真夜中に咲く太陽

rororon

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第一章

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にわかには信じられない事だった。

このつまらない人生で、自分がこんなにも人を愛し、生きる喜びを感じる日が来るとは。

本当に、本当に信じられない事だった。



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今川優の人生は、生まれてから面白いことがひとつもなかった。
大袈裟な表現ではなく、大金持ちの家に生まれ、幼少期から沢山の習い事をして、両親はいつも多忙で冷たく、厳しい人だった。

そして自分が頑張ろうがサボろうが関係なく、将来は家を継いで、家業のために生き、家業の為に死ぬ事が約束されていたので。
何か大きな夢を見ることもなく、ただ両親の期待に応えるように、失望させないように暮らすだけだった。

それが、とにかく退屈だった。




そんな毎日に突然君が突然現れた。


お金持ちのおぼっちゃましか通わないような名門校で、スポーツ推薦で入った子。

背が高くて、爽やかで、明るくて、誰からも好かれそうな印象の、所謂好青年。
これが僕から見た君の第一印象だった。

大学進学の為、なんとなく生徒会長になった。
これは僕の人生の中でも、唯一の"よくやった"
と思える決断だった。

今までほとんど自分で選択した事がない人生で、
なんとなくではあったが、初めて選択したことが、君との出会いに繋がったからだ。


君は、入学式で僕がした、新入生への挨拶に
大変感動したと言い、生徒会に入りたいと志願してきた。

僕はそれまで、人からなにかを褒められた経験が一切なかったので、とても嬉しかったのを、
今でも昨日のことのように思い出せる。

きっと、これからの人生この瞬間の喜びに勝てるものはないだろう。

とにかく、そのくらい嬉しかったのだ。



それから、その後輩は生徒会に入り、急激に親しくなった。


最初の頃はただ明るくて、いい子、というイメージしかなく「先輩!先輩!」と言って自分の後ろをついてくる君を見て、少し戸惑った。
あまりにも純粋なキラキラした目で見るから、
僕にそんな価値はないよって教えてあげたかった。

しかし、僕が何か喋るたびになんでも真剣に
聞き、初めて顔を合わせたあの日のように、無条件に僕を褒めてくれる君に、心を開かずにはいられなかった。
2歳しか変わらないけど、学生時代の2歳差は結構大きい。
僕から見ると君がとても幼い子供のように見えて、全てがかわいく思えた。
なんでもしてあげたかった。
こんな気持ちになったのは初めてだった。

今までの何をしてもつまらない、ただ通り過ぎる毎日から、一日一日がとても大切でかけがえのないものになった。


春が終わり、暑い季節がやってくる頃
僕たちはもっと近くなった



「僕、先輩とお祭り行きたいです」
「お祭り?」

そのような催し物がある事は知っていたが、僕には縁がない所だと、一度も行った事はなかった。
それに夜に出て行くと親に何か言われそうで…

僕が行った事ないと言うと君は驚いて、すごく楽しいところで一緒に行ったら後悔させないと熱弁してきた。

その時は「そんなにお祭りに行きたいのか、そこまで言うなら着いていってやる」という気持ちだったが今なら分かる。

「僕と」行きたかったんだよね。

結局、君に勝てない僕はお祭りに行くことを了承した。


なんだかんだ学校では飽きるほどくっついていたふたりだったが、学校の外で会うのは初めてで、なんだかなんだか気恥ずかしかった。

父親に見つからないように部屋から抜け出し、会場まで行くと既に私服の君が待っていて、
いつもと違う大人っぽい姿が、とても2歳も
年下の子には見えず、不覚にもドキドキした。

君は「今日が楽しみすぎて眠れなかった」と言い、「私服の先輩もかっこいいです」という褒め言葉も忘れなかった。
僕は真っ直ぐすぎる君の言葉に素直に喜ぶことができず、目を逸らしながら「ありがとう」
とだけ言った。
本当は僕もかっこいいと思ったし、褒められた事がすごく嬉しかったけど、元々感情表現が豊かなタイプでもないし、このドキドキした感情を君に悟られたくなくてぶっきらぼうな返事になった。
けれども僕の返事を聞いた君は満足げに笑った。

君は、そのようにいつも僕を柔らかく受け入れてくれる存在だった。


人生で初めて行ったお祭りは全てが新鮮だった。
金魚すくい、射的、りんご飴やチョコバナナ、焼きそば、わたあめ、浴衣を着て楽しそうな人々。

君は「僕が全部食べてみたい」とこぼすと全部買ってきて僕の食べれなかった分を食べてくれて、金魚すくいも射的も全部上手だった。
射的の景品でゲットした犬のぬいぐるみキーホルダーを「これ、僕に似てない?」と笑って僕に渡すと今日来てくれたお礼だと、これを僕だと思って可愛がって、と言った。

正直、好きにならない方が難しかった。
僕はその犬のぬいぐるみキーホルダーを「ジョン」と名付け、通学用のカバンにつけた。いつも君をそばで感じられるように。

家に帰ると予想していた通り、跡取りとしての自覚が足りないと父親に散々怒鳴られた。
しかし、不思議な事に耐える事ができた。
父に怒鳴られる事はドヨンの人生の中でも1番嫌いな事あり、いつも2週間は落ち込んだが、幸せな気持ちのほうが勝っていて、心強くそばにいてくれるジョンを握りながら話すと、何もかも大丈夫に思えた。


もしもこの日に戻れたとして、父に怒鳴られると分かっていても僕はお祭りに行くだろう。
君といる幸せを考えるとそれが何ともないことのように感じるからだ。




少し涼しくなって秋になると、すぐに定期考査期間に入った。
僕は推薦で大学に行くことが決まっていたので君に勉強を教える事になった。

この頃にはもう自分の気持ちを素直に認めている僕だったが、誰とでも仲の良いこの子の特別になるのはとても難しい事だと分かっていたので、ひたすら気持ちを隠す事に専念した。

だって2歳も年上の自分が年下の、しかも同性の男にこんな感情を抱いてるなんて知られたくなかった。
純粋な気持ちで尊敬していると言ってくれている君に嫌われたくなかった。
あと半年もすれば自分は卒業する。
それまで夢を見させて欲しかった。
一緒にいたかった。
卒業したらまた元の生活に戻るとしても、この一年を一生大切に思いながら生きようと、
「愛する」という感情を教えてくれた君に、
つまらない日常を変えてくれた君に、
感謝しながら生きようと思っていた。

「先輩」
「先輩のお陰で高得点取れました。スポーツ推薦組の中では1位だって」
「まだ全然足りないけど、先輩と同じ大学行きたいな~」

「受験まであと2年もあるのに志望校そんな簡単に決めるなよ。それにその時になったら僕のことなんか忘れてるよ」

「忘れませんよ。僕はずっと一緒にいたいです」

僕が嬉しい言葉に全部かわいくない言葉を返しても、君は優しく包み込んでくれた。


冬になり、ついに生徒会からも学校からも卒業する日が来た。

君ともお別れだ。

「先輩」
「卒業おめでとうございます」
「卒業式の後、生徒会室で待ってます」

朝、そのメッセージを見てから卒業式が全く頭に入ってこなかった。
親に言われて入らされた名門校。
君がいなければ特にこれといった思い出もなかった。

これで最後だと思いながら生徒会室に向かう。

僕が見えるといつもの席に座った君が花束を持ってこっちに向かってくる。
卒業おめでとうという意味の花束だろうが、
僕には王子様が花束のプレゼントを持って来るように見えて。

「先輩」

ひどく胸がドキドキした。

「先輩好きです。付き合って下さい」



夢かと思った。
実際にこの光景を何度も夢に見てきたので、



僕は何も言わずにただひたすら泣いた。
泣こうと思わなくても涙が溢れた。


「先輩はすごい人です。入学式のスピーチで言ってたじゃないですか。努力は必ず報われるとは限らないかもしれないけど、成功してる人は必ず努力をしてるって」

「そんなこと言ったっけ」

「言いましたよ。ずっとスポーツやってた僕に響きました。それで、先輩が堂々とスピーチしてる姿に惚れました」

「…」

「一目惚れだったんですけど、生徒会に入ったら性格も好きになって」

「最初は僕のこと不思議がってたけど、なんだかんだ言いながらいつも面倒見てくれて、勉強も生徒会も手を抜かずに頑張ってて」

「先輩が卒業して離れ離れになる前に伝えたかったんです」


「先輩」

「………優さん」


「………」


「ゆうさん」


「おまえ、僕のこと良く見過ぎだよ。
僕は、僕はそんなにいい人じゃない。なんで僕なんか」


「先輩の方こそ僕のこと良く見過ぎですよ」

「…え」

「先輩僕のこと好きですよね」

「なっ」
「…まだ好きとは言ってない」

「ふふ、今はまだそれでもいいです。僕たち好き同士だから付き合いませんか?」



君には僕の気持ちが全部お見通しだったんだ。
…いや僕が全然隠しきれてなかったのか、
君の前ではいつも素でいられる僕だったから。







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