子供の見る幽霊

ショー・ケン

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子供の見る幽霊

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ある女性の体験した話。女性はシングルマザーで子供を育てていた。腕白な子供で、言葉をしゃべるようになると、少し目を離すたびにどこかに行ってしまうような子供だった。何気ない日々がすぎていったのだが、あるとき近所の公園に遊びにいったとき、その異変は訪れた。突然ある方向を指さし
「アキちゃん、アキちゃん」
としゃべるのだが、そこには何もない。それどころかその時間帯には、自分たちのほかには人もいなかった。なにせ仕事がおわって、6時も超えた時間帯でほんの少しでも子供を遊ばせようとおもってやってきたのだ。その時間帯に公園に人などいなかった。
女性は気味が悪くなり、家にかえった。そして、ある人形をてにとった。それは、子供がいつも“アキちゃん”と名付けている赤ん坊の人形で、子供の父親からもらったものだ。父親は、別れてからも何かと子供の面倒をみてくれたりすることもあった。女性は自分から嫌になって距離をおいたものの、距離をおいてみれば、子育ての手助けや金の援助をしてくれるし、それほど悪い人間ではないと感じているのだった。

女性には、確信があった。なぜなら彼は、あまりに自分を好きという事をかくさなかったのだ。付き合っていたころ、結婚してからもあまりに束縛がひどく、子供が生まれてからもそれは続いた。そのためいやになったのだが、理由はなんであれ、子供の事を大切に思っているのならそれでよかった。

“アキちゃん”という人形はしばらく押し入れにしまって、子供には、今人形は預けているから、という事にしていた。

あるとき、同じく子育てをしている近くにすむ女性の友人からこんな話をきいた。
「子供が、何もない場所を指さして言うのよ、なんとかちゃん、なんとかちゃんって」
ああ、よその家庭でもそんな事はあるんだな、と思った彼女だったが、色々な話をしたあとに、思い出したようにその友人はいった。
「ああ、思い出した、いってたのよ“アキちゃん”って、“アキちゃんがおこってる”って」
「!!」
女性は驚いて、あの人形をすぐに押し入れからだし、その週の休みに供養をしてもらえるという寺に向かった。
だが住職はそれを見るなりこういった。
「いやあ……これは“今現在”ひどい悪意を持っている……これを燃やしてもそれは残るだろう、その原因がわからない事には、家で受け取る事はできない……知人の霊能者がいるので、彼女を頼りなさい」
 そういわれて、彼女は迷ったが、その人に連絡をする事に。翌週に彼女を家に招くと、彼女は家をみるなり、こういった。
「あなたにひどく恨みを抱いている人間がいますね」
「え?人間?」
「ええ、心当たりは」
「……」
 人形と人間、何の関係があるのかと思っていたが、その日は様々な聴取をして、その人はかえった。お祓いは翌週に持ち越されたのだった。

 そしてその人が帰った後、思い切って件の知人に相談したところ、知人はこんな事をいいだした。
「人形なら、うちにもあるわよ、うちの子が“アキちゃん”って指さしたこともある、普段はトトって呼ぶのに、おかしいわよね」
 その人形を見せてくれ、となんとなくお願いしたところ、心よく了解してもらえた。それを写真で送って見せてくれるというので、お願いしたら、まったく同じ人形だったが、違和感があった。どうやら、衣服のボタンの色が違うのだ。アキちゃんのほうは黒で、友人の持ってきた人形は白だ。

その情報をもって、霊能者の能力を見極めるためにも、だまったまま、霊能者を招いた。そして、お祓い当日、家と向かい合う霊能者。押し入れをあけ、人形をとりだす、霊能者はすぐにその異変に気付いた。
「怨念はこの人形からです、この中からです」
「え?」
「失礼して」
「ちょ、ちょっと!!それは元旦那が……」
 ビリビリッ
 勢いよくひきちぎられる人形の服、そして腹部をはさみで切るとなかから……監視カメラが出てきた。
「なるほど」
「どういう事です、主人が私を狙って?」
「いいえ、そうじゃありません、人形を握っている時間が長いのは子供のほう、お子さんを狙って仕掛けたカメラです、そしてこちらは……」
 ふと霊媒師の手の中をみると、小さな藁人形のようなものがはいっていた。

「……」
 霊媒師は押し黙る。声をかけようとした瞬間、付き人に止められた。そのまま数分間目を閉じて押し黙った霊媒師、そして唐突にめをあけ、いった。
「きっとあなたへの愛情が、子供にむかったのでしょう、その理由が、どこかにあるはずです、あなた、何かこの人形に心当たりがあるのでは?いいえ、藁人形のほうです」
 女性は周囲をみわたし、観念したように、あるノートをもってきた。そこには旦那への恨みや怒りが書き連ねてあった。そして最後に丑の刻参りの記述が。

「これを見た旦那さんが、同じ事をしたのは想像に難くありません、アキちゃんはそれに怒ったのでしょう、アキちゃんというのは……」

そのとき、霊媒師は彼女が抱きかかえていた子どもにふれた。子供は、次の瞬間ある方向を指さした。
「アキちゃん、アキちゃん」
 その指の先を霊媒師がさぐる、本棚で、そこには赤ん坊の名づけ本が、しかしこれは、この赤ん坊につかったものではなかった。
 
 その時、彼女ははっとして、その本を抱きかかえた。
「私と彼が付き合っていたころに、その頃はまだわかくお金もなく、両親にも内緒であきらめた子供がいるのです……せめて名前だけつけてあげようと、それで……アキちゃんと」
 霊媒師はいう。
「なるほど、アキちゃんは両親の喧嘩や呪いあいを見たくなかったのでしょうねえ」

 その後、彼女は父親に合い、この件を話し合い、謝罪をかさね、向こうからも謝罪があり、一定の距離を保ちながら、その子を大事に育てていったという。
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