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領境門のある村へ※エイシオ視点
しおりを挟むバンガローのベッドでアユム(と真ん中に挟まるアライグマ)を抱き締めて眠り、朝も爽快だ。
僕達は軽く朝食をとって、湖をあとにした。
「ん……」
山道を馬車で進みながら、僕は鼻をヒクヒクさせ耳をピコピコと左右に揺らす。
「エイシオさん?」
「うん、何か……気配を感じてね」
「えっ……」
「でも大丈夫。これは……大型の人食い動物かな」
「ぜっ全然、大丈夫じゃないですよ!」
「はは、刺激しなければ寄ってこないよ。今日はもう村まで行くからね」
隣に座っているアユムの手を握る。
何やら、この旅では気配を感じ続けているが……。
とりあえず消えたか?
「村が丁度、領内に入る門がある場所なんだ。そこで身分検査があるけれど」
「我の作った身分証があるので大丈夫じゃ。えっへん」
ザピクロス様はアユムの膝の上で、ゴロゴロしている。
くっそ羨ましい……。
「ちょっとドキドキします」
「少し騒がれるかもしれないけれど、大丈夫だからね」
僕が帰ってきた事はすぐに家に知らされる事になるだろうか。
どんな対応をされるかな……。
さっさと、このエイシオの名前も返上したい。
あの家で静かに楽しく、アユムと暮らすんだ……。
このアライグマ、テンドルニオンの神殿に行ったら解放してくれるよな。
「いやじゃ!!」
ギクッ!?
「あんまり砂糖菓子ばかり食べちゃダメですよ」
「美味しいんだも~~ん。もぐもぐ」
あぁ湖の名物の砂糖菓子の話か。
もうザピクロス様が二袋目を食べている。
はぁ~びっくりした。
「エイシオさんってご兄弟はいるんですか?」
「あぁ、兄と弟と妹が二人いるよ」
「ご、五人きょうだいなんですか!? すごいですね」
「血の繋がりとか、跡取り問題とか、ちょっと複雑だから仲が良いとはいえないんだけどね」
アユムは神妙な顔をする。
「俺も……兄さんとはあんまり仲が良くなくて……」
アユムはお兄さんがいるんだ。
「そうか……本来ならアユムのご両親やご家族にも結婚の挨拶をするべきなんだろうけど」
「え!? あ、いや俺の国ではまだ……男同士の結婚とかできない感じだし! 俺の家は俺なんかいないのと同じだったから……いいんですよ」
「いないのと同じ……だなんて」
なんて悲しい事を言うんだ。
僕は馬車を停めて、横に座るアユムを抱き締める。
「僕は誰よりもアユムを必要としているよ」
「エイシオさん……」
今日は空気を読んでくれたらしく、ザピクロス様は馬の背中で自分の背中をかいていた。
うんうん。
「さっきのお菓子、もっと頂戴」
全然空気読んでなかった……。
「もう無いです」
「ふぎゃあ!」
泣くアライグマはほおっておいて、僕達は寄り添いながら村に着き宿を探した。
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