15 / 71
14話 酒宴
しおりを挟む
歓迎会は、とりあえず大成功だった。
それこそ最初はどこの紛争当事国スタッフの会談かと思う程、重苦しく敵対的な雰囲気から始まった。
…取り仕切った身として、正直に言えば、面倒になって逃げだしたくなった。
せめて、幕末の討幕派と新選組が民間人を巻き添えにしてやらかしたような惨劇にならぬよう、この新拠点の二階奥にある座敷…(元)しらかわデイサービス・レクリエーションルームを酒宴の席とした。
黒島と共に、向こうの筋肉自慢兵を軽く挑発する事で酒屋とコンビニからの荷物運びとして利用し、一切の酒と肴を用意した。
まずは生ビールとソフトドリンクを一杯。…これを飲み干すまでの間が一番の苦痛だった。
だが、ビール後に酒に切り替え、例の漆器細工が状況を変えた。
珍妙ながら精巧な造りに、自分と香山、斎城以外の面々は興味深そうにそれを見た。
それが五つもの見事な盃とサイコロになると、特に米国側の屈強な兵達は驚きと好奇心を露わにして、盃をつまんで見ながら、「これはどこで手に入る」「材質は何か」と、片言の日本語で熱心に尋ねてきた。
空気が和んだ所で本番とした。例のサイコロで酒を飲ませ合う。罰ゲームの枠は大器とした。
これが大いに盛り上がり、結局、途中からは酔っ払いが幾つかのグループに分かれて和気藹々と思い思いの酒を手に談笑していた。兵達と藤崎、尾倉は何やら軍事談義に花を咲かせ、兵の一人は星村と黒島、川村に自分の相棒である、元保護犬にして軍用犬の自慢…というよりのろけ話をしている。三人もそれに付き合って腹を抱えて笑っていた。
「取り合えず、上手く行った…ってトコデスかね?」
アリッサが長テーブルを挟んで、一升瓶を持ちながら目の前に座る。自分の両隣には最初からガードするように、香山と斎城が座っていた。
「ふぅん…お二人とも、大淵とはナミナミならぬ仲、ですね…?」
どこぞの御老公の腕利き家来が相手を問い詰めるような、芝居がかった決め顔だったが、いかんせん、顔立ちだけは愛らしすぎる。 …アリッサの部下も、藤崎と尾倉と、何やら長テーブルに零した水滴で戦域図まで描き始め、互いに目を据わらせながら熱い第一次大戦のifシミュレーションと…約一名、ワンコ談義から戻って来ず…誰も相手してやらないので…仕方なく自分が可能な限り相手してやる事にした。
しかしこの雰囲気は…自分が大嫌いだったあの、半強制飲み会ではないか…自分はいつでも独り、隅でチビチビとジュースを飲んでいたっけな…
だがここには、取り残された奴はおらず…と言うより、誰も取り残してくれない雰囲気だった。
あの時の自分がここに居たら…こんな席を経験できていれば…あんな孤独な最期とは違っていただろうか。
「なんだ、時代劇にでもハマってるのか?こういう奴だろ?」コップを「ババーン」と構えて見せる。
「イエッッス!!あのお爺ちゃん、クールすぎマセン!?まぁ私、後からくるニンジャの叔父さまがイチバン好きなんですケド!」
「…俺もだよ。あんな人たちが本当にいれば…逆に世間はあんな物語、見向きもしないだろうな」
「深いコト言いますネー、大淵は」
アリッサは掴んでいた一升瓶をぐい、とラッパ飲みして見せた。
「物語は物語デスよ。あなたはスーパーマンにはなれマセン。そんな事は貴方自身がイチバン知っている筈デス」
温め直したコンビニの焼き鳥を美味そうに頬張りながらアリッサは言った。
「だから諦めろって?」
なんだか寺の説教か問答みたいになってきたな、と思いつつも反射的に答えた。
「ノー。あなたにしかナレナイヒーローがアリマス。それを見つけるコトデス」
俺にしか成れないヒーローか…
なんだろう、それは?
