失礼ながら殿下……私の目の前に姿を現すな!!

星野日菜

文字の大きさ
25 / 34

おまけ ~過去 sideバルド~

しおりを挟む
その少女を初めて見た感想は『とても美しい少女』だった。

別に容姿だけならば『とても』などという形容詞は付けなかったであろう。

しかし彼女は"木の上で俺に手を振った"のである。

そんな令嬢、これまでいなかった……いや、いるはずはないのだが……

だからこそというべきか、一目で『彼女は傷つけてはならないモノだ』と認識したのだ。

それは初めての感情。



俺は彼女……アメリアの笑顔を永遠に守っていこうと決心した。

それが『俺』ではないいかなる人間に向けられようと……



「アメリア」

今日もまた木の上にいるアメリアに声をかける。

「何を見ているんですか?」

『作った自分』で接するのは辛いが、父の命令。従わなければ。とはいえ普段大人と接する時よりは砕けた口調なのではあるが。

「アメリア?」

返事がない。いつもは単語だが何かしら返ってくるのに。

「アメリア、どうしたんです?」

今度は少し大きめの声。



その途端、バサッと鳥が空に飛び立った。

と、その直後俺に向かって枝が飛んでくる。

「何するのよ!」

という罵声と共に。

「……は?」

呆然と木を見つめていれば、飛び降りるアメリア。

「鳥が逃げちゃったじゃないの! あんたのせいよ、もう。せっかく綺麗な青色だったのに」

どうやら俺の声で鳥が逃げてしまったことに怒りを感じているようだ。

「すみません」

「謝ったって意味ないのよ! あんたが青い鳥をもう一匹見つけてくれるの?」

「鳥ならあそこにも……」

「青くないでしょうが! 私が探しているのは青い鳥なの。白い鳥や赤い鳥はいらないわよ」

今にも泣き出しそうなほど顔を真っ赤にさせている。

けれどなぜ『青い鳥』にこだわるのだろう?

「なぜ『青い鳥』でなければならないんです?」

「『青い鳥』以外じゃ願い事叶わないでしょ? 当然じゃないの」

「願い事?」

「そうよ。白馬の王子様に会うっていう願い事。絵本で読んだの」

絵本。俺が渡したモノだろう。喜んでくれたのだ。少々おかしな方向にではあるが。

「あーあ。探し直さなくちゃ」

そう言うとアメリアは再び木の上に行ってしまう。

それから三時間程度探していたが、青い鳥は見つからなかったらしい。

ガックリと肩をおとすアメリアの顔はあからさまに沈んでいた。

俺が笑顔を奪ってしまったのだろうか。



その日屋敷に帰った俺は即刻白馬を手配するように指示し、次の日からは毎日白馬でアメリアの元に通うことにしたのだった。








しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

『候補』だって言ったじゃないですか!

鳥類
恋愛
いつのまにやら『転生』して美幼女になっていましたよ!魔法がある世界とかサイコーか! 頑張って王宮魔導師になるぞ!と意気込んでいたら…いつのまにやら第一王子殿下の『婚約者候補』にされていた…!! 初投稿です。 異世界転生モノをやってみたかった…。 誤字脱字・タグ違いなどございましたらご一報いただければ幸いです。 内容については生温くサラッと読んでいただけたらと…思います。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

キモおじさんの正体は…

クラッベ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生し、ヒロインとなったナディア。 彼女はゲーム通りにいかない悪役令嬢のビビアンに濡れ衣を着せ、断罪イベントの発生を成功させる。 その後の悪役令嬢の末路は、ゲーム通りでは気持ち悪いおっさんに売られていくのを知っているナディアは、ざまぁみろと心の中で嘲笑っていた。 だけどこの時、この幸せが終わりを迎えることになるとは、ナディアは思っても見なかったのだ。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

ずっと一緒にいようね

仏白目
恋愛
あるいつもと同じ朝 おれは朝食のパンをかじりながらスマホでニュースの記事に目をとおしてた 「ねえ 生まれ変わっても私と結婚する?」 「ああ もちろんだよ」 「ふふっ 正直に言っていいんだよ?」 「えっ、まぁなぁ 同じ事繰り返すのもなんだし・・   次は別のひとがいいかも  お前もそうだろ? なぁ?」 言いながらスマホの画面から視線を妻に向けると   「・・・・・」 失意の顔をした 妻と目が合った 「え・・・?」 「・・・・  」 *作者ご都合主義の世界観のフィクションです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた

ちくわ食べます
恋愛
転生したのは馴染みのない乙女ゲームの世界だった。  シナリオは分からず、登場人物もうろ覚え、タイトルなんて覚えてすらいない。 そんな世界でモブ男『トリスタン』として暮らす主人公。 恋愛至上主義な学園で大人しく、モブらしく、学園生活を送っていたはずなのに、なぜか悪役令嬢から睨まれていて。 気になったトリスタンは、悪役令嬢のセリスに理由を聞いてみることにした。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...