【ゴミ拾い】と呼ばれ勇者パーティーを追放された俺…だがこのスキル、実はSSSランクの【万物拾得】だったらしい。

うはっきゅう

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第三章・魔王討伐編

第17話:空飛ぶゴミ船と、ヘドロの都

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「風の神殿」が崩壊し、再び砂の海に静寂が戻った。
 だが、俺たちの旅はここで終わりじゃない。
 手に入れたのは「風の宝玉」一つだけ。あと三つ、世界のどこかにある「ゴミ溜め(神殿)」を掃除しなきゃならない。

「……で、大将。次はどこに行くんだ?」
 リカルドが、スキフ(砂上船)の甲板で大の字になって空を見上げている。
「西だ。ガンドルフ総帥の話じゃ、次は『水の神殿』があるらしい」
「水かぁ……。酒割るのにちょうどいいな」
「お前、頭の中アルコールで漬かってんのか?」

 俺は呆れつつ、懐からあの「呪われた羅針盤」を取り出した。
 針は、砂漠の西側をビシッと指している。
 相変わらず「最悪の場所」を指し示すこのポンコツ(最高)ナビゲーターによれば、次の目的地は相当ヤバいらしい。

「でも、エディさん」
 フェンが、心配そうに砂平線を見つめる。
「この『サンド・スキフ』は、砂の上しか走れません。ここから西へ抜けるには、岩山を超えないといけないそうですが……」
「ああ、普通の船ならな」

 俺はニヤリと笑い、右手を船のマストに向けた。
 さっき、あの風の神殿で「拾った」ばかりの、とびきりの新スキル。
 試運転にはもってこいだ。

「しっかり捕まってろよ、みんな! ……【風の支配権エア・コントロール】、全開ッ!」

 ドォォォォンッ!!

 俺が叫んだ瞬間、船の下から爆発的な上昇気流が発生した。
 砂の上を滑っていたスキフが、ふわりと宙に浮く。
 いや、浮くだけじゃない。

「い、いくぞォォォォッ!!」

 ゴオオオオオオオオ!
 船を包み込むように風の結界が展開され、スキフはまるで矢のように空へと射出された!

「ひょおおおおおお!? と、飛んでるぅぅぅぅ!?」
「きゃああああっ! す、すごいですエディさん! 鳥になったみたいです!」
「お、おろろろろろ……! 揺らすな! 吐く! 俺は高いところがダメなんだよぉぉぉ!」

 歓喜するフェンと、顔面蒼白で船べりにしがみつくリカルド。
 俺たちは、砂漠を、岩山を、一瞬で飛び越えていく。
 これがSランク級の「風」の力。
 移動手段すらも、俺の手にかかればチート級だ。

 空の旅は順調だった(リカルドの嘔吐を除けば)。
 数時間後。
 眼下に、広大な青い海と、その海上に浮かぶ巨大な都市が見えてきた。

 水の都「ハイドロポリス」。
 無数の運河が張り巡らされ、白亜の建物が並ぶ、世界一美しいと言われる観光都市。
 ……のはず、だった。

「……エディさん、あれ……」
 セシリアが、船の上から指差す。
 その指先が震えていた。

 上空から見下ろすその都は、白くなかった。
 黒かった。
 美しいはずの運河は、ドス黒いヘドロで埋め尽くされ、街全体が腐ったような瘴気に包まれている。

「……うわぁ。こりゃひでえ」
 リカルドも、吐き気を忘れて顔をしかめる。
「俺の呪いセンサーがガンガン反応してやがる。街ごと『腐って』るぜ」

「……降りるぞ」
 俺は、スキフを街の港へと降下させた。

 港に降り立つと、鼻をつく強烈な悪臭が襲ってきた。
 腐敗臭、下水、そして魔物の体液が混ざったような臭い。
 かつて観光客で賑わっていたはずの通りは閑散とし、住民たちは口元を布で覆い、死んだような目で歩いている。

「ひどい……。これが、水の都……?」
 フェンが悲しげに耳を伏せる。

 その時だった。

「おい! そこのよそ者! 船を出すな! ここは封鎖地区だぞ!」

 警備兵らしき男たちが、槍を持って駆け寄ってきた。
 だが、その鎧は錆びつき、目には疲労の色が濃い。

「観光に来たわけじゃねえよ。……これを見な」
 俺は懐から「王の勅許状」を取り出し、ピラつかせた。
 水戸黄門の印籠みてえな効果があるはずだ。

「こ、これは……国王陛下の!? ま、まさか、あなた方は王都からの援軍……!?」
 警備兵の隊長らしき男が、縋るような目で俺たちを見る。

「援軍って柄じゃねえがな。……おい、この街はどうなってんだ? 何があった?」

 隊長は、ガックリと肩を落とし、語り始めた。

 一ヶ月前。
 街の中央にある「水の神殿」から、突如として黒い汚泥が溢れ出した。
 それは瞬く間に運河を汚染し、触れた魚や人を病気にさせ、ついには「汚泥の魔物」まで生み出し始めたという。

「神官様たちが浄化魔法を試しましたが、効果がなく……。市長も逃げ出し、私たちはもう、座して死を待つしか……」

「……ふーん」
 俺は、運河に溜まったドス黒いヘドロを見下ろした。
 ブクブクと泡立ち、見るからに有害そうだ。
 普通なら、触りたくもない産業廃棄物レベルの代物。

 だが。
 俺の【万物拾得オールゲッター】の目には、違って見えていた。

『対象:呪われた黒泥カースド・スラッジ
『所有権:放棄済み(神殿からの排出物)』
『成分解析:高濃度魔力(汚染)、水龍の体液ドラゴン・フルード、希少金属の粉末』

(……おいおい、マジかよ)

 俺は、口元をニヤリと歪めた。
 汚染魔力? 水龍の体液? 希少金属?
 これ、精製すればとんでもねえエネルギー資源になるじゃねえか。

「……隊長さんよ」
 俺は、警備兵の肩をポンと叩いた。
「あんたらにとっちゃ、こいつは『死の汚れ』かもしれないがな」

 俺は、躊躇なく、その黒いヘドロの中に右手を突っ込んだ。

「なっ!? やめろ! 触れたら皮膚が腐り落ちるぞ!?」
 警備兵が悲鳴を上げる。

 だが、俺は叫んだ。
「――俺にとっちゃ、最高級の『資源ゴミ』だッ!」

『スキル【万物拾得オールゲッター】発動』
『対象:運河の黒泥』
『拾得実行:【汚染除去】、【魔力抽出】、【希少金属精製】』

 シュウウウウウウウ……!

 俺の手を中心にして、黒いヘドロが渦を巻き、猛烈な勢いで吸い込まれていく!
 そして、黒色が消え失せ、あとには透き通るような「清流」だけが残された。

「は……? はあぁぁぁぁ!?」
 警備兵たちの目が飛び出る。
 フェンとセシリアも慣れたものだが、リカルドだけは「げぇっ、またやりやがった」と顔を引きつらせている。

『アイテム【高純度闇魔石ダーク・マター】×50個を精製しました』
『アイテム【ミスリル粉末ダスト】×10kgを拾得しました』
『スキル【液体操作リキッド・コントロールLV1】の欠片を拾得しました』

「……大漁だ」
 俺は、綺麗になった水で手を洗い、呆然とする警備兵たちに振り返った。

「案内しな。その汚い『ゴミ捨て場(神殿)』まで」
「街ごとピカピカに掃除してやるよ」

 こうして、「水の都」改め「ヘドロの都」での、大規模清掃作戦が幕を開けた。
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