「…分かった。探してみるよ」
アリッサが取ろうとした一升瓶を奪い、全て飲み干した。
それこそ最初はどこの紛争当事国スタッフの会談かと思う程、重苦しく敵対的な雰囲気から始まった。
…取り仕切った身として、正直に言えば、面倒になって逃げだしたくなった。
せめて、幕末の討幕派と新選組が民間人を巻き添えにしてやらかしたような惨劇にならぬよう、この新拠点の二階奥にある座敷…(元)しらかわデイサービス・レクリエーションルームを酒宴の席とした。
黒島と共に、向こうの筋肉自慢兵を軽く挑発する事で酒屋とコンビニからの荷物運びとして利用し、一切の酒と肴を用意した。
まずは生ビールとソフトドリンクを一杯。…これを飲み干すまでの間が一番の苦痛だった。
だが、ビール後に酒に切り替え、例の漆器細工が状況を変えた。
珍妙ながら精巧な造りに、自分と香山、斎城以外の面々は興味深そうにそれを見た。
それが五つもの見事な盃とサイコロになると、特に米国側の屈強な兵達は驚きと好奇心を露わにして、盃をつまんで見ながら、「これはどこで手に入る」「材質は何か」と、片言の日本語で熱心に尋ねてきた。
空気が和んだ所で本番とした。例のサイコロで酒を飲ませ合う。罰ゲームの枠は大器とした。
これが大いに盛り上がり、結局、途中からは酔っ払いが幾つかのグループに分かれて和気藹々と思い思いの酒を手に談笑していた。兵達と藤崎、尾倉は何やら軍事談義に花を咲かせ、兵の一人は星村と黒島、川村に自分の相棒である、元保護犬にして軍用犬の自慢…というよりのろけ話をしている。三人もそれに付き合って腹を抱えて笑っていた。
「取り合えず、上手く行った…ってトコデスかね?」
アリッサが長テーブルを挟んで、一升瓶を持ちながら目の前に座る。自分の両隣には最初からガードするように、香山と斎城が座っていた。
「ふぅん…お二人とも、大淵とはナミナミならぬ仲、ですね…?」
どこぞの御老公の腕利き家来が相手を問い詰めるような、芝居がかった決め顔だったが、いかんせん、顔立ちだけは愛らしすぎる。 …アリッサの部下も、藤崎と尾倉と、何やら長テーブルに零した水滴で戦域図まで描き始め、互いに目を据わらせながら熱い第一次大戦のifシミュレーションと…約一名、ワンコ談義から戻って来ず…誰も相手してやらないので…仕方なく自分が可能な限り相手してやる事にした。
しかしこの雰囲気は…自分が大嫌いだったあの、半強制飲み会ではないか…自分はいつでも独り、隅でチビチビとジュースを飲んでいたっけな…
だがここには、取り残された奴はおらず…と言うより、誰も取り残してくれない雰囲気だった。
あの時の自分がここに居たら…こんな席を経験できていれば…あんな孤独な最期とは違っていただろうか。
「なんだ、時代劇にでもハマってるのか?こういう奴だろ?」コップを「ババーン」と構えて見せる。
「イエッッス!!あのお爺ちゃん、クールすぎマセン!?まぁ私、後からくるニンジャの叔父さまがイチバン好きなんですケド!」
「…俺もだよ。あんな人たちが本当にいれば…逆に世間はあんな物語、見向きもしないだろうな」
「深いコト言いますネー、大淵は」
アリッサは掴んでいた一升瓶をぐい、とラッパ飲みして見せた。
「物語は物語デスよ。あなたはスーパーマンにはなれマセン。そんな事は貴方自身がイチバン知っている筈デス」
温め直したコンビニの焼き鳥を美味そうに頬張りながらアリッサは言った。
「だから諦めろって?」
なんだか寺の説教か問答みたいになってきたな、と思いつつも反射的に答えた。
「ノー。あなたにしかナレナイヒーローがアリマス。それを見つけるコトデス」
俺にしか成れないヒーローか…
なんだろう、それは?
「…分かった。探してみるよ」
アリッサが取ろうとした一升瓶を奪い、全て飲み干した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』
月神世一
SF
【あらすじ】
「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」
坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。
かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。
背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。
目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。
鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。
しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。
部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。
(……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?)
現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。
すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。
精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。
これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~
namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。
かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。
海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。
そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。
それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。
そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。
対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。
「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」
アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。
ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。
やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。
揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる