占い師同盟

ショー・ケン

文字の大きさ
上 下
1 / 1

占い師同盟

しおりを挟む
OLのAさんは昔から、金運も男運もない。
いくつかの占い師や霊媒師に見てもらったがだれもがそれについて同じことをいう。
「あなたは、とにかく金運と男運に恵まれない人生だね、まあ長生きはするよ」
中年となった時に、会社が倒産し、仕事がみつからず人生を投げ出しそうになった時に、フラフラしているとあるときほとんど浮浪者のような格好の大道芸人の女性に声をかけられた。
「あんた“印”つけられているよ」
「は?印?」
 話をきくと、どうやら彼女の金運や男運がないのは別段人と比べてそれほど彼女が劣っているわけではなく気持ちの問題だという。けれど、彼いわく長年そうした占い師や霊媒師にいわれてきたので彼女の中で固定観念が醸成されてしまったという。
 そしてその人に奇妙なバッチをもらった。それは《占い師同盟》が発行するバッチで、裏にはその人のフルネームが書かれていた。
「私は同盟に“世話になった過去”があってねえ、なんとか生き延びてはいるが、やつら“霊的な力”があるのにろくなことに使いやしねえ、だから反発したら私を恐れておいかけまわしやがる、まあ私も疲れたし、どうやら先が長くないようなので、お前にこのバッチをやるよ、これで占い師を脅すといい、そうだなあ、お前が一番長い事世話になってる占い師がいいよ」
 そういわれて、Aさんは考えたが、ふとある親戚の占い師の事を思い出した。地元で有名な占い師で、ひどく人気で儲けているらしい。早速彼女のところにいきバッチをみせ、“印”の事を問い詰める。彼女は、目がてんになったかとおもうと、悲鳴をあげて嘆願した。
「ひぃい!!“あいつ!!”やっぱり生きてやがったか……頼む、秘密をばらさないでくれ、何でもする!!」
「じゃあ教えて、あの人は“印”といった、何でそんなもの私につけたの、私を不幸にするため?」
「お前、そこまではきいていなかったのか……しかし、まああいつがバックにいるなら、教えるしかあるまい」
 そういって占い師が語りだしたのは、こういう仕組みだ。かつて、占い師は信念をもって活動する人も多かった。だが、霊感のある人間もそこそこにいる界隈である。小さな小競り合いや、呪いの掛け合いなど、業界の人間同士での潰しあいや諍いが絶えなかった。そこで、ある高名な霊媒師と彼のつくった同盟が、ある規約をつくった。
「顧客の魂に印をつけ、その印の情報を読み取り、占いを共有しよう、そうすることで占い師の信用は保たれ、だれかが抜きん出て評価される事態も、誰かがひとり勝ちする事もなくなるだろう」
 そこで、何十年も前から占い師たちは同盟を組み、ほとんどの占い師が同盟の中で活動をしているという話だ。

 Aさんは憤った。
「そんな、力ある人間が自己都合で、そんな詐欺まがいの事をするの!結局〝印〟は本当であっても嘘であってもかまわないのじゃない!!」
 占い師はたじろいだ。
「そうだ……その秘密を持ち出し、人々に知らせようとしたのがお前のあった老婆だよ……呪術によって同盟が殺そうとしたが、もう何十年も消息不明だ」
 こまりはてて頭を抱えた占い師は、そこで、Aさんに持ち掛けた。
「そうだ、お前、取引をしないか、お前が欲しい者はなんでもやろう、その代わりやつと結託して悪さをしないでくれ……たしかに占いの結果で人生を左右されるものもいるがそうじゃないものもいる、それに私たちの中には、私のように霊能力が強いものもいる、紛争もいやだし、呪い合戦もいやだ、私のせがれなどