流刑の人

ロコ

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同乗の人

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エゲレス船かあ!
啓太は、乗組員を観察している。
面白いものだ!
同じ人間で、眼の色、髪の色、話し言葉が違うなんて!
啓太には、語学の素養がある。大和文字に、優れ万巻の書物に通じ、作文能力が、あった。
平たく言うと、文才があるのだ。大工仲間達の中でも滅法多弁で、聴くものを、納得させる力がある。

イギリス帝国、ドーバー海峡、ドーバー港迄は30日の航海。日本語上手の、乗組員に懇願して英語を、習い始めた。教師は、徹底的に話し言葉を、しこむ。
書く読むは、後からでいい!
聴いて、話すことだ!
、と。
実際、啓太の脳は、スポンジ。
どんどん、英語を吸収していく。
24時間英会話レッスンは、続いている。

船が、モロッコ沖を進む頃には、英語で自己紹介出来る様になっていた。

地中海

コバルトブルーの海。
船は、ローマで、三泊してから、再び地中海を離れて北海に出る。

船が、着くぞー!

水先案内人が、マストの上で叫ぶ。

ローマ

啓太は、無謀にも一人で港町に、繰り出した。

おぉ、ハポネ、ハポネ!
取り巻きが、寄ってたかって、啓太をつつく。
習い立ての、英語を駆使して話すと、

ハポネ、英語、何処で習った!

啓太は、応える。

船の中だ!

そうか、そうか!
船は、三泊するよな!
今日は、家に泊まれ!

恰幅の良い、中年男は、啓太を誘う。

ああ、そうさせてもらうよ!

啓太の、英会話力は、たった30日間のレッスンで、ここ迄来ていた。
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