「魔神」を拾ったら、なぜか懐かれてトップ配信者に!? 最強の美少女魔神と、巨大すぎるワンコ(フェンリル)と送る、バズりまくりの同

伊部 なら丁

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第一章

第03話:「設定」は盛るもの

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【翌朝・ソラの部屋】

 重い
 金縛り?


 いや、物理的に重い。
 目を開ける。
 視界いっぱいの、白い毛玉。


 足元
 →巨大なサモエド(フェン)

 右腕
 →水色の髪の美少女(魔神)

 ……現実だった。


ティアグラ:
 ん……ソラか。おはよう。

 腹が減った。


ソラ:
 おはようございます……

 あの、腕、痺れてるんですけど。


ティアグラ:
 抱き枕がないと眠れない質でな。

 ちょうどいいサイズだ。

 私の腕をギュッとする。

 柔らかい感触
 心臓に悪い


ソラ:
 とりあえず、朝ごはんにしましょうか。

 (昨日のウーバーで散財したから、
             今日は節約だ)




【朝食・ちゃぶ台】

 ⚪︎メニュー
  →トースト(6枚切り)
  →目玉焼き
  →インスタントコーヒー


ティアグラ:
 ……なんだこの、薄っぺらいパンは。


ソラ:
 「トースト」です。


 こうやって、黄身を崩して……


 ——カリッ


 ~~トロッ~


ティアグラ:
 ……!!

 美味い。

 この「焼き」の香ばしさと、卵のコク……

 魔界の宮廷料理にも匹敵する。


ソラ:
 (食パンでそこまで感動できるの、
   才能だよ……)


 スマホをチェック。


 通知が鳴り止まない。




 《チャンネル登録者数:3,500人突破》
 《昨日の動画再生数:45万回突破》




 バズり散らかしている。
 コメント欄も祭り状態。




 『この美少女だれ?』
         『場所どこ?』
               『合成?』


ソラ:
 ティアグラさん。

 今日、この後もう一回
         配信していいですか?

 この「熱」があるうちに、
        説明配信をしたいんです。


ティアグラ:
 説明?

  「私が最強の魔神・ティアグラだ」

           と言えばいいのか?


ソラ:
 だめ絶対。

 通報されます。
 自衛隊が来ます。((((;゜Д゜))))ガクガク


ティアグラ:
 む。人間社会は面倒だな。

 じゃあどうする。



ソラ:
 「設定」を作ります。

 ティアグラさんは……そうですね——



 『海外から来た、凄腕のコスプレイヤー』



 ってことで。


ティアグラ:
 こすぷれいやー?


ソラ:
 「魔神のフリをして演技をしている人」

  ってことです。


 ツノも、この尻尾も、
       精巧な作り物ってことで。

 フェンは……
     「特注の着ぐるみ」
          ってことにします。


フェンリル:
 ワンッ! (フェンが不満げに吠える)



ティアグラ:
 ふん。

 「偽物」を演じろと言うのか。

 この私が。




 空気が重くなる。


 地雷踏んだ?

       ギロリ

         紅い瞳が私を射抜く。


ティアグラ:
 ……だが、面白い。

  人間どもを


     「偽物だ」


    と欺きながら、
     堂々と真実の力を振るうわけか。


 ——最高の余興だ。


ソラ:
 (解釈がポジティブで助かった……)

 じゃあ、それでいきましょう!




【配信準備】

 背景
  →生活感丸出しのカーテン
  →隠しきれないフェンの尻尾

 機材
  →スマホ一台(三脚)

ソラ:
 いきますよ。

 3、2、1……スタート!




