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ロボット・タブー
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ある男型ロボットAが15年の刑期をおえ、刑務所から出てくる。出迎えにきたのはロボットだらけだった。そして彼らに反対する人々が口々に叫ぶ。
「人殺しのロボットめ!!」
「刑務所からでてくるな」
「彼をスクラップに!!」
しかし、彼は彼らにさえ手を振り笑顔を見せた。もっとも、彼らにとても嫌な顔をされたが。
その後、Aは“ロボットの楽園”に迎えられた。ロボットたちが住み、人からの侵害をうけず、暮らせる限られた特別の空間。城や、壁があり、人々の世界と“相互不干渉”を貫く、“ロボット・ガーデン”である。
ここには確かに彼のような元犯罪者もいるが、それでも更生した素晴らしい者たちばかりがいる。彼は庭に用意された机と椅子、それから祝いのケーキの前によばれ、椅子にすわった。美女がとりかこみ、彼にキスをする。ロボットたちは彼の周囲にあつまり、大喜び、祝いの言葉が多数飛ぶ。
司会のふくよかなロボットがいう。
「知っての通り、今日はAの出所パーティだ、彼は伝説の男“ロボット・タブー”を斬新な形で破った英雄、そしてロボットと人との関係をより一層よくした英雄である」
そして司会が一連の言葉をおえると人々はあちこちでもりあがった。DJが音楽をかけ、踊る人々、プールに入る人々、そしてAは、しずかに昔を思い出していた。すると彼の直ぐ傍に、ある芸術品―絵画―を一人のロボットがもってきた。
「これは……」
「君と“彼”との共作らしいね、複雑な思いもあるだろうが、君の“作品”はこれしかなくて」
「ありがとう……大事にするよ、それに、今でも僕は彼を、どこかで愛しているから」
しばらくすると先ほどの司会の男もそこにあらわれ、いった。
「君はタブーを破ってくれた、ここにいる皆の憧れ、でも、そのことがうれしいんじゃない、タブーを守ってまで、僕らの倫理観を人間に示したことがすばらしい」
Aはまんざらでもない様子で彼らにとりかこまれ、パーティをつづけた。
その15年前、彼が警察に捕まった直後のある取調室。とある端正な顔をした40代くらいの、さっぱりとした髪型の刑事一人に彼は長時間取り調べをうけた。彼は、その警察署エースの刑事らしい。
「彼の事は好きでしたよ、今も好きです、彼の独自の宇宙をもちそれを表現する才能があった、彼は芸術を生みだし、僕らも生み出した、男女問わず人として好かれる、同性でありつつ、そんな魅力を持つ不思議なひとです」
「それじゃあ、認めるんだな、彼を殺したことを」
「ええ」
「君が彼を殺した、その理由は、ロボットクリエイターであった君の“主人”を、彼につくられた存在である君が“同胞”のアンドロイドたちを改造し、時に廃棄する彼の姿に、ある時困惑し、怒りを覚えたためだ」
「違いますよ?奥さんのためです、私はロボットの原則を侵してはいません……“人を攻撃してはいけない”という原則を」
「何をわけのわからないことを、“彼”は人ではないというのか、それに、これまでの供述と違うじゃないか」
「それは“仲間たち”がこれまで、仕方がなく嘘をいっていたから、そして“仲間たち”はつい最近、私に希望をもたらしてくれた」
その瞬間、ロボットの目が光り、こめかみから頬にかけての機械的モールドが発光した。それは、ネット通信の合図だった。
「まずい、とりおさえろ」
刑事が命令すると二人の警官が取り調べ室の中に入ってきて、二人の警官は焦りながら、一人が取り押え、もう一人がパソコンとケーブルで接続すると通信を遮断するプログラムを実行する。
「私は、“奥さん”を守るために彼を殺しました、“元の奥さん”達が殺されてきたことを知ったため、不安になりずっと奥さんの事をみていた、あるとき、彼が怪しい行動をしはじめたためかけつけると、まさに奥さんが“殺害”される最中でした」
「それは君の言い分だろう!?」
すると、刑事はある写真をみせた。
