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4章 過去と罪と
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◆クラウディオ
闇夜に紛れ歩きながらヴィンセントの言うヴァンパイアの集落を目指した。
慣れない旅は想像していたよりも気力をすり減らしていった。
それまでは魔女や他のヴァンパイアから買ったという小瓶に入った血を飲んでいた。しかし、旅の最中に容易く用意出来るわけもなく、人間から吸う機会も度々あった。
吸血というものがどれだけ人間を不自由にするものか思い知った。そして生き血で喉を潤す高揚感も身体に刻まれていった。
ヴィンセントは恐ろしいほどに人を惹きつけ、惑わせるような魅力に満ちていた。抵抗すること無く血を差し出した若い男女や、きっと姉様も、そして私も……ヴィンセントに魅了されている節がたしかにあった。
彼と過ごす内にだんだんと、貪欲になっていく気がした。
彼が食事のため、ひいては私のために口説き落としているだけだと知りながらも、その柔和な笑みを他人に向ける様を眼の前で見せられるのは苦痛を伴った。場合によっては人間の欲を鎮めるために彼が手引きすることもあった。
それでも、ヴィンセントは私に優しかった。特別な感情を抱いていると思わせた。
だからこそ余計に憎らしかった。
集落まであと少しの村で数日宿をとった。都心を離れた田舎には魔女がいるはずだからと探しに行ったヴィンセントを見送り、一人で部屋の中に籠もっていた。
あの夜から、私の全てが変わってしまったのだと日に日に強く思うようになった。
何不自由無く、華やかな世界に身を置いて、気ままに暮らしていた。父も母も兄弟も友人もみな暖かかった。こうして孤独の中にいて初めてそれを思い知らされた。
ヴィンセントを庇ったことは後悔していない。彼に惹かれ、彼を守りたいと思ったのは事実だ。
けれど、あのとき……。
もしもなんて、考えても意味がないことはわかっていた。
空白の時間が、孤独の静寂がそうするのだと、思考をごまかすためにヴァイオリンを握った。
幼い頃から練習を積み重ね、聴衆を沸かせるくらいの腕前を自負していた。
しかしヴァンパイアになってから、それすらも奪われてしまった。
ヴァンパイアになり、身体機能が明らかに向上した。顕著だったのは握力の変化だ。人間の頃の感覚で触れグラスを壊してしまうほど、以前よりもずっと力が強くなっていた。ましてや繊細な指先の動作がいる楽器をうまく弾くことはできなくなっていた。
壊さないように慎重に握り肩に当て、弓を弦に当て引き下ろす。
力を抜いているつもりでも力がかかりすぎて音がガサつく。逆に力を抜こうとすると圧が弱すぎて音が出ない。
数週間前には、思うままに奏で称賛されていたというのにこんな音しか出せないなんてと、嫌になるばかりだった。
向ける宛のない怒りや鬱憤が溜まっていく。
ヴァイオリンをケースに戻し、ぼんやりとカーテンの隙間から差し込む光を眺めた。
日が傾き夜になり、やっとヴィンセントが戻って来る。
出掛けよりも乱れた髪や他人の匂いを纏わせていることをやけに腹立たしく思った。
「魔女を見つけるのに苦労したよ。こんな片田舎でも魔女狩りの影響が出てるとはね。昔はそこかしこにいたもんなのに」
相槌する気力すら無く、いつもと変わらず微笑む姿をぼんやりと眺めていた。
「クラウディオ? 平気?」
語りかける言葉を無視して塞ぎ込んでいると、彼はベッドに腰掛ける私の横に腰を下ろした。
「ほら血を飲んで」
血液の小瓶を差し出されるのに手を伸ばしながらも、近くにいることでよりその香りが鼻につき、心を乱された。私が部屋に籠もっている間に彼が何をしていたかなんて、想像もしたくないのに。
乱暴に瓶を摘み取る。力をうまく抜けずみしみしと音を立てて、手の中で小瓶が砕けた。シャツとズボンが濡れて、血液の生臭い匂いが広がった。
「……っ」
そのまま力任せにガラスの破片を握り込んだ。肌が裂ける痛みを感じ、涙が頬を伝い落ちた。
「クラウディオ……」
ヴィンセントの手が優しく拳を包み込み、力が抜けてくる。そっと手を開かれ、突き刺さる破片を彼が抜き取っていった。
されるがままになりながら、私はただすすり泣いていた。
「すまない」
謝るヴィンセントの手を払う。感情的になって力加減が出来ず大きな音が鳴る。はっとして彼の手を優しく握った。