《配信を開始しました》



 ◼️タイトル:昨日の謎の美少女について


 開始5秒。




(視聴者数:2000 ↗)



 うそ
 いつもなら「0」の時間帯なのに


【コメント欄】
: きたあああああ
: 待機
: 座席確保
: 昨日のあれマジ?
: はよ映せ
: 釣りだったら許さん


ソラ:
 あ、あー

 こんにちは、ソラです。

 えっと、昨日の配信、お騒がせしました。



 m(_ _)m ペコり



ソラ:
 実はですね、昨日のあれは……

    これから一緒に活動する、
         新しい相方さんで……



 チラリと横を見る——

 ティアグラが、
     不敵な笑みでフレームイン。


ティアグラ:
 ……待たせたな、下等生物(リスナー)ども。


 ——ドサッ

  ——画面端で私が三脚を倒しかける。

    ——台本にない!

ソラ:
 ち、違います!

 えっと、これは『キャラ設定』で!



 本当は……ほら、自己紹介!



ティアグラ:
 ふん。

 私はティアグラ。


 ……海外から来た、こすぷれいやー? だ


 棒読み

 下手すぎる


【コメント欄】
:  ファッ!?
:  ガチで美少女じゃん
:  声もいい
:  「下等生物」助かる
:  キャラ作り込んでるなww
:  そのツノ本物?
:  質感エグい
(視聴者数:3500 ↗)


ソラ:
 (うけてる……!?)


ソラ:
 そ、そうなんです!


 このツノとか、
      特殊メイクですごいでしょ?


 これから二人で、
     ダンジョン攻略していきます!


ティアグラ:
 攻略? 違うな。


 ティアグラが、画面に顔を寄せる。


 レンズ越しに、
     数千人の視聴者を睨みつける。


ティアグラ:
 征服、だ。



 ——この世界のすべては、
    ——私の(ソラの)庭になる。


 ——ゾクリ



 画面越しでも伝わる、圧倒的な「圧」。
 偽物演技の中に混じる、本物の覇気。


【コメント欄】
:  かっけぇ……
:  ゾクッとした
:  演技うますぎだろ
:  プロの役者?
:  ティア様一生ついてく
:  貢がせろ
(視聴者数:5000 ↗)



 《¥10,000 のスーパーチャット》
 : 初見です。靴舐めさせてください。



 《¥5,000 のスーパーチャット》
 : 設備投資に使って



 《¥50,000 のスーパーチャット》
 : 赤スパ投げとくわ


ソラ:
 えっ……えっ!?


 画面が、
    赤や黄色のお札で埋め尽くされる。


 ——スパチャ。

   ——投げ銭。


 今まで見たこともない金額が、
        数秒で積み上がっていく。



ソラ:
 (ご、5万!? 私の月収……)


ティアグラ:
 なんだ、このカラフルな帯は?


ソラ:
 これ……お金です。

  ティアグラさんの『演技』が凄いって、

   褒めてくれてるんです。


ティアグラ:
 ほう?

 人間にしては、殊勝な心がけだな。


 ティアグラは満足げに頷き——

   そして、

     私の肩を抱いた。



 グイッと引き寄せる。


 頬と頬がくっつく距離


ソラ:
 ひゃっ!?


ティアグラ:
 だが、勘違いするなよ。


 ソラは私のもの(オーナー)だ。


 貢ぐのは許可するが、触れるのは許さん。


 カメラに向かって、独占宣言。





 ——ヤンデレ全開の瞳。


ソラ:
 (え?
   さっきの話じゃ
    私がオーナーって話だったかと…… 
     ま、どっちでもイイけど……)



【コメント欄】
: !?
: てぇてぇ……
: 百合きたあああああ
: 距離感バグってる
: ソラちゃん場所代われ
: いや代わらないでそのまま続けろ
: ありがとうございますありがとうございます

 《¥10,000 のスーパーチャット》
 : 結婚式代

 爆速で流れるコメント

   止まらないスパチャ

     私の「底辺生活」が、

       音を立てて崩れていく

 ……良い意味で

ソラ:
 あ、あの……
  これから、よろしくお願いします……!


 フェンも画面外で「ワフッ」と吠えた。


 こうして——

 「底辺配信者」と

  「最強魔神(コスプレイヤー設定)」の

     伝説のチャンネルが爆誕した。

(第3話 完)
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