8 / 36
野盗に襲われた二刀流令嬢
しおりを挟む
「ぎゃーーはっはっは! カモ見っけーーーー!!」
山道の脇、山の上から降りてきた野盗が五人。
「雨だし、ダメ元で来てみたが……いいのが引っかかってるじゃねーか!!」
「まさか……車輪が壊れる細工をお前達が!?」
「その、まっさかーー!! 女がいるぞ! いい女だ!」
少年の馬車の故障は、野盗の罠だったのだ。
男達がアリスを、舌なめずりして見る。
「野郎とガキと女か……おい! 野郎! 金と女と子供を置いて逃げるなら~見逃してやるぜ!!」
「……なんだと……」
今更、男と勘違いされてもヴァレンティーナは何も思わない。
しかし二人を置いて逃げるなど、言語道断である。
野盗の連れた犬が、吠えて馬が怯えた鳴き声をあげた。
「おい、その躾のなっていない駄犬を黙らせろ」
「んだと……!?」
「あぁ……お前のような畜生以下には、犬に躾る事など無理な話か……」
普段は黙って沈黙しているヴァレンティーナだが、言おうと思えばいくらでも罵倒の言葉など思いつく。
キラリと彼女の抜いたレイピアが、輝いた。
「な、てめぇ~~~!!」
「生意気な野郎だ! レイピアだと……? まさか貴族か……!? やっちまえ!!」
野盗は刃こぼれしたような、ただ重い鉄の剣を振り回してヴァレンティーナに襲いかかる。
まず一緒に襲いかかってきた犬二匹は、アリスが石を投げ戦意を喪失させた。
「犬が!? だが、そんな細い剣で俺達がやれるかーーーー!!」
「そうかな?」
ヴァレンティーナが腰の短剣を抜く。
流れるような二刀流だった。
レイピアと短剣を使い、彼の剣を抜き取り大木に剣は突き刺さる。
左右でレイピアと短剣の切っ先を目先に見せつけ、怯んだ瞬間に一瞬で切り刻む。
「ぎゃあああああっ!!」
とは言っても、野盗のジレとシャツをバッテンに切り裂いただけ。
致命傷を負ったと思わせて悲鳴をあげた瞬間に、回し蹴りで昏倒させた。
すぐに四人は目を回してぶっ倒れ、アリスも一人倒す。
「あぁ~刺さっちゃった! でも悪いのはそっちですから~!」
ヴァレンティーナのように、繊細な切っ先のコントロールを、夜の山道でするなど無理なのだ。
アリスのレイピアの切っ先が、脇腹に食い込んだ野盗は叫んで、逃げていった。
「まぁ死にはしないだろう」
「殺してもいいんですけど……子供の前ですしねぇ」
毛布にくるまって、馬車の下に隠れていた少年は泥だらけになって這い出てきた。
「怪我はないか?」
「す、すげぇ……」
少年は、今更に震えて涙がボロボロと溢れる。
「あらまぁ」
「怖かったな」
「うえええええ」
少年がヴァレンティーナに抱きついたので、ヴァレンティーナもよしよしと頭を撫でる。
野盗が一人、目を覚ましかけたのでアリスが足で蹴り飛ばした。
「とりあえず、山を降りような」
「うん……!」
その時、これから進むべき山道の坂の下から何やら声が聞こえてくる。
「まさか、野盗の仲間!?」
「……何か名前を叫んでいるぞ……」
「あっ!! この声はラファエルかも!!」
馬の音と、男の叫び声。
「ルーーークーーーーー!!」
「ほら!! ラファエルだ! ラファエルーーーー!! 此処だよーーーー!!」
どうやら少年の名前はルークというらしい。
馬を走らせてきたラファエルという男。
「ルークーーーーーーーーーーー!! なんだこの状況!?」
壊れた馬車に、倒れた男達。
男はこの惨状を見て、驚いて叫んだ。
そして、腰の剣を抜こうと手を伸ばす。
山道の脇、山の上から降りてきた野盗が五人。
「雨だし、ダメ元で来てみたが……いいのが引っかかってるじゃねーか!!」
「まさか……車輪が壊れる細工をお前達が!?」
「その、まっさかーー!! 女がいるぞ! いい女だ!」
少年の馬車の故障は、野盗の罠だったのだ。
男達がアリスを、舌なめずりして見る。
「野郎とガキと女か……おい! 野郎! 金と女と子供を置いて逃げるなら~見逃してやるぜ!!」
「……なんだと……」
今更、男と勘違いされてもヴァレンティーナは何も思わない。
しかし二人を置いて逃げるなど、言語道断である。