「あなたが謝ることなんてない、私が……私が」
言葉に詰まってただ首を振ってみせた。
彼の手が頬に触れ、溢れ出し止まらない涙を拭った。
「良いんだ、全て僕にぶつけたらいい。怒りも不満も苦しみも」
穏やかに微笑む彼の優しさに溺れてしまいそうだった。
「それが君を変えてしまった僕の責任だ」
彼は言いながら、また私の掌の傷の具合を見て、ガラスの破片を抜き取っていった。
微かな痛みを感じながらも、少しずつ気分が楽になっていく気がした。
「僕を傷つけてもなじってくれてもかまわない。だけど、だけどどうか、自分を傷つけないで。クラウディオ……僕が君の全てを受け止めるから」
ヴィンセントの優しさに荒んだ心が少しずつ癒やされていく。
ふと血まみれの手に彼は顔を近付けた。そして、止める間もなく指先を彼の唇がなぞり、血を舐め取るように指の間を舌が蠢いた。
突然の行動に困惑し、同時にぞくぞくと変な感覚が背筋に走る。
「っ、ヴィンセント……なにして」
艶めかしい動きで、治っていく傷跡を追いかけ舌先が動く。
「もったいないだろ」
呑気に言いつつ指を咥え込まれ緩く吸い付かれる。
思えばヴァンパイアになってからというもの身体の不調に、制御できない力もあり、自分の身体に触れることがなかったとその時気付いた。
たったこれだけの刺激で容易く反応を示しているのを悟られないように、必死で平静を装った。
「服も見事に血まみれだね。すぐ洗わないと……さ、クラウディオ脱いで」
満足したのか血に濡れていた手を離すと、服に手をかけてくる。
慌ててその手を掴もうとして、はっとして手を引っ込める。また何も考えずに触れるところだった。
そうして一人であたふたしている間にヴィンセントがシャツに手をかけ脱がし始める。
「ま、待って自分で脱ぐから」
止める間もなくヴィンセントが器用にシャツのボタンを外していきズボンに手をかけた。
固くなっているそこに手が触れてしまい、羞恥で顔が熱くなった。
取り乱して迷惑をかけている上に、こんなにも簡単に反応してしまう姿を見られるなんて。
彼はくすりと微笑んで形を確かめるように手を這わせてきた。
「っ、も、いいから……そんなことまで」
布越しの刺激に翻弄され、これ以上醜態をさらさないように堪えた。
そんな私の気など知らないとでも言うように、刺激を繰り返すヴィンセント。
「僕に任せて?」
服の上から擦りつづけるヴィンセントの手に優しく触れて止めようとしてみるが、力を弱めすぎてびくともしない。
久しぶりの刺激に乱されて、このまま熱を吐き出したい欲で頭がいっぱいになった。
「んんっ、ぁ……んぁ、だめっ」
ボタンを外され下衣の中に手が滑り込み、より直接的な刺激を与えられる。
ヴィンセントのごつごつした手に包まれて快楽に悶えた。簡単に上り詰め、あっという間に彼の掌の中で果ててしまった。
「はぁ、あっ……ヴィン、セント」
ベッドに押し倒され彼の瞳と視線が交わる。
「神の教えを信じる?」
囁くように言いながら鼻先が触れ合い、お互いの熱い吐息が混じり合う。一向に治まらないままの私をまた刺激する彼の手つきに興奮を隠せないまま、回らない頭で言葉を絞り出す。
「なん、で……?」
「男同士、なんて自然の摂理に背くだろ」
今にも触れそうな彼の唇を求めている自分がいた。もどかしさに耐えきれず、私から彼の唇を奪った。柔らかい感触にうっとりとしながら彼の瞳を覗き見た。
「……聖書には、ヴァンパイアなんて書いていなかった」
そう返して、もう一度キスをする。
信仰心は人並みにあったけれど、初めて彼を見たときから天秤は傾いていたんだと思う。同性だと知りながら惹かれ、ヴァンパイアだと知ってからも彼を求める気持ちを止められなかった。
成り行きとは言え、こうして彼に触れられ求められる瞬間をいつも望んでいた。
「じゃあ、いいんだね」
「もう、手遅れだろ。焦らさないで」
もともと目を逸らしていただけで、心の奥に引っかかるのはいつも男性だった。それは間違いで隠さねばならないことだった。
だけど、彼はそれすらも受け止めてくれる。
ヴィンセントは優しく手ほどきしてくれた。募っていた嫉妬心や鬱屈とした気持ちも相まって、強く強く彼を求めるようになった。
彼もまたなだめるように、愛するように私に触れた。
蕩けそうになるほど優しい彼の手つきに惚れ惚れした。ちょっとした言葉遣いや視線さえも特別に感じた。彼が多くの人を虜にして求められるのは、ヴァンパイアの魔力だけが理由でないのがよくわかった。
闇夜に紛れ歩きながらヴィンセントの言うヴァンパイアの集落を目指した。
慣れない旅は想像していたよりも気力をすり減らしていった。
それまでは魔女や他のヴァンパイアから買ったという小瓶に入った血を飲んでいた。しかし、旅の最中に容易く用意出来るわけもなく、人間から吸う機会も度々あった。
吸血というものがどれだけ人間を不自由にするものか思い知った。そして生き血で喉を潤す高揚感も身体に刻まれていった。
ヴィンセントは恐ろしいほどに人を惹きつけ、惑わせるような魅力に満ちていた。抵抗すること無く血を差し出した若い男女や、きっと姉様も、そして私も……ヴィンセントに魅了されている節がたしかにあった。
彼と過ごす内にだんだんと、貪欲になっていく気がした。
彼が食事のため、ひいては私のために口説き落としているだけだと知りながらも、その柔和な笑みを他人に向ける様を眼の前で見せられるのは苦痛を伴った。場合によっては人間の欲を鎮めるために彼が手引きすることもあった。
それでも、ヴィンセントは私に優しかった。特別な感情を抱いていると思わせた。
だからこそ余計に憎らしかった。
集落まであと少しの村で数日宿をとった。都心を離れた田舎には魔女がいるはずだからと探しに行ったヴィンセントを見送り、一人で部屋の中に籠もっていた。
あの夜から、私の全てが変わってしまったのだと日に日に強く思うようになった。
何不自由無く、華やかな世界に身を置いて、気ままに暮らしていた。父も母も兄弟も友人もみな暖かかった。こうして孤独の中にいて初めてそれを思い知らされた。
ヴィンセントを庇ったことは後悔していない。彼に惹かれ、彼を守りたいと思ったのは事実だ。
けれど、あのとき……。
もしもなんて、考えても意味がないことはわかっていた。
空白の時間が、孤独の静寂がそうするのだと、思考をごまかすためにヴァイオリンを握った。
幼い頃から練習を積み重ね、聴衆を沸かせるくらいの腕前を自負していた。
しかしヴァンパイアになってから、それすらも奪われてしまった。
ヴァンパイアになり、身体機能が明らかに向上した。顕著だったのは握力の変化だ。人間の頃の感覚で触れグラスを壊してしまうほど、以前よりもずっと力が強くなっていた。ましてや繊細な指先の動作がいる楽器をうまく弾くことはできなくなっていた。
壊さないように慎重に握り肩に当て、弓を弦に当て引き下ろす。
力を抜いているつもりでも力がかかりすぎて音がガサつく。逆に力を抜こうとすると圧が弱すぎて音が出ない。
数週間前には、思うままに奏で称賛されていたというのにこんな音しか出せないなんてと、嫌になるばかりだった。
向ける宛のない怒りや鬱憤が溜まっていく。
ヴァイオリンをケースに戻し、ぼんやりとカーテンの隙間から差し込む光を眺めた。
日が傾き夜になり、やっとヴィンセントが戻って来る。
出掛けよりも乱れた髪や他人の匂いを纏わせていることをやけに腹立たしく思った。
「魔女を見つけるのに苦労したよ。こんな片田舎でも魔女狩りの影響が出てるとはね。昔はそこかしこにいたもんなのに」
相槌する気力すら無く、いつもと変わらず微笑む姿をぼんやりと眺めていた。
「クラウディオ? 平気?」
語りかける言葉を無視して塞ぎ込んでいると、彼はベッドに腰掛ける私の横に腰を下ろした。
「ほら血を飲んで」
血液の小瓶を差し出されるのに手を伸ばしながらも、近くにいることでよりその香りが鼻につき、心を乱された。私が部屋に籠もっている間に彼が何をしていたかなんて、想像もしたくないのに。
乱暴に瓶を摘み取る。力をうまく抜けずみしみしと音を立てて、手の中で小瓶が砕けた。シャツとズボンが濡れて、血液の生臭い匂いが広がった。
「……っ」
そのまま力任せにガラスの破片を握り込んだ。肌が裂ける痛みを感じ、涙が頬を伝い落ちた。
「クラウディオ……」
ヴィンセントの手が優しく拳を包み込み、力が抜けてくる。そっと手を開かれ、突き刺さる破片を彼が抜き取っていった。
されるがままになりながら、私はただすすり泣いていた。
「すまない」
謝るヴィンセントの手を払う。感情的になって力加減が出来ず大きな音が鳴る。はっとして彼の手を優しく握った。
「あなたが謝ることなんてない、私が……私が」
言葉に詰まってただ首を振ってみせた。
彼の手が頬に触れ、溢れ出し止まらない涙を拭った。
