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明けて次の日。
真菜は布団の中でうなっていた。
「…頭痛ぁい… 気持ち悪いー…」
見事な二日酔いだった。
ただし自分の部屋できちんと布団に入って寝ているところを見ると、どうやら自力で家に帰り着いたようである。
そんな中でも真菜は、ゆうべどこをどうしていたのかを思い出そうとしていた。
「えーっと、居酒屋で飲んで、それから確かサンタに会ったような、それから、えーっと…」
そこまでは思い出せたのだが、そこから先を思い出そうとすると、また頭痛が真菜を襲った。
「うー… だめだぁ、思い出せない…」
真菜はうめくようにつぶやいた。
「まぁ、いいか… 特に何かあったわけじゃなさそうだし…」
そう言って真菜は、布団を頭からかぶって二度寝してしまった。
少し時間が飛んでその日の夜。
「ありがとうございましたぁ」
わざとらしい声を背中に受けて、慎也が店から出てきた。
気のせいか少しやつれているように見えるが、それでもうれしそうな表情であった。
にこやかな表情をしながら、両手にいくつかの包みを持っていた。
「さすがに怒ってるだろうなぁ… 全然連絡してなかったもんなぁ…」
そう困ったような口調でつぶやいているものの、心底困っているようには見えなかった。
よほどうれしい事でもあったのだろうか、表情は疲れているように見えても足取りは軽く、店を出た慎也は、人ごみの中を歩き始めた。
『あ、そうだ、せめて電話だけでもしとかなくちゃ…』
そう思った慎也はケータイ電話を使おうと、とりあえず体を落ち着けていられる場所を探し始めた。
とはいってもさすがにイブの前日、しかも休日と会って、周りは人でいっぱいである。
立ち止まってケータイを使うような場所は近所に見当たらなかった。
両手に荷物を持っているので、他の人とぶつからないようにしているだけでも一苦労だった。
そして案の定、場所を探してきょろきょろしているうちに、慎也はどしんと人にぶつかってしまった。
相手の方が急いでいたのだろうか、かなり強い勢いでぶつかってしまった。
かなり強い勢いでぶつかったので、慎也は両手に持っていた荷物を落としてしまった。
「あ、どうもすみま…」
と慎也は言いかけたが、それよりも早く、ぶつかった相手の方が頭を下げた。
いや、正確には「しゃがみこんだ」と言った方が正しかった。
そしてしゃがみこんだと思うと、あっという間に道に落とした慎也の荷物を拾い上げて、そのまま走り去ってしまった。
ひったくりである。
ほんの一瞬、慎也は何が起こったかわからなかったが、すぐに何が起こったかを理解した。
そして少しもためらわず、すでに人ごみの中に隠れようとしていたひったくりを追いかけ始めた。
ピルルルルルル…
突然鳴った電話の呼び出し音に、真菜は目を覚ました。
まだアルコールが体の中に残っているのか、体を起こすと少しふらふらとしたが、昼頃飲んだ二日酔いの薬が効いているらしく、朝ほどはひどくなかった。
-もしかして、慎也君からかも…-
いくぶんアルコールの残った頭でも真菜はふとそんな事を考え、まだ少しフラフラする頭で電話をとった。
電話をとった。
「…はい…」
我ながら寝ぼけた声だなぁ、と真菜は思った。
しかし電話の向こうから聞こえてきたのは慎也ではなく、まるで聞き覚えのない女性の声だった。
そしてその声を聞いた瞬間、真菜の中に残っていたアルコールのほとんどが消え去った。
-まさか、本当に慎也君の新しい人なんじゃ…-
真菜は本気で心配したが、電話の主の次の一言でその心配がまったくの無駄であった事がわかった。
それと同時に、その一言が真菜の頭の隅っこに残っていたアルコールのかすを、完全に吹き飛ばした。
「病院!?」
真菜は布団の中でうなっていた。
「…頭痛ぁい… 気持ち悪いー…」
見事な二日酔いだった。
ただし自分の部屋できちんと布団に入って寝ているところを見ると、どうやら自力で家に帰り着いたようである。
そんな中でも真菜は、ゆうべどこをどうしていたのかを思い出そうとしていた。
「えーっと、居酒屋で飲んで、それから確かサンタに会ったような、それから、えーっと…」
そこまでは思い出せたのだが、そこから先を思い出そうとすると、また頭痛が真菜を襲った。
「うー… だめだぁ、思い出せない…」
真菜はうめくようにつぶやいた。
「まぁ、いいか… 特に何かあったわけじゃなさそうだし…」
そう言って真菜は、布団を頭からかぶって二度寝してしまった。
少し時間が飛んでその日の夜。
「ありがとうございましたぁ」
わざとらしい声を背中に受けて、慎也が店から出てきた。
気のせいか少しやつれているように見えるが、それでもうれしそうな表情であった。
にこやかな表情をしながら、両手にいくつかの包みを持っていた。
「さすがに怒ってるだろうなぁ… 全然連絡してなかったもんなぁ…」
そう困ったような口調でつぶやいているものの、心底困っているようには見えなかった。
よほどうれしい事でもあったのだろうか、表情は疲れているように見えても足取りは軽く、店を出た慎也は、人ごみの中を歩き始めた。
『あ、そうだ、せめて電話だけでもしとかなくちゃ…』
そう思った慎也はケータイ電話を使おうと、とりあえず体を落ち着けていられる場所を探し始めた。
とはいってもさすがにイブの前日、しかも休日と会って、周りは人でいっぱいである。
立ち止まってケータイを使うような場所は近所に見当たらなかった。
両手に荷物を持っているので、他の人とぶつからないようにしているだけでも一苦労だった。
そして案の定、場所を探してきょろきょろしているうちに、慎也はどしんと人にぶつかってしまった。
相手の方が急いでいたのだろうか、かなり強い勢いでぶつかってしまった。
かなり強い勢いでぶつかったので、慎也は両手に持っていた荷物を落としてしまった。
「あ、どうもすみま…」
と慎也は言いかけたが、それよりも早く、ぶつかった相手の方が頭を下げた。
いや、正確には「しゃがみこんだ」と言った方が正しかった。
そしてしゃがみこんだと思うと、あっという間に道に落とした慎也の荷物を拾い上げて、そのまま走り去ってしまった。
ひったくりである。
ほんの一瞬、慎也は何が起こったかわからなかったが、すぐに何が起こったかを理解した。
そして少しもためらわず、すでに人ごみの中に隠れようとしていたひったくりを追いかけ始めた。
ピルルルルルル…
突然鳴った電話の呼び出し音に、真菜は目を覚ました。
まだアルコールが体の中に残っているのか、体を起こすと少しふらふらとしたが、昼頃飲んだ二日酔いの薬が効いているらしく、朝ほどはひどくなかった。
-もしかして、慎也君からかも…-
いくぶんアルコールの残った頭でも真菜はふとそんな事を考え、まだ少しフラフラする頭で電話をとった。
電話をとった。
「…はい…」
我ながら寝ぼけた声だなぁ、と真菜は思った。
しかし電話の向こうから聞こえてきたのは慎也ではなく、まるで聞き覚えのない女性の声だった。
そしてその声を聞いた瞬間、真菜の中に残っていたアルコールのほとんどが消え去った。
-まさか、本当に慎也君の新しい人なんじゃ…-
真菜は本気で心配したが、電話の主の次の一言でその心配がまったくの無駄であった事がわかった。
それと同時に、その一言が真菜の頭の隅っこに残っていたアルコールのかすを、完全に吹き飛ばした。
「病院!?」
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