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幼少期編
26.美味しいものは美味しいうちに
しおりを挟む家族全員がそろって3週間が過ぎた。
リアンは今日初めてエリン、ソフィーナと共にお忍びで王都に来ていた。
この世界に来て、1年半ぐらいを城の中だけで過ごしていたため、王都の様子など城から見るか、本での情報でしか知るよしもなかった。しかし、今日、姉たちの必死の説得により、ついに自分の目で王都を見れるのだ。まぁ、姉たちはリアンと一緒に買い物に行きたい一心でアシュトンを説得していたが…
3人がお忍びで王都に出かけることになり、アシュトンから条件が出された。1つ目はお忍びなので絶対3人が王家の人間と分からないようにすること。2つ目は諜報員をつけること。視界には入らないがこちらの様子を伺っている諜報員たちがいるようだ。その人たちは諜報部隊の中でも精鋭でリアンたちが危険な状態になった場合、戦える戦闘力も持ち合わせているという。
エリンとソフィーナはそのくらいならと2つ返事で了承した。
そして今、リアンは王都の地に足をつけたのだ…
と、言いたがったのだが、リアンは人が多い中で迷子になってはならないとエリンに抱っこされている。本当は自分で歩きたかったのだが、迷子になっては逆に迷惑をかけること、また、エリンと同じ目線で見渡せるということで大人しく抱っこされていた。そばには、ソフィーナもいて、リアンを抱っこしているエリンを羨ましそうに眺めている。
「ねぇ、お姉様、リアンを抱いて腕が疲れていませんか?お代わりいたしますよ?」
「大丈夫よ、ソフィーナ。リアンぐらいなんともないわ。あと、ソフィーナの方が体力がないんだから、今から体力使うとなるとすぐ疲れるわよ?」
正論を言われ、ソフィーナは引き下がるしかなかった。しかし、まだ諦めてないようだったが…
「お姉様、疲れたら本当に言ってくださいね?」
「はいはい」
そうして、3人は大勢の人の中に紛れていった。
「ねぇ、お腹空かない?」
「えっ、しゃきほどあしゃごはんたべてましぇんでした?」
「食べたわよ。でも、この匂いを嗅いだら食べない訳にはいかないじゃない」
『確かに…』
エリンが言ったように辺りには前世で言うお祭りみたいな感じでいろいろな屋台が出ている。どの屋台からも美味しそうな匂いが漂ってきてさっきからリアンの嗅覚を刺激するのだ。
「ぼくも、たべたいでしゅ!」
「あっ、私も!」
何か手頃で美味しそうな食べ物がないかと、3人で辺りを見渡していると、何か匂ったことのある香りがした。
『焼肉?』
「ねぇねぇ、おねぇしゃま、あれはなんてしゅか?」
リアンの指さした先には、棒に刺さった肉みたいなものが山積みになっていた。
「ん、あれ?あれはねオークの肉だね。どうしたのリアン食べたい?」
オークの肉はラノベにも出てきていたもので美味しいと評判だった。ここでも売っているみたいだし、みんな棒を片手に歩いている。
「はい、たべたいでしゅ!」
「そう、私も最近食べてないし。ソフィーナもそれでいい?」
「はい、大丈夫です」
そして、3人はオーク串の屋台の列、2人の男の後ろに並んだ。その屋台は50歳ぐらいのおじちゃんが1人で切り盛りしていた。美味しそうだねと話していると、リアンたちの番が来た。
「はい、いらっしゃい。何本かい?」
「えっとぉ、3本ください」
「3本だね…よし、お待ちどうさま!」
そう言っておじちゃんは焼きたてのオーク串を4本くれた。
「おじ様、これ1本多くない?」
そしたら、おじちゃんはニヤリとして、
「ちびっこいお嬢ちゃんがかわいいからな。1本おまけじゃ。がはははは」
と言い、リアンを見て豪快に笑った。
「ありがとう、おじ様」
「リアンちゃんのおかげよ」
「もう、おねぇしゃままでいじらないでくだしゃい!」
「ふふ、ごめんね。おじ様おまけありがとうございました~」
そして屋台を離れ、リアンたちは少し歩いて噴水の縁に腰かけた。
「じゃあ、温かいうちに食べようか!」
そう言って、リアンにオーク串を持たせてくれた。
「ありがとぉ」
お礼を言い、ふと顔をあげると近くに見覚えのある男たちがいた。
『あの人たち、さっきオーク串の屋台で前に並んでいた人たちだ。あっ、オーク食べてる!美味しそうだなぁ。じゃあ、ぼくもっ』
と思い、リアンがオーク肉を食べるとと男たちの目が一瞬こちらを向いた気がした。
『えっ、なに?なんか、おかしい?』
リアンがオーク串を見て、もう一度顔をあげると、そこには男たちの姿はなかった。
『えっ、ホントになに?怪しすぎるんだけど…毒でも、入ってるの?でも、毒入れる暇なんてなかったし、あの人たちもオーク食べてたし。てか、これ、すっごい美味しい!』
オーク肉は口の中でほろほろとくずれて、肉汁が口いっぱいに広がり、前世での豚肉みたいな感じでとても美味しかった。隣の2人も美味しそうに食べている。
『じゃあ、なんでこっち見てたんだろう…あの人たち、屋台で僕らの前に並んでて、僕らの前にお肉食べてた…ん?僕らの前にお肉食べてた…で、僕らが食べ物を食べるときを見ていた。この世界でこんなことするって毒味役の人だよね…ってことはあの人たちが諜報員さん?で、僕らが食べるものを毒味してたとか?それなら一瞬にして消えたのも納得出来るし!』
リアンは正体が分かってスッキリしたようだ。そして、折角諜報員が毒味をしてくれたので、美味しいうちに食べようと一生懸命口にほおばり始めた。
「おいしいね、おねぇしゃま!」
「ふふふ、美味しいわね」
「久しぶりに食べたけどやっぱり美味しいね」
3人はオーク肉の美味しさに顔をほころばせた。そして、袋の中にはあと1本のオーク串がある。
「ねぇ、お姉様、あと1本どうしましょうか?」
「どうしましょう…食べたいけど太りそうだし…あっ、リアン食べれるなら食べる?」
リアンは姉たちからの申し出を喜んで受け取った。もう1本食べたいと思っていたのだが、前世では姉たちが残り物を奪い合っていて入る隙がなく、なくなく諦めることが多かった。そのときの癖で言い出すことが出来なかったのだ。
「おねぇしゃまがた、ありがとうごじゃいましゅ!」
そう言って、リアンはもう1本を美味しそうに食べ始めた。
エリンとソフィーナはそのリアンの姿にお腹がいっぱいになったようで、幸せそうにしていた。
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