とりとめのない記録

やとりえ

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どうしてもやる気のない時と、愛しいいちごについて

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朝起きてからの午前中の全ての時間を、巨大通販サイトに吸われた。

一体なにをしていたのだろう。
何が欲しいわけでもなかった。

ただ、その日はとにかくやる気がなかった。そう言う自覚だけがあった。
頭の前の方と、首の付け根あたりがぼんやり重くて、あれをやろうとかこれを片付けようとか、そう言う気持ちになれなかった。

胸のあたりでは「やる事をやらねば」と言う気持ちとの葛藤がある。その証拠に少し胸焼けする。
でも所詮は胸焼けなので、脳の重さには勝てないのだ。とにかく、やらねばと言うのは理解したけれども指令は下されなかった。

結果、巨大通販サイトで「いちご」と検索し、可愛いいちご柄のポーチや文具を見て「かわいいなあ」とうっすら思うだけの時間がすぎた。

この時間は一体何なのだろう。

この数時間があれば、もっと有意義な人生を過ごせるのではないか。そう思うと、胸のあたりがざわつく。焦りを感じる。

ただ先ほども言った通り、脳の重さに勝てない。

その上、可愛いいちごの何かを手に入れたかといえばそうでもない。
結局、ただ検索結果を見ただけでブラウザを閉じた。検索結果を見ていた時間の後半は、どちらかといえば焦りの方が大きかった。かわいい、けど何をしているのか、もうこんな時間なのに。と。

こんなことでは、この後やってくる午後をまた同じように過ごす可能性が高かった。
それはもう、楽しいお買い物ではなく、何もしていない焦りを誤魔化すためのつらい時間つぶしだ。

と言うことで、とにかく何か、何でも良いからちょっとでも「やったぞ」と自分が思えるものを残したかった。
自分の人生が100年か200年後の教科書や伝記に乗るとして、そこに「やとけいは1日を通信販売のサイトを閲覧するだけに費やす日が多かった」と書かれる。
つらい中でも少しでも絵を描いていたと書かれたい。なるべくかっこいい感じに記録を書いて欲しい。

実際、教科書にも伝記にも、載ることなんかはないと思うけれど、何かにつけてそう考えてみる癖がある。一つの思考遊びだ。

そんなわけで、午前中にずっと見ていた「いちご」を自分なりに描いてみよう。と思った。
そうすれば午前中の行動にも意味があったのだと思いこめる。全てを肯定できる。これは最高に良い案だ。

通販サイトに並ぶいちごのイラストがついた小物たちは、どれも可愛かったが私の思ういちごとはやはり少し違うのだ。
どれも可愛い、でもクリティカルではない。「みんなの可愛いいちご」であり「私の愛しいいちご」とは違う。

もちろん「みんなの可愛いいちご」も大好きだ。
でも「私の愛しいいちご」があってもいい。「私の愛しいいちご」があるからこそ「みんなの可愛いいちご」も愛せると言うものだ。

そうだ、そういうことなのだ。

ところで私は、本物の果物であるいちごは、酸っぱいのであまり食べない。
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