「良いんだ、全て僕にぶつけたらいい。怒りも不満も苦しみも」
穏やかに微笑む彼の優しさに溺れてしまいそうだった。
「それが君を変えてしまった僕の責任だ」
彼は言いながら、また私の掌の傷の具合を見て、ガラスの破片を抜き取っていった。
微かな痛みを感じながらも、少しずつ気分が楽になっていく気がした。
「僕を傷つけてもなじってくれてもかまわない。だけど、だけどどうか、自分を傷つけないで。クラウディオ……僕が君の全てを受け止めるから」
ヴィンセントの優しさに荒んだ心が少しずつ癒やされていく。
ふと血まみれの手に彼は顔を近付けた。そして、止める間もなく指先を彼の唇がなぞり、血を舐め取るように指の間を舌が蠢いた。
突然の行動に困惑し、同時にぞくぞくと変な感覚が背筋に走る。
「っ、ヴィンセント……なにして」
艶めかしい動きで、治っていく傷跡を追いかけ舌先が動く。
「もったいないだろ」
呑気に言いつつ指を咥え込まれ緩く吸い付かれる。
思えばヴァンパイアになってからというもの身体の不調に、制御できない力もあり、自分の身体に触れることがなかったとその時気付いた。
たったこれだけの刺激で容易く反応を示しているのを悟られないように、必死で平静を装った。
「服も見事に血まみれだね。すぐ洗わないと……さ、クラウディオ脱いで」
満足したのか血に濡れていた手を離すと、服に手をかけてくる。
慌ててその手を掴もうとして、はっとして手を引っ込める。また何も考えずに触れるところだった。
そうして一人であたふたしている間にヴィンセントがシャツに手をかけ脱がし始める。
「ま、待って自分で脱ぐから」
止める間もなくヴィンセントが器用にシャツのボタンを外していきズボンに手をかけた。
固くなっているそこに手が触れてしまい、羞恥で顔が熱くなった。
取り乱して迷惑をかけている上に、こんなにも簡単に反応してしまう姿を見られるなんて。
彼はくすりと微笑んで形を確かめるように手を這わせてきた。
「っ、も、いいから……そんなことまで」
布越しの刺激に翻弄され、これ以上醜態をさらさないように堪えた。
そんな私の気など知らないとでも言うように、刺激を繰り返すヴィンセント。
「僕に任せて?」
服の上から擦りつづけるヴィンセントの手に優しく触れて止めようとしてみるが、力を弱めすぎてびくともしない。
久しぶりの刺激に乱されて、このまま熱を吐き出したい欲で頭がいっぱいになった。
「んんっ、ぁ……んぁ、だめっ」
ボタンを外され下衣の中に手が滑り込み、より直接的な刺激を与えられる。
ヴィンセントのごつごつした手に包まれて快楽に悶えた。簡単に上り詰め、あっという間に彼の掌の中で果ててしまった。
「はぁ、あっ……ヴィン、セント」
ベッドに押し倒され彼の瞳と視線が交わる。
「神の教えを信じる?」
囁くように言いながら鼻先が触れ合い、お互いの熱い吐息が混じり合う。一向に治まらないままの私をまた刺激する彼の手つきに興奮を隠せないまま、回らない頭で言葉を絞り出す。
「なん、で……?」
「男同士、なんて自然の摂理に背くだろ」
今にも触れそうな彼の唇を求めている自分がいた。もどかしさに耐えきれず、私から彼の唇を奪った。柔らかい感触にうっとりとしながら彼の瞳を覗き見た。
「……聖書には、ヴァンパイアなんて書いていなかった」
そう返して、もう一度キスをする。
信仰心は人並みにあったけれど、初めて彼を見たときから天秤は傾いていたんだと思う。同性だと知りながら惹かれ、ヴァンパイアだと知ってからも彼を求める気持ちを止められなかった。
成り行きとは言え、こうして彼に触れられ求められる瞬間をいつも望んでいた。
「じゃあ、いいんだね」
「もう、手遅れだろ。焦らさないで」
もともと目を逸らしていただけで、心の奥に引っかかるのはいつも男性だった。それは間違いで隠さねばならないことだった。
だけど、彼はそれすらも受け止めてくれる。
ヴィンセントは優しく手ほどきしてくれた。募っていた嫉妬心や鬱屈とした気持ちも相まって、強く強く彼を求めるようになった。
彼もまたなだめるように、愛するように私に触れた。
蕩けそうになるほど優しい彼の手つきに惚れ惚れした。ちょっとした言葉遣いや視線さえも特別に感じた。彼が多くの人を虜にして求められるのは、ヴァンパイアの魔力だけが理由でないのがよくわかった。
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