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一つ目
しおりを挟む「これは・・・・・・」
鎧のある部屋へと着いたリアトは予想外の出来事に思わず声を漏らした。
そう、本当に予想外のことだ・・・・・・俺以外には、な。
ダンジョンに入ってから一度も魔物を見なかったために、そういうダンジョンだと思ったのだろう。
最後の部屋にはボス級の魔物。
名前は確か・・・・・・ゴブリンロード。
大規模のゴブリンを統率している下の上くらいの魔物だ。
こんなやつは倒すのに時間はかからないが、今のリアトたちのレベルじゃ難しいだろう。
このゴブリンロードはレベル92だ。
それに比べてリアトはたちは、寝てる間にステータスを見たが全員が50前後だった。
一番高いリアトで54
テレスタが49
トリストが52
オルガが一番低い48。
勝算は"運"、もしくは一斉に今ある最大の攻撃スキルを放つことくらいか。
一応言っておくがゴブリンロードがここにいるのは事前に俺が仕込んでおいたからだ。
「行くぞ!」
前衛であるリアト、トリスト、テレスタが攻撃を仕掛ける。
ザシュッ
ボトッ
ゴブリンロードの首が真っ二つに斬られた。
苦戦すると思われた戦いは、わずか数秒で決着がついた。
もちろん勇者の勝利。
元々の力では敵わないが、俺が魔法で気づかれないように剣が敵に当たる瞬間だけ攻撃力を極限まで上げた。
リアトも違和感なく攻撃ができただろう。
誰も俺を怪しむことはない。
「すげぇ、こんな強そうなやつを一撃で倒したぞ」
「私たち必要なかったね」
これで経験値をたくさんゲットできただろう。
4人がこちらを向いていない隙に、目隠しを少し下げステータスを少し盗み見る。
リアトは54から62にレベルが上がっていた。
もう少し上がると思ったが・・・・・・まあいいか。
強いやつと戦わせれば今まで以上に効率よく上がるだろう。
「よしっ、これで鎧は手に入ったぞ」
部屋の奥にある石碑の上に鎧が飾られている。
リアトが鎧を手にしたその時、ダンジョンが揺れ始めた。
「・・・・・・何が起こっているんだ」
みんなが混乱していると天井の方から木の破片が落ちてきた。
「この場所が崩れてきているんだ。すぐに出口を探すぞ」
トリストは冷静に判断して全員を逃がそうとしている。
「でも何処に」
「来た道を戻ってください!」
ここで死なれては困るから助けてあげよう。
その前に、ゴブリンロードの死体を回収っと。
ドロップアイテムなんて良いものは出ない。
ある条件下でしかアイテムは発生しないんだ。
完全に崩れる前に自分たちが落ちてきたところまで走る。
「ここからどうするの?」
オルガは心配そうに俺に聞くが、選択肢は一つしかないだろ。
「飛びます」
風魔法で全員を浮かせる。
ワープを使っても良いが、高度な魔法のため俺のレベルを疑われかねない。
元の場所へと戻れば、後は出口までひたすら走るのみ。
「もうすぐだ!」
やっとのことで外へと出られた。
ダンジョンへの入り口を見れば、ドアが元の木へと形を変えた。
ダンジョンの中と外とでは時間の進み方に違いがあるのか、あたり一面真っ暗になっていた。
「今日はここら辺で野宿にでもしようか」
この世界ではテントはあるが、魔導士がいないパーティーもしくは魔導士でも収納空間魔法が使えないパーティがほとんどなため、持っている者は少ない。
長時間歩く場合や何日と冒険に出る場合、大きくて荷物になるので買う人がいない。
寝袋だけというのがセオリー。
「ヘイト」
「はい」
「見張りなんだが俺とトリストでしていたが、お前にも任せていいか?」
「はい」
見張りなんて俺がバリアを張れば必要ないことだ。
だがそんなことを申し出たりはしない。
こっそりと張っておく。
「二時間ずつの交代で二番目にしてもらってもいいか?」
「大丈夫です」
俺たち以外はすでに準備をしていた。
真ん中の火の灯りを囲むようにして、等間隔で寝袋を敷いている。
それに火はキャンプのような焚き火ではなく魔道具が使われている。
厚さ1センチ、四方30センチくらいの軽い素材でできた板。
一角にスイッチがあってそこを押せば、焚き火くらいの火が出た。
こんな魔道具があったのか。
「飯にするか」
「そうだな」
そう言って取り出したのは保存食。
それはないだろ。
「ご飯なら俺に作らせてください」
保存食とかで満足できるわけがない。
「作れるのか?」
「はい」
料理に大事なフライパンをストレージから取り出す。
後はこの前森で狩った肉と調味料を準備する。
このような場所だから簡易的なものしかできないが・・・・・・。
「出来ました」
肉に塩胡椒をかけただけだが、最高の火加減で焼いたもの。
まずいとは言わせない。
「うまっ!」
「すごいおいしい!」
「口の中で溶けそう」
「ああ」
そうだろう、そうだろう。
俺も食べるが、やっぱり物足りない気はする。
自分で言うのもなんだがこの18年間、良いものを食べて育ったからな。
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