野盗の連れた犬が、吠えて馬が怯えた鳴き声をあげた。
「おい、その躾のなっていない駄犬を黙らせろ」
「んだと……!?」
「あぁ……お前のような畜生以下には、犬に躾る事など無理な話か……」
普段は黙って沈黙しているヴァレンティーナだが、言おうと思えばいくらでも罵倒の言葉など思いつく。
キラリと彼女の抜いたレイピアが、輝いた。
「な、てめぇ~~~!!」
「生意気な野郎だ! レイピアだと……? まさか貴族か……!? やっちまえ!!」
野盗は刃こぼれしたような、ただ重い鉄の剣を振り回してヴァレンティーナに襲いかかる。
まず一緒に襲いかかってきた犬二匹は、アリスが石を投げ戦意を喪失させた。
「犬が!? だが、そんな細い剣で俺達がやれるかーーーー!!」
「そうかな?」
ヴァレンティーナが腰の短剣を抜く。
流れるような二刀流だった。
レイピアと短剣を使い、彼の剣を抜き取り大木に剣は突き刺さる。
左右でレイピアと短剣の切っ先を目先に見せつけ、怯んだ瞬間に一瞬で切り刻む。
「ぎゃあああああっ!!」
とは言っても、野盗のジレとシャツをバッテンに切り裂いただけ。
致命傷を負ったと思わせて悲鳴をあげた瞬間に、回し蹴りで昏倒させた。
すぐに四人は目を回してぶっ倒れ、アリスも一人倒す。
「あぁ~刺さっちゃった! でも悪いのはそっちですから~!」
ヴァレンティーナのように、繊細な切っ先のコントロールを、夜の山道でするなど無理なのだ。
アリスのレイピアの切っ先が、脇腹に食い込んだ野盗は叫んで、逃げていった。
「まぁ死にはしないだろう」
「殺してもいいんですけど……子供の前ですしねぇ」
毛布にくるまって、馬車の下に隠れていた少年は泥だらけになって這い出てきた。
「怪我はないか?」
「す、すげぇ……」
少年は、今更に震えて涙がボロボロと溢れる。
「あらまぁ」
「怖かったな」
「うえええええ」
少年がヴァレンティーナに抱きついたので、ヴァレンティーナもよしよしと頭を撫でる。
野盗が一人、目を覚ましかけたのでアリスが足で蹴り飛ばした。
「とりあえず、山を降りような」
「うん……!」
その時、これから進むべき山道の坂の下から何やら声が聞こえてくる。
「まさか、野盗の仲間!?」
「……何か名前を叫んでいるぞ……」
「あっ!! この声はラファエルかも!!」
馬の音と、男の叫び声。
「ルーーークーーーーー!!」
「ほら!! ラファエルだ! ラファエルーーーー!! 此処だよーーーー!!」
どうやら少年の名前はルークというらしい。
馬を走らせてきたラファエルという男。
「ルークーーーーーーーーーーー!! なんだこの状況!?」
壊れた馬車に、倒れた男達。
男はこの惨状を見て、驚いて叫んだ。
そして、腰の剣を抜こうと手を伸ばす。
13
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)
透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。
有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。
「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」
そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて――
しかも、彼との“政略結婚”が目前!?
婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。
“報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。
婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】
繭
恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。
果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる