ある猟師の話

ショー・ケン

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ある猟師の話

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Aさんが祖父から聞いた話、いつも写真に写る中にある仲間と距離をおかれていて、遠くにぽつんと佇む仲間外れの猟師がいた。
“禁をおかしたから”
「救われない話だぞ……」

祖父が猟師だったころ、ある時全く野生動物をみかけない時期があった。それを食い扶持と稼ぎにしていた猟師たちは困惑した。しかし、猟師の組合にはある心当たりがあった。
「だれか“盛り日”に山に入ったんだ」
 毎年のある時期に“盛り日”という日があり、その日は野生動物がたくさんおり、かつ必ず“巨大なクマ”がでるという話だった。しかしオキテがあり、その日に山に入ってはいけないのだと、あのクマは、主であり山の神のお気に入りなのだという話だった。

 すぐにある人間が疑われた。Bだった、Bは件の写真で仲間外れになっていた人間であり、彼はもともと差別をうけていた村八分の一族の5代目だった。皆が話す中でも、祖父は彼をかばった。
「何もかも、彼のせいにしてはいけない」
 もともと口達者な祖父だったため、皆彼の話に耳を傾けた。
「一度冷静になるべきだ」
 と。

そして、ある時変化がおきた。山に動物たちが再び姿を現すようになったのだ。しかし、祖父は不安だった、なぜなら“オキテ”を違反した場合“オキテ”による不作が収まるのは禁を犯したものが罰を受けるときだけだったからだ。

 そして、時を同じくして件の男Bは、組合にも狩猟にも顔を出さなくなった。とある豪農はいった。普段からBとは仲が悪かったため、皆も話半分できいていたが
「あいつは死んだんじゃないか?あいつが原因だ、自分の欲のために“盛り日”に山に入ったんだ、自業自得だ」
と。
 すぐに組合の勇士で彼の宅を訪ねると、彼は高熱をだして寝込んでいる様子だった。親も早くにしに、独り身、村の者たちは“一族は罰を受けたため短命なのだ”という。

 しばらく村の者たちも猟師の組合も彼の事をほおっておいた。しかし、祖父だけは、考えがあった。
 あるときの集まりで、祖父が口を開いた。
「彼をこのまま殺してしまっていいのだろうか」
 皆が静まりかえった。
「オキテもわかるが、しかし、彼の一族にはひどい事をしてきた、組合で稼ぎは共有しているが、村八分という事で彼の稼ぎは少ないし、彼の農地はもともと不作で有名だ、彼がひとりで生きてこられたことさえ不思議がるものたちだっているじゃないか」
 時代の変わり目で、口達者な祖父が“もう村八分はやめよう、時代遅れだし、この時代に差別で死者など出すべきではない”といいたし、しばらく静まり返ったが、祖父の友人が確かにそうだ。と周囲を説得しだすと、恐る恐る同意するものがあらわれ、やがてその集まりで、熱をだしたBを皆でかわるがわる面倒をみるようにきまった。

 しかし、それからひと月、ふた月たとうとも彼の熱は一向に下がらず、医者も首をかしげるばかり、あるとき祖父が看病の当番だったとき、彼の寝言をきいた。
「畳の……下、お前のいる、畳の……下」

 そういわれて祖父は畳をひっくりかえす。異臭がする。彼には思い当たる匂いがあった。まさかとおもい畳をひっくり返す。死臭だった。急いで掘り起こした。
 するとそこには、小さな子供の白骨死体があったのだった。

すぐに警察の取り調べをうけ、彼は警察病院に収容された。だがそれから間もなく、彼はなくなる。彼は看護をしていた医者にこう言い残したという。
「すまない」
と。

 すぐに村では大騒動になった。そして、ある女性が名乗りでた。そして真相を話したのだった。
「あれは、彼の子です、そして、私の子なのです」
 あの白骨死体は、それはもともと蔑まれてきたBと、件の豪農の妻との間にできた子だった。
「もっと早くにいっていれば……こんなことには、私は彼と深い仲になり、逢瀬を重ねるうちについに子供を授かってしまいました、夫には病気といつわり、離れでくらし子供を産みましたが、どう見てもその子は、夫とは似ても似つかぬ姿をしておりました、仕方なく私はその子の面倒を半分以上Bにおしつけここに乳母をよこしていたのです、しかし、子供が乳を必要としなくなると、私は夫の監視が怖くなりここに近寄らなくなりました、夫は……子供の事は知らずとも、逢瀬を重ねていたことには気づいていたようなのです」
 件の豪農も土下座をして頭をさげた。
「すまねえ、俺も“オキテ”を壊す一因をつくったともいえる、何もしらずにあいつにきつくしすぎた、妻も反省してる、どうか村八分だけは、村八分だけは勘弁してくれ!!」

 村長と村人たちは彼らを許したし、その後もうまく暮らしていたが、しかし、祖父にはもう少し早く、差別の問題に気付いていれば、という罪悪感だけが残ったのだった。
 そう、あの場で話を整理して豪農の妻に詳しくきくとBは“普段からお金や食べ物に困っており、そしてあるとき、息子が大病を患ったので見てほしい、と豪農の家を訪ねてきて妻に嘆願した、妻はすぐさま医者をあたったが、その豪農の家にすら払えないような大金が必要だとわかり、彼に諦めるようにいったのだ、しかし、そのことを知らされずわからなかったBはあきらめきれず“盛り日”に山に入った、熊を狩り、獲物を狩り、そして組合にばれないように売りさばき、金を稼ごうと考えたのだった”しかし、その彼の努力もむなしく息子はなくなる。しばらくして彼にも“罰”が下る。彼のもとには、何も残らなかったのだ。
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