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始まり
1-3 挑戦者――愚者
しおりを挟む「了解した。勝負しよう」
「分かれば良いんだよ」
周りの人々は、観客席へ避難している。
距離をとり、とりあえず、相手の出方を伺う。
僕は冷静さを取り戻したために、今の現状を理解し、こう思う。ああ、勝負なんてすべきではなかった、と。
しかし、こうなってしまったからには、しょうがない。
手を抜きながら、戦うことにしよう。
それにしても、さっき近くにいたとき、大男は見検討で二メートルはあったと思う。
あまりの身長差である。
剣士の戦いではないため、そこまで関係ないのだが、迫力がものすごい。
気になることといえば、さっきまでの試合では、空を飛んではいなかった。ルールで禁止されていると考えられるために、飛行魔法は使わない。
だから、地上戦についての定石で戦う。
大男はさっきと同じく、近距離戦に持ち込むはずだ、と、考えているうちに、相手は走りながら魔法を使う。
「【ライトニング】」
総勢五本の光の線が、それぞれ違う方向から迫りくる。さっきと、同じ戦法だ。
ならば、と魔法を使う。
「【召喚する】アジ • ダハーカ」
このくらいの、龍を召喚する。
龍と言っても、3頭3口6目の有翼の龍蛇だ。
翼があるものの、どちらかと言うと蛇に近い。
地上戦では、モンスターを召喚するのが、定石だ。
壁にできたり、自由に動かせるため、こちらに有利に動く。
僕の中では、そこまで強くないモンスターでだったため、ちょうどいいと、思って使ってみたが……
しかし……
周りの驚愕の表情で察する。これも禁止か、と。
慌てて、消滅させる。
召喚は誰でも使う定石だろう、と、思っていた。
しかし、なぜそんなにも、驚く?
ああ、ここは魔法を学ぶところだった、と、思い出す。まだ、入学もしていないし、分からないのが普通か……
しかし、こんなこと、誰でも知ってると思う。
アジ • ダハーカに受け止めさせよう、と、思っていたが、仕方ない。
「【リフレクティブ • シールド】」
魔法を用いて、防ぐ――だけじゃない。
このシールドは、跳ね返すことができる。
そして、自由な形に形成可能なために、五本の光の線を全て合わせた特大の光線と化す。
たった、数秒の出来事。
「化物か……」
と、反射的に大男は言葉を紡いだ。
無慈悲な攻撃――いや、ミスラにしてみれば、こんな火力のない、ただの光の線は攻撃ですらない。
誰もが理解できなかった。その光景。
そこに立つ、一人の少年は、虚空を見つめる。
そして呟く。君こそ何もできないじゃないか、と。
再びの瞳は光を全て飲み込むような、漆黒。
感情が伴わない、強者の言葉。
既に、結果は出ており、魔法で治癒をした。
「メモリー • フォルスファケーション」
証拠隠滅だ。アジ • ダハーカを召喚したところを……いや、今日、僕に関する記憶を、全て消す。
薄い紫の光が一瞬、パッと、僕を中心に辺りを駆け抜ける。
「帰ろっか……」
これで今日の仕事は終わりだ、とその場を後にした。
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