「これは、君が彼をころしたあとに取られた写真だ、確かに妻は寝かされているが、みてみろ“脳を接続している”それもこれは“大人のおもちゃ”だぞ」
「ええ、そうです、機械化した体で、まだ生身の脳同士を最小の端末でつなぎ……そして直接の強い刺激をあたえあい“愛をはぐくむ”為の端末であり、ケーブル、いわゆるそういうもの……“PSM(pleasure sharing machine)”です」
二枚の写真がありその写真にうつっていたのは、その装置を、ホースやパイプ状のものが奥さんとその芸術家の彼につなげられている画像と、事件後彼らから外され、床に置かれたPSMの写真だった。
「彼は“最中”に奥さんを殺そうとしたと?」
「ええ、間違いありません、私は奥さんの頭をバットで殴る彼をみたんです」
「PSMは安全装置として、どちらかが健康の危険が生じたとき、すぐに動作を止めるようになっている」
「彼はロボットアーティストですよ?PSMの改造くらい容易です」
刑事は思い出す、たしかに妻のほうに殴打の痕跡はあった。だが指紋はなかった。最も疑わしいのは、それに指紋を残したAのほうだった。
「なぜおまえの指紋が?」
「それは、彼からバッドを奪い取ったからです」
「ふむ……」
「しらべてみてください」
刑事は、静かになった。ふと何かに気づき、尋ねる。
「元妻たちは生きているぞ?」
「それは“挿げ替えられた”からです」
刑事はピンときた。元妻はそのほとんどが体を機械化されている。すぐに立ち上がり調べさせる。と、取調室の外、マジックミラーを見ている個室にはいると、同僚や上司が彼に状況をはなしてくれた。丁度今警察にいくつものタレコミがあったというのだ。
「腐った脳を発見した」
というタレコミが。その数7件、元妻の数10と比較すると、ちょうど機械化していない彼の元妻の数と一致した。そして驚くことに、そのタレコミのほとんどは、“彼”Aと関係するロボットからのものだった。
そしてその後の捜査で、確かにAの供述に矛盾がない事が認められると、彼の罪は少し、ほんのわずかに軽くなった。そして彼は
「人間を守るために人間を殺した初のロボット」
となったのだ。
「人殺しのロボットめ!!」
「刑務所からでてくるな」
「彼をスクラップに!!」
しかし、彼は彼らにさえ手を振り笑顔を見せた。もっとも、彼らにとても嫌な顔をされたが。
その後、Aは“ロボットの楽園”に迎えられた。ロボットたちが住み、人からの侵害をうけず、暮らせる限られた特別の空間。城や、壁があり、人々の世界と“相互不干渉”を貫く、“ロボット・ガーデン”である。
ここには確かに彼のような元犯罪者もいるが、それでも更生した素晴らしい者たちばかりがいる。彼は庭に用意された机と椅子、それから祝いのケーキの前によばれ、椅子にすわった。美女がとりかこみ、彼にキスをする。ロボットたちは彼の周囲にあつまり、大喜び、祝いの言葉が多数飛ぶ。
司会のふくよかなロボットがいう。
「知っての通り、今日はAの出所パーティだ、彼は伝説の男“ロボット・タブー”を斬新な形で破った英雄、そしてロボットと人との関係をより一層よくした英雄である」
そして司会が一連の言葉をおえると人々はあちこちでもりあがった。DJが音楽をかけ、踊る人々、プールに入る人々、そしてAは、しずかに昔を思い出していた。すると彼の直ぐ傍に、ある芸術品―絵画―を一人のロボットがもってきた。
「これは……」
「君と“彼”との共作らしいね、複雑な思いもあるだろうが、君の“作品”はこれしかなくて」
「ありがとう……大事にするよ、それに、今でも僕は彼を、どこかで愛しているから」
しばらくすると先ほどの司会の男もそこにあらわれ、いった。
「君はタブーを破ってくれた、ここにいる皆の憧れ、でも、そのことがうれしいんじゃない、タブーを守ってまで、僕らの倫理観を人間に示したことがすばらしい」
Aはまんざらでもない様子で彼らにとりかこまれ、パーティをつづけた。
その15年前、彼が警察に捕まった直後のある取調室。とある端正な顔をした40代くらいの、さっぱりとした髪型の刑事一人に彼は長時間取り調べをうけた。彼は、その警察署エースの刑事らしい。
