人間模倣体

ショー・ケン

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プロローグ

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 ショートパンツにライダースジャケット。ウルフヘアーの女性が、今は使われていない地下都市(旧都市)のトンネルの下でコートに手をつっこんでいた。そして、彼女は回想をはじめる。

 私は、“ザド”。世界に30人しかいない正式な“エフティヒア・クラックス”のメンバーだ。苦しい試験と鍛練をうけ、そして人々のために予言と予知の能力とテレキネシス能力をもち、予知や予言によって未来訪れるであろう不幸、それらを人々に知らせ人々を幸福にするために生まれた存在、そしてそれが仕事。それが“クラックス”。超能力者のヒーロー集団だ。その根底が覆される事件が起きたのはいまから、30日前だった。

 “クラックス”が世に福音をもたらす最中“クラックスが世に現れて50年が経過した時、それは突如この地球に現れた。”。
 ―“天の光球”とよばれる翼の生えた卵上のそれらは、突如として世界に出現した―
 何の前触れもなく、世界のあらゆる場所に出現しうるとされるそれは、人一人分の背丈をもち空中にういている、そして出現から7日の“成熟”の期間を経て成体へと変化する。生体となったソレはこの世界の人間を模倣して、模倣した人間そっくりになり、その人間に寄生し、宿主を食い尽くす。

 “この世界にあだなす寄生虫、“RRAI(Life reflecting an image)”彼らは“クラックス”の天敵だ”なぜなら唯一彼らは、クラックスの“予言・予知”を免れるのだから。

 30日前、私は逃げたをRRAIを追っていた。私は同じクラックス仲間で双子の妹“レア”とともに、目の前のソレと戦っていた。支給された対クラックス専用の電気銃を使い、激闘の末、丁度7日になろうとする中で成体に近づくアメーバ状のそれを捕獲し、安心していた。だがその直後謎のガスマスクを付けた黒い集団の襲撃にうけ、クラックスを逃がしてしまった。

 翌日、失敗の汚名返上をするために、再び成体となってあらわれたRRAIを、日本支部の、“東北区”のある街の路地裏に追い詰めた。
 【ま、まさか、私の妹に化けたの?それとも私……】
 “RRAI”アメーバは、私たちそっくりの姿形になっていた。私は驚愕した。RRAIを倒すために戦うとされる私たちクラックスだが、実のところ、彼女らの変態と寄生が完了すれば、100発100中でその“同じ姿”の存在を取り殺す。そうなれば私たちができるのは、その後に変態もしくは変態する前の“クラックス”を捉え、隔離する事だけだった。そして“寄生前”の確保率は五分五分である。彼らは液体化もできるし、なぜかどんなに遠くにいても“同じ姿”の人間を見つける。厄介な事に、RRAIは殺す事も禁止されている、(なぜならRRAIを殺したところで、RRAIは“同じ姿”の人間に寄生している事がありその人間自体が“RRAI”となるという事例も報告されているからだった。)RRAIを隔離することでしか“同じ姿の人間”が助かる方法はない。もしも寄生されずうまく隔離できた場合にも“同じ姿の人間”は病気や事故など、必ず不幸な目に合う。もし逃がしたとしてもリスクは残る。では隔離しなければどうか?30日クラックスを自由な状態にすれば、クラックスはまた“別の人間に変態する”のだ。私たちの任務は“隔離すること”ただそれだけ、だった。

 路地裏で私とレアは、RRAIを追い込んだ。彼女は私たちと同じ姿をし、同じ声をだし、私たちに許しをこうた。“初めの失敗”は、私たちの所属する“クラックス・ガーディアンズ”通称組織によって禁止されている“クラックス”との対話を試みてしまったことだった。
 「どうして、私たちに似ているの、私たちが“クラックス”が“模倣された”なんて話初めてよ、聞いたことはない、事故や事件に巻き込まれた話はよく耳にするけれど」
 【ちょっとまって、私を殺さないで、私はあなたたちに有用な情報を提供できるかも】
 (拳銃を恐れている、ただの電気銃なのに)
 そういって私は妹に目配せして、拳銃を向けたままにするように仕向けた。
 【あなたたちの世界では、私たちのような“旅行者”をなんていうの?私はただの、共鳴者(シンパサイザァ)私たちは、敵同士ではないわ】
 「あなたたちはRRAIよ、人類の敵、人類を取り殺そうとする人類の模倣者、突如現れた私たちの天敵、捕まえても、“似た姿の人間”を苦しめる、疫病神」
 【天敵、そう教えられているのね、けれど、私には、ひとつ提案があるわ、あなたたち、どうやらずいぶん仲がいいみたいじゃない、“私たちの世界”ではそうじゃなかったけれど】
 「何がいいたいの?何をいっているの?」
 【ち、違う、何でもない、ちょ、ちょっとまって?……】
 何かにかんづいたように、しゃがみこんだまま上体をおこし、RRAIはいった。
 【“クラックス”に“模倣された”のが初めてといったわよね、あなたたち、それを上層部に報告した?】
 首を振る私たち。私は、すぐにでもRRAIを殺したかったが、そのそばで妹の手は震えていた。確かにRRAIを殺しても、厳重な隔離生活がまっている。
 【じゃあ、あなたたちに提案があるの、あなたたちの上層部が嘘をついている事を、証明してあげる、私に28日の期間を頂戴、そうすればあなたたちを納得させてあげるから、その間私は絶対にあなたたちを襲わないわ】
 このRRAIが私と妹、どちらを模倣したのか、私たちにすらわからなかった。なぜならその両者の特徴を両方とももっていたからだ。私のなきボクロ、妹の左眉毛のほくろ、両方を。もし、組織に黙ったまま、妹を、私が助かる方法があるのなら、それが一番よかった。それを悟ったかのように、かの怪物はニヤリとわらった。その時はわからなかった。あの怪物が、妹と私の大きな違い、右目の下のほくろを、絆創膏で隠している意味を。私は叫んだ。
 「詭弁や妄想ばかり、結局あなた、何がいいたいのよ」
 ウフフ、と薄気味悪い自分たちによく似た笑みを浮かべ、彼女はいった。
 【取引しない?28日間にげたら、あなたたちは“自由”史上初めて、“取りつかれない、殺されもしない存在”になる、それも“クラックス”がね】
 私は、取引を了承してしまった。“彼女が私たちに渡した情報と引き換えに”私は、私たちは、あの取引の後からずっと逃げ続けている。彼ら(RRAI)を隔離したところで、死や病気や不幸が私たちを襲う。私たちはまだ生きたりない。なぜならクラックスのメンバーは皆16で能力を手に入れ、18で能力を失う、だから皆18歳以下、成人未満の子供なのだから。
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