有用な植物を教えてくれたり、この森の事を教えてくれて、今まで以上に調査が進んだってエルフさんが言ってた。
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