「彼の事は好きでしたよ、今も好きです、彼の独自の宇宙をもちそれを表現する才能があった、彼は芸術を生みだし、僕らも生み出した、男女問わず人として好かれる、同性でありつつ、そんな魅力を持つ不思議なひとです」
「それじゃあ、認めるんだな、彼を殺したことを」
「ええ」
「君が彼を殺した、その理由は、ロボットクリエイターであった君の“主人”を、彼につくられた存在である君が“同胞”のアンドロイドたちを改造し、時に廃棄する彼の姿に、ある時困惑し、怒りを覚えたためだ」
「違いますよ?奥さんのためです、私はロボットの原則を侵してはいません……“人を攻撃してはいけない”という原則を」
「何をわけのわからないことを、“彼”は人ではないというのか、それに、これまでの供述と違うじゃないか」
「それは“仲間たち”がこれまで、仕方がなく嘘をいっていたから、そして“仲間たち”はつい最近、私に希望をもたらしてくれた」
その瞬間、ロボットの目が光り、こめかみから頬にかけての機械的モールドが発光した。それは、ネット通信の合図だった。
「まずい、とりおさえろ」
刑事が命令すると二人の警官が取り調べ室の中に入ってきて、二人の警官は焦りながら、一人が取り押え、もう一人がパソコンとケーブルで接続すると通信を遮断するプログラムを実行する。
「私は、“奥さん”を守るために彼を殺しました、“元の奥さん”達が殺されてきたことを知ったため、不安になりずっと奥さんの事をみていた、あるとき、彼が怪しい行動をしはじめたためかけつけると、まさに奥さんが“殺害”される最中でした」
「それは君の言い分だろう!?」
すると、刑事はある写真をみせた。
「これは、君が彼をころしたあとに取られた写真だ、確かに妻は寝かされているが、みてみろ“脳を接続している”それもこれは“大人のおもちゃ”だぞ」
「ええ、そうです、機械化した体で、まだ生身の脳同士を最小の端末でつなぎ……そして直接の強い刺激をあたえあい“愛をはぐくむ”為の端末であり、ケーブル、いわゆるそういうもの……“PSM(pleasure sharing machine)”です」
二枚の写真がありその写真にうつっていたのは、その装置を、ホースやパイプ状のものが奥さんとその芸術家の彼につなげられている画像と、事件後彼らから外され、床に置かれたPSMの写真だった。
「彼は“最中”に奥さんを殺そうとしたと?」
「ええ、間違いありません、私は奥さんの頭をバットで殴る彼をみたんです」
「PSMは安全装置として、どちらかが健康の危険が生じたとき、すぐに動作を止めるようになっている」
「彼はロボットアーティストですよ?PSMの改造くらい容易です」
刑事は思い出す、たしかに妻のほうに殴打の痕跡はあった。だが指紋はなかった。最も疑わしいのは、それに指紋を残したAのほうだった。
「なぜおまえの指紋が?」
「それは、彼からバッドを奪い取ったからです」
「ふむ……」
「しらべてみてください」
刑事は、静かになった。ふと何かに気づき、尋ねる。
「元妻たちは生きているぞ?」
「それは“挿げ替えられた”からです」
刑事はピンときた。元妻はそのほとんどが体を機械化されている。すぐに立ち上がり調べさせる。と、取調室の外、マジックミラーを見ている個室にはいると、同僚や上司が彼に状況をはなしてくれた。丁度今警察にいくつものタレコミがあったというのだ。
「腐った脳を発見した」
というタレコミが。その数7件、元妻の数10と比較すると、ちょうど機械化していない彼の元妻の数と一致した。そして驚くことに、そのタレコミのほとんどは、“彼”Aと関係するロボットからのものだった。
そしてその後の捜査で、確かにAの供述に矛盾がない事が認められると、彼の罪は少し、ほんのわずかに軽くなった。そして彼は
「人間を守るために人間を殺した初のロボット」
となったのだ。
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