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その九

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「……次の、次の嫌がらせを教えなさい!!」

「いやそれ現実逃避だよね!?」

耳のそばでキンキンがなるフェリエスにツッコミ。

縦ロールのファサッと鳴る音も鬱陶しい。

「違いますわ! 話を進めるためですの! ヒロインに嫌われるためですのぉ……」

どちらかというと後者に比重が大きい言葉に苦笑交じりのため息が出る。

「といいますか元はと言えばあなたのせいですのよ! とんちんかんな嫌がらせばかり教えて!」

「まさかの責任転嫁!?」

「私が悪役令嬢らしくヒロインを虐められないのもヒロインに好かれてしまうのも全てあなたのせいですわ!」

「すがすがしいほどに責任転嫁。
……ヒロインに好かれてる自覚、あったんだ」

漫画から戻ってきてからずっとこの調子である。

正直苛立ちを感じつつも怒鳴り返さずに聞き流すわたしの精神力を褒めて貰いたい。

「早く教えて頂戴!」

早く早くと急かすフェリエス。

うるせぇな、と思いつつも次の嫌がらせを思い出そうとする。

(次は確か……)

額に手を当てて考えていれば、『早くしなさい』と手の上から額を叩かれた。

……わたしもそろそろキレて良いだろうか?
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