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第3章:ロボットとニンゲンの距離

夜、ひとり

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 ようやく墓地に着いた頃にはすっかり日が落ちていた。
 お寺に入る。
 とにかく休もう。
 暗い部屋を手探りで進む。
 誰の気配も無かった。
 お腹が空いていたけど、食べる物など何も持って無い。
 部屋の隅で膝を抱えて目を閉じる。
 橋を渡ったこちら側まではあいつら来てないようだ。
 明日になればエリーが来るのか。
 エリーが来たとして僕はどうしたら良いのだろうか。
 何を話そう。
 何から話そう。
 何をするべきだろう。
 そもそも僕はエリーと会ってどうしたいんだ……?

 そんな事をグルグル考えているうち、いつの間にか眠ってしまっていた。

 ーーーー

「っくしゅん!」

 自分のくしゃみに驚き目が覚める。
 外はうっすらと白み始めたらしく部屋の中が良く見える。
 畳敷きの部屋は空っぽ。
 家具の類いも何も無い部屋だった。
 その部屋の隅で僕は寝ていた。
 ぐぅ、とお腹が鳴る。
 そういえば昨日の昼から何も食べてない。喉もカラカラだ。

 ふらふらと外へ出る。

 気付くとあのお墓の前に来ていた。

 枯れた花束がそこにあった。

 しばらく来ていないのだろう。
 雑草も伸びている。

「あ、これ食べられるやつだ」

 僕は草をむしって口に運ぶ。

「まずっ!」

 土の匂いと苦味が口に広がる。
 思わず吐き出した。

 父さんはちゃんと食べられるように料理してくれてたんだな。

 父さんの顔が浮かぶ。

 とぼとぼと建物に戻る。

 台所があった。

 さて、どうしよう。

 とりあえず置かれていたコップを手に取った。水道の蛇口をひねると水が出る。僕は水の入ったコップをじっと眺めた。 

 ゆらゆらと水は揺れる。

 エリーはもうここには来ないのだろうか。

 ひとりぼっち。

 本当にひとりぼっちになったんだろうか。

 僕はコップの水を飲み干す。

 何か食べる物を探そう。

 あ。

 頭がクラクラする。

 熱っぽくて体がダルい。

 風邪か。

 僕は風邪をひいたのか……。

 僕の意識は途切れた。
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