欲しがらない使命

ショー・ケン

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欲しがらない使命

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 Aさんの地元で有名な初老の女性霊能者。彼女が子供を亡くした際にお世話になった人だ。親切で謙虚な人で、自分で力を使いながら、それを偉ぶる所もない。皆にも尊敬されていたが、彼女の人の好さは度を越している。だが一度だけ、彼女に我が子の成仏のための祈祷をお願いしたとき奇妙な言葉を聞いたことがあった。ふと、成仏する我が子の魂を見た気がして、その時彼女は言い放ったのだ。
「幽霊なんていない……そうよ、そのほうがいいわ」
 しかし、ぼそっといったことだし、日頃の行いが素晴らしいひとなので大して気にしていなかったのだった。

 しかし、いくらいい人といえどのその知名度に反して悪い噂等はつきまとうもので、奇妙な幼子の声が彼女にまとわりついている、何か悪い事をしたのではないか、とか、霊媒師なのに本当は幽霊を信じていないような態度をとられたとか。
 
 それから数年たち、友人の子供がまだ生まれる前に亡くなったというので水子供養の寺を訪れたときのこと、そこで手を合わせる件の霊能者とばったりでくわした。三人でお茶をすることになり、もし話づらい事ならいいのですが、と前置きをしながら、件の事を尋ねた。
「もしかして先生は、幽霊を信じていないのですか?」
「いえ、そうではなくてね、その方があの子にとってもいいと思って」

 ここからはその霊媒師の女性の話、かつてOLとして働いていた彼女はある男性と職場で出会い、恋愛、結婚をした。しかし、初めて授かった子供を流産。いつまでも悲しんでいるので、彼女を見捨ててでていってしまった。人生のどん底。そして元来気が弱く、感性が豊かな彼女は子供を失った苦しみから心を病み、満足な仕事もできず、そして極貧の生活を送るようになった。

 毎日少ない食事でやりくりする日々、しかし、入れていたシフトに入れず、給料もほとんどもらえなかった月があり、明らかに体調も悪く、力も出ない、フラフラする、ばたっと、そこで倒れて自分の体がひどくやつれていることにそこでやっと気づいた。そこで、自分の顔の直ぐ傍にまだ小さな幼児の両手両足がみえていた。
(そうね、お母さん今そっちへいくからね)
 名前をも決めていた、必ず幸せにするとおもっていた我が子の死、彼女がふさぎ込むのは訳があった。よく調べると彼女は、ある持病が原因で、子供がそれ以上うめない体だったのだ。元夫にもそれを打ち明けられず、最悪の別れとなった。今までであった人々へ、こんな形で別れる後悔を抱きながら、ふと、意識をうしなった。

 やがて目を覚ますと、なぜか体は少し楽になっていた。嫌な夢をみたと心配した近くに住む母親がかけつけ食事をつくってくれた。そして親友にも連絡してくれ、そこからは徐々に生活が回復していったのだ。
 生活が落ち着いてきたある日、親友に件の幻の件を話す。
「私、本当はあの子の傍にいたほうがいいんじゃないのかなあ」
 そこで親友は、どうしてそんなに執着するのか不思議な顔をしたので、彼女はついに、もう子供を産めない事を話した。
「そんなに苦しんでいる、悲しんでいるあなたをせめる子供なんているかしら?子供なんて純粋なものなのに、むしろ、お母さんがみた、あんたが苦しんでる夢っていうのも気になるし、もしかしてあんたを助けにきたのかもよ、もっと生きたいようにいきろって、自分のやりたいことをみつけろって」
 そういわれてから、彼女は再び、再起をかけて自分のやりたいことを、探すようになった、そんなある日、占いや除霊術の買ったもののほとんど内容をみたことすらなかった本がめに入り、それをみると、まるで体に力が湧いてくるような感じがした。その日を境に霊的な感性が芽生えるようになり、ぼんやりと幽霊が見えるようになったのだった。

「だからね、私がこんな職業やめたい、引退したいっていうと、驚く人もいるけれど、つまり……きっとこの能力はすべてを諦めて自分をおいつめ、おいつめられた私に、命を与えられなかったあの子が授けてくれたものだから、あの子が私に与えてくれた使命だから、ありがたいと同時に、申し訳なくもあるのよ」

 Aさんは彼女の心中を察知して、彼女の傍にいるかもしれない水子霊にてをあわせた、ふと、見えないはずのその手足、輪郭が見えたきがした。

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