一話完結心理ストーリー集

星月まはろ

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会いたかった親友

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 いつものように、ゆうからメールが届いた。

ゆう「あいつと別れたい。酷い事を言われた」

さつき「大丈夫?何て言われた?」

ゆう「お前は女じゃない。キモい。結婚して後悔しているって言われた」

さつき「ゆうの事をそんな風に言うのはおかしい。さっさと別れた方がいい」

ゆう「ありがとう。私の事をわかってくれるのは、さつきだけだよ。少し落ち着いた。もう寝るね。おやすみ」

さつき「おやすみ」

 私とゆうは半年前にSNSで知り合って、意気投合し、すぐに仲良くなった。

 会った事はまだないが、近いうちに会いたいと話している。

 お互いの自宅は車で一時間くらいの距離。毎日と言っていいほど、近況報告している。

 私とゆうにはリアルな友人はいない。会った事はないが、親友といってもいい程、心を許している。少なくとも私は。

 半年前に私は恋人と別れた。その時、慰めてくれたのがゆうだった。何かを失えば何かが手に入る。私は親友を手に入れたと思った。

 彼と別れて気持ちが落ち着いた頃、ゆうがDVにあっている事を打ち明けてくれた。

 殴られた事はないようだが、ゆうの大事にしていた服を破かれたり、人格を否定する。ゆうが稼いだお金を夫が管理している。

 夫は無職。ゆうとは別れないと言っている。ろくでもない奴だ。

 23時、ゆうからメールが届いた。

ゆう「さつき会いたい。今から会えない?」

さつき「ゆう大丈夫?何かあった?」

ゆう「あいつが私の秘密を会社にバラすって言ったから殴ってやった。もうおしまいだよ。家を出てきた。しばらくの間、さつきの住んでいる近くのホテルに部屋を借りた。グランドホテル503号室にいる。さつき会いたい」

さつき「わかった。ゆう大丈夫?殴られなかった?そのホテルなら15分くらいで行けると思う。待ってて」

ゆう「私は大丈夫。ありがとう。待ってる」

 私達の初対面は突然訪れる事になった。お洒落なカフェで待ち合わせして、カフェラテを飲みながら、リアルな親友へと移行する感じを楽しみたかった。

 しかし、ゆうからのメールで、お洒落もメイクもせずに、すぐさま家を飛び出し、気がつけばグランドホテル503号室の前にいた。

 インターホンを押す前にようやく、ゆうとは初対面だという事を思い出した。初対面の感動シーンは大体想像できた。お互い初めて会う気がしないと言い、何の違和感もなく、ゆうの話を聴いている自分を想像した。


 私は一呼吸して、ゆっくりとインターホンを押した。インターホンを押した瞬間、親友を心配して駆けつけた、というより、禁断の恋人に会いにきたといったときめきを感じた。

 今度は私がゆうを支えたいと思った。私はゆうをリアルな親友として守ってあげたい。全てを受け入れたいと思った。


ゆっくりとドアが開いた。

ゆう「さつき、来てくれてありがとう。会いたかった。さつきは私の想像通りだね。さつきは驚いた?私の秘密」

さつき「ゆ、ゆうさんですか?」

 ドアを開け立っていたのは、私の想像していたゆうとは違い、骨格のしっかりした男だった。その時私は、ゆうとは半年間、メールでしか会話した事がないのを思い出した。

ゆう「やっぱり驚いた?さつきなら気づいているかと思った。これからは、ありのままの私で生きていく。あいつと離婚して、さつきとリア友として生きていく。」

さつき「離婚するって奥さんと?」

ゆう「当たり前でしょう。立ち話も何だから、さぁ、部屋に入って」

 その時、私はようやく状況を理解した。

 多様性を否定するわけではない。ゆうが女性だと思い込んでいただけで、ゆうには変わりない。私を理解してくれた人には変わりない。

 男女の親友は成り立たないと思っているが、多様性なら受け入れられる。

 部屋に入って、とりあえず今日は話を聞けばいい。犯罪を起こすような、危険な人間ではない事を私が一番良く知っている。少しばかりの違和感を覚えながら部屋に入る決意をした。

さつき「ありがとう。ゆうの話し聴かせて」

 私は平然を装いながら、部屋の中に入りドアを閉めた。

 部屋に入った途端、ゆうから送られてきたメールの内容が頭を過った...。

「あいつが私の秘密を会社にバラすって言ったから殴ってやった...」

 待てよ、ゆうは妻を殴ったという事か?

 先ほどの違和感が何か?悟った時にはドアは完全に閉まっていた。
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