9 / 15
8月9日 悪霊調査3
しおりを挟む
「知らん」
次の日、山﨑探偵事務所を訪れた。普通なら、事前にアポをとって行くんだろうが、この探偵事務所は基本、仕事がない。その為、急に訪ねても基本所長はいつも居た。
今日も突然来たが、相変わらず新聞を読みながら、こちらを見ずに会話していた。
「そうっすよねぇ…」
やはり元刑事とはいえ、知らないこともあるだろう。それに所長が警察を辞めて、何十年と逹つらしい。
「まあ、こうゆうことはあまり言っちゃいけないのかも知れないが、単に『行方不明』ってだけじゃ、警察はなかなか動かんよ。しかも未成年のガキとかじゃなくて、大人なら余計な…」
やはりそうなのか。世の中、事件は何万何千とある。成人の行方不明は、きちんとした事件性がなければ、動かないということだろう。家出という可能性もある。
駅前で必死に行方不明の人の家族だろう人が、いなくなった家族のチラシ配りをしている姿を見たことがある。それは、警察が動いていれば、そんなことはしないで済むだろうが…どうしても優先しなければいけないものがある。
だから、警察を責めたりはできない。警察も、必死に事件解決に取り組んでいるんだから。
「俺のもとにも、そうゆう依頼は来るよ。一応探偵だからな」
そうゆうと、新聞を畳んでお湯を沸かしていた。
「ジュースはねえが、お茶でもいいか?」
「はい」
マグマップに茶葉を入れる。来客用のものだろう。俺なんかに出さなくてもと思う。
「俺の方でも、断るようにしている」
「そうなん…ですか?」
意外なように思う。所長ならば、引き受けてそうなのに…。
「この町での失踪事件は、何かが妙だな…。探しても見つからないのがはっきりしている」
所長は、寂しそうにそういったように見えた。
「でも…」
と思った。では愛未は?そんなことを思っていたのを察したのか。
「お前の妹さんは、はっきりとした『足跡』があった。足跡って言っても、地面についてるやつじゃなくて、行方不明になるまでの状況を知ることができた」
所長は続けて、それだけじゃなくと言った
「『お前の妹さんのときは、何かが違ったんだ』。それが、何なのかは分からねえが、こう…本質が、違うと思うんだ」
それはつまり、と所長に聞く。所長も、雲をつかむ感覚なんだが、と言い。
「まあ、俺が言いたいのはな…」
カップを二つ、こちらへ持ちってくる。対面式のソファーの反対側に座りながら
「おそらく、この大量失踪事件は、『二つの、それぞれ異なった本質の事件が原因』なんだ、と俺は思う」
ま、これはカンなんだがな、とも付け足した。
だが、年老いた、初老はとっくに過ぎた、普段俺に接する所長ではなく、真剣な元刑事としてなのか、ぎらついた眼差しでそう言っていた。
「二つの異なった本質…ですか?」
言ってることが、俺には分からなかった。ただでさえこの失踪事件には、不明な点が多い。
「ふうむ…」
所長は考え込むように、顎をなぞる。
「光一よ…お前、それを知ってどうする?」
「え…いや、何となく。まあ…好奇心というやつですかね…」
俺がそういうと、所長は再び、考えてから話し出す。
「なら…これ以上話すのはよそう。別に、お前が俺のクライアント(依頼者)でもないわけだからな」
それもその通りだった。例え家族でも、探偵業の話はしないのがルールだ。と語っていたことがあった。
「それに…あんまりこういう事には関わってほしくない、と俺は思うよ」
そんなものは大人のおっさんに任せて、学生は勉学に励めと言った。
確かに俺のような学生が、好奇心だけで調査するのは、不謹慎なのだろうと納得した。
「ま、茶飲んだら帰りな。今日はこれから行くところがあってな」
「へえ、仕事ですか」
「まあな…」
歯切れが悪そうにそう言った。聞いても教えてくれなさそうなので、今日は退散しようと思った。
所長と一緒に、事務所を出る。今日は雨が降っていた。傘を差し別れ際にもう一度言われた。
「いいか光一、あまりこういう事には関わるなよ…」
その言葉の後に、何か言ったように聞こえたが、雨の音で良く聞こえなかった。
次の日、山﨑探偵事務所を訪れた。普通なら、事前にアポをとって行くんだろうが、この探偵事務所は基本、仕事がない。その為、急に訪ねても基本所長はいつも居た。
今日も突然来たが、相変わらず新聞を読みながら、こちらを見ずに会話していた。
「そうっすよねぇ…」
やはり元刑事とはいえ、知らないこともあるだろう。それに所長が警察を辞めて、何十年と逹つらしい。
「まあ、こうゆうことはあまり言っちゃいけないのかも知れないが、単に『行方不明』ってだけじゃ、警察はなかなか動かんよ。しかも未成年のガキとかじゃなくて、大人なら余計な…」
やはりそうなのか。世の中、事件は何万何千とある。成人の行方不明は、きちんとした事件性がなければ、動かないということだろう。家出という可能性もある。
駅前で必死に行方不明の人の家族だろう人が、いなくなった家族のチラシ配りをしている姿を見たことがある。それは、警察が動いていれば、そんなことはしないで済むだろうが…どうしても優先しなければいけないものがある。
だから、警察を責めたりはできない。警察も、必死に事件解決に取り組んでいるんだから。
「俺のもとにも、そうゆう依頼は来るよ。一応探偵だからな」
そうゆうと、新聞を畳んでお湯を沸かしていた。
「ジュースはねえが、お茶でもいいか?」
「はい」
マグマップに茶葉を入れる。来客用のものだろう。俺なんかに出さなくてもと思う。
「俺の方でも、断るようにしている」
「そうなん…ですか?」
意外なように思う。所長ならば、引き受けてそうなのに…。
「この町での失踪事件は、何かが妙だな…。探しても見つからないのがはっきりしている」
所長は、寂しそうにそういったように見えた。
「でも…」
と思った。では愛未は?そんなことを思っていたのを察したのか。
「お前の妹さんは、はっきりとした『足跡』があった。足跡って言っても、地面についてるやつじゃなくて、行方不明になるまでの状況を知ることができた」
所長は続けて、それだけじゃなくと言った
「『お前の妹さんのときは、何かが違ったんだ』。それが、何なのかは分からねえが、こう…本質が、違うと思うんだ」
それはつまり、と所長に聞く。所長も、雲をつかむ感覚なんだが、と言い。
「まあ、俺が言いたいのはな…」
カップを二つ、こちらへ持ちってくる。対面式のソファーの反対側に座りながら
「おそらく、この大量失踪事件は、『二つの、それぞれ異なった本質の事件が原因』なんだ、と俺は思う」
ま、これはカンなんだがな、とも付け足した。
だが、年老いた、初老はとっくに過ぎた、普段俺に接する所長ではなく、真剣な元刑事としてなのか、ぎらついた眼差しでそう言っていた。
「二つの異なった本質…ですか?」
言ってることが、俺には分からなかった。ただでさえこの失踪事件には、不明な点が多い。
「ふうむ…」
所長は考え込むように、顎をなぞる。
「光一よ…お前、それを知ってどうする?」
「え…いや、何となく。まあ…好奇心というやつですかね…」
俺がそういうと、所長は再び、考えてから話し出す。
「なら…これ以上話すのはよそう。別に、お前が俺のクライアント(依頼者)でもないわけだからな」
それもその通りだった。例え家族でも、探偵業の話はしないのがルールだ。と語っていたことがあった。
「それに…あんまりこういう事には関わってほしくない、と俺は思うよ」
そんなものは大人のおっさんに任せて、学生は勉学に励めと言った。
確かに俺のような学生が、好奇心だけで調査するのは、不謹慎なのだろうと納得した。
「ま、茶飲んだら帰りな。今日はこれから行くところがあってな」
「へえ、仕事ですか」
「まあな…」
歯切れが悪そうにそう言った。聞いても教えてくれなさそうなので、今日は退散しようと思った。
所長と一緒に、事務所を出る。今日は雨が降っていた。傘を差し別れ際にもう一度言われた。
「いいか光一、あまりこういう事には関わるなよ…」
その言葉の後に、何か言ったように聞こえたが、雨の音で良く聞こえなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる