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四章:王都攻防戦

44 マルチナと合流

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「ジン」

 町に入るとすぐにマルチナがいた。

「二人揃って俺に付き合うとは」

「仲間なんだから当然。やっとチームに入れたわけだし」

 胸を張って答えるマルチナ。
 ミファも隣でウンウンと頷く。

 そうだ。

 王都を出る前にマルチナも正式に仲間して、三人パーティになったばかりなのだ。

「ったく。自分の身は自分で守ってくれよ」

「私にはレッドがいるから大丈夫」

 マルチナにはテイムしたドラゴンのレッドがいるからな。だが、それはそれだ。

「レッドに頼ってたらいざというときに困るのはマルチナ自身だぞ」

「はーい。肝に銘じておきまーす」

「はあ。本当に大丈夫かな……」

 頭が痛い。

「で、これからどうするんです?」

 ミファが尋ねてくる。

「まずはここにいる冒険者の数や状況の把握。ま、情報収集だな」

「それなら私にお任せ」

 胸を張るマルチナ。

「何か良い方法があるのか?」

「テイムした魔物を使って探らせるのよ」

「このデカいドラゴンでか?」

「……アホなの?」

「アホじゃねーよ。こんな目立つ魔物じゃすぐに見つかるし、下手したらやられちまうぞ」

「いやいや。それは分かってるから。レッドは目立ち過ぎるから。それに町中でブレスなんて出したら大火事になるわ。ちっちゃいやつを使うの。すでに用意してるわ」

 マルチナは、ふふん、と鼻をならし、どや顔で俺を見てくる。彼女が指を鳴らすとネコが現れる。見た事がある子ネコ。

「わあ! かわいい!」

 ミファが声を上げる。

「でしょ? でしょ? かわいいよね」

「うん。すっごくかわいい。良いなあ」

「ミファも抱っこしてみる?」

「え? 良いの?」

 ネコを抱くとミファの顔がみるみる緩む。

「あの~。二人とも……」

「あ、ご、ごめんなさい。わ、私……」

「もう! 少しぐらいミファにネコの相手してもらっても良いじゃない! ケチ!」

 いや、そう言う事ではない。

 ネコと遊びたいならやる事終えてからと言いたいだけなんだ……。

「はいはい。ネコちゃーん。お仕事だって。こわーいおじさんが早く仕事しろって」

「誰がおじさんだ」

「そうですよ! ジンさんはお兄さんです!」

「はいはい」

 マルチナのサインに反応しネコは走り出す。ネコだけに任せるわけにはいかない。俺たちは俺たちでやれる事をやろう。

「マルチナ。レッサードラゴンってブレス攻撃できるのか?」

 確か、レッサードラゴンは劣等種だからブレスは使えないはずなんだが。

「うーん。何故かレッドは使えるみたい。成長すると使えるようになるとか?」

 適当だな……。

 それよりも俺たちにはやる事がある。

「さあ、俺たちも情報収集するぞ」

「あの、ジンさん。私、少し休みたいんですけど……」

 いきなりガックリくるような発言だ。

 だが、ミファはこの町まで歩きっぱなしで疲れてるよな。俺のような戦士タイプの職じゃないんだから。

「そうだな。ちょうどそこに食堂があるからあそこで休憩しようか」

 俺たちは食堂へ向かう。客や店員の話なんかも聞けそうだし、自分でも良いアイデアだと思った。
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