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第3章:ロボットとニンゲンの距離

終わりの始まりは近く

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 いつもとは雰囲気が違う。

 学校からの帰りに思った事だ。

 それから雑草を採りに行く。

 毎日のルーティン。

 ワンダが走り出す。

 突然の事に僕は慌ててワンダを追った。

「な、何これ……」

 畑が荒らされていた。

 ジャガイモ畑。

 唯一ここで育てられていた野菜。

 それが見るも無惨な姿で散らばっていた。

「何で、何でこんな事ができるんだよ」 

 僕は一つ一つ、また一つ、ズタズタになったジャガイモを拾い上げる。

 ワンダは悲しそうに畑の傍らで踞ってた。

 ロボットたちはこんな事をしない。

 ニンゲンだ。

 とうとうニンゲンが来たんだ。

 僕は確信した。

「父さん! 母さん! ニンゲンだ! ニンゲンがこの街に来たんだ!」

「そうか……」

「ケンタロー……」

 二人はそれきり黙った。

「これ見てよ! ジャガイモがこんな風にされて……。悔しくないの?」

「ケンタロー」

 父さんが神妙な声色で話す。
 機械による合成音だから同じように聞こえるはずなのに。何故か、いつもと違って聞こえる。

「何?」

「ロボットは最終的にニンゲンには逆らえないように造られている。だから、いつかはここもニンゲンに支配されるだろう」

「え?」

「ケンタローが行ってた町も、もうニンゲンが好き勝手して機能しなくなったのかもしれない」

「そんな、まだ半年も経ってない。二ヶ月、三ヶ月の話じゃんか」

「ならば、こんな食べる物にも困る所へ来る理由は?」

「それは……」

 ジャガイモと雑草しか食べる物のないのは事実。
 彼らがここに来るメリット……。

「エリー」

「?」

「エリーは彼らにとっての救世主を知っていたんだ。なのに、救世主なんていなくて。それでエリーを問い質すために来たのかも」

 あの時の事を思い出す。
 教会の奥。
 人間のエリーがいたあの部屋。
 そこに入っていくニンゲンたち。
 彼らにはどう見えたのだろうか。

「エリーと連絡は取れるのか?」

 僕は首を横に振る。
 あの後、僕は一度も彼女に会ってはいない。
 家の場所もうろ覚えで行く事は無理だろう。

「エリーさんを捜しなさい」

 母さんが僕の肩を掴む。

「え?」

「捜しなさい。気になるんでしょ?」

「うん」

「じゃあ決まり。さ、早く」

 母さんに背中を押されて僕は家を出た。

 とりあえず学校に向かう。

 初めて彼女を見たのが学校からの帰りだったから。

 途中沢山のロボットとすれ違う。

 しかし、ニンゲンとは会わない。

 確かに僕はニンゲンを見たわけではなかった。

 でも、あんな事をするなんてニンゲンが来たに違いないんだ。

 もしかしたら、本当は、ニンゲンなんて、来て、ないのかも。

 そんな思いが心に広がり始める。

 畑を壊したのは、ダレ?

 ダレ?
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