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どんづまりの校舎
しおりを挟む廃墟とかした学校の屋上に男子高校生がいた。そこから飛び降りようとしている。高さは十分だ。その背後に、女子高校生の少女がたった。
男子高校生と少女は、対称的だった。男子高校生は真面目そうでくらく前髪で瞳がかくれている。少女は明るい金髪に、キラキラした格好をしている。
「何してるの?」
「何って、きみこそ」
二人は初対面だった、男子高校生は不審に思って尋ねる。
「君のような人がこの場所になぜ、この場所が何て呼ばれているかしっているか?」
「自殺高校、自殺者が多い廃校」
「しっているならなぜ?」
ニコニコと笑う女子高生。
(そうか、こうやって明るくて何も考えていないような楽しそうな人ほど裏では死について考えているという事もよくいうからな、ありえないことじゃない)
「ひどい、何も考えてないなんて……そんなんじゃないわよ」
「ご、ごめん」
男子高校生はふと考える。今の言葉は口にしていない。
「私、人の考えていることがわかるの、まあでも、人の事を気にしすぎって意味では君の言う通りかな」
少女は男子高校生の前にたって、手すりにふれた。手すりはふれれば壊れてしまいそうなほどに錆とひび割れが進行していた。
「ね?考え直そう」
「……」
ふと、うつむいた。ため息をついた。こんな人が自分の気持ちをわかるわけがない。自分には勉強しかなかった。なのに最近成績がおちていて、それもこれも、“あの事件”のせいだ。
「ほら、顔を見せて」
「ちょっ」
少女は男の頬に手をのばした。彼はふりはらった。妙につめたい手だった。ふと嫌な予感がして、下をみる。下には何もなかった。
「はあ、何なんですか」
「聞かせて、話」
少女は相変わらずニコニコしている。
「どうして」
彼は首をふった。どうだっていい。もう何もかも。
「ある時、突然声をかけられたんです、カースト上位の少女から……」
その人は、とてもかわいい人だった。小柄で人の悪口なんていわない、誰に対しても優しい。その人は自分に告白してくれた。
「あなた、とってもいい人だから、私ににているから」
でも、ある時から自分を避け始めて、それどころか学校中で生徒が自分をからかうようなしぐさを見せるようになった。
彼女もまた、自分を避けるようになった。
「ねえ、どうして避けるんだ?俺たち仮にも付き合ってるんだよね」
「うん、そうだけど」
「どうして、理由をしらないの?」
「ねえ、本当にいってるの?あなたって本当にこの学校の事何もしらないんだね」
そういって彼女は、スマホをさしだした、そこにはこの学校の裏サイトが表示されていた。そこには悪口の数々、いたずら、いじめの数々の情報がのっていて、そこに自分のなまえのページがあった。家に帰ってそれを調べると、自分は絶望した。
「はーい、いまからじゃんけんしまーす、いけてない人間と一週間付き合うゲーム」
「本当にやるの?」
そこには彼女と仲のいい3人がうつっていた、彼女は、困りながらもそれに参加した。
「はーい、罰ゲーム決定」
負けた彼女が、自分に話しかけてくるところまで動画でうつっていた。
そこからの記述は、動画ではなく、テキストで、彼女の日記がかかれていた。そこには自分の悪口や、嫌がらせの数々、そして自分の口説き文句やら、キスをせまられたことや証拠写真など。
「こんな、こんな」
次の日学校にいって、彼女を問いただすと、彼女はいった。
「だから、あなたなんて私のいやがらせとゲームが、友達にうけたから“いやいや”付き合ってただけなの。こんな事もわからないなんて、もうこれ以上つきまとわないで」
「なるほどねえ、確かに期待させておいて裏切られたのは辛いねえ」
「僕にとっては、人生最高のひと時だったのにそれが全部僕を嘲笑するつもりだったなんて、あれから僕は腑抜けになってしまった、こうなるくらいなら最初から……」
少女は、彼の話をきいて、深刻そうにアゴに手を当てて頷いた。
「じゃあ、あなたの話を」
「うーん、あなた、私の事知っているんじゃない?」
少女がニコニコと笑う。彼は、頷いた。
「ここで3年前に少女が飛び降りた……あなたの立ち振る舞いと人柄、背格好もそっくりの……彼女は、男に弄ばれて死んだって」
「そうね、ひどい男だったわ、仲良くするだけ仲良くして、何股もかけていてね」
「よくある話ですね」
「ひどい……でもまあ、そいつが幼馴染でなかったら、こんなに苦しまなかったんだけど」
「そうなんだ……」
彼が苦い顔をしたので、少女は背伸びをした。
「男に弄ばれた噂……実はちょっと違うな、私は友人に頼んだだけだよ、私が自殺したらその話流してって」
「え?でも、自殺は本当ですよね、どうして?」
「そうね……まあ、あなたが諦めたら教えてあげる」
「じゃあ何が理由で、ここにとどまっているんです?」
「いわれたのよ……地獄の門番にね、ここで死ぬ人をとどめろって、私は確かにあなたよりいい人生を歩んだよ、けれどあんたのこれからがどうなるかはわからないじゃない、だからもう少し、それでもだめならここにくればいい」
「そんな気休め……」
「痛かったなあ、つらかったなあ」
「ぐ……」
彼はとまどった。
「私はね……自殺をしたけど、彼には生きてほしかった、だからね、男にだまされて死んだことにしたし、本当の死因をだまっていた」
「なるほど……本当はもっと辛い事があったんですね」
「死ぬより辛い事がね」
「なんだ……やっぱり、あなたにもそういう事があったんですね」
「うん」
彼の目は先ほどより少し明るくなっている気がした。
「私はね、今はなしただけでもあなたの事、騙そうとしてないよ、それにほら」
「……」
少女は彼にふれる、少女の手は、彼の体を突き抜けた。
「ほら、死んでる、だから、騙す意味ないじゃない」
「確かに……」
「ね?」
少年はしばらく少女と話すと、明らかに何か荷物が降りたように背伸びをした。
「確かに、こんなバカげた現象にあうのなら、これもいいかもしれない、それに話しててわかったんです」
「何が?」
「幼馴染の人の事好きだったんですね、でもうまくいかなかったんだ、それを後悔している」
唖然とする少女。
「やっぱり、あなた本当は人の気持ちよくわかるんでしょう、だから、本当は落ち込んでいないんじゃ?」
「ばれました?本当は、気にしているのは彼女のことなんです、いやいや自分なんかとつきあってって」
「いやいや……一見暗そうに見えて知的で、明かるい人とも打ち解けられる、あなたはまだ自分の才能に気づいていないだけだよ」
そう言って笑うと、少年は、後ろのドアを開いた、屋上から降りるドアを。
「何してるの?」
「何って、日常に戻るんですよ」
「自分を信じられるの?」
「少なくとも霊感があるみたいですから」
そういって手をかけてドアをひねる。
「それじゃあまたね、どこかであえたら」
「ええ、また……」
少年がいなくなると、少女は、ふと昔の事を思い出した。少女の死因は、病気だった。とても重い死の病。その辛さに耐えきれず病室から抜け出して死んだ。
でもそのことを、幼馴染に知られたくなかった。自分の事を重くうけとめて、それで新しい恋を始める事ができなかったら、悲しい人生になるだろう。
それくらい彼はいい人だった。少女は、ひとり呟いた。
「ああ、恋したかったなあ、両想いなのはわかっていたのに、まあ、あの子の人生がうまくいきますように」
校舎からでる少年の背中を見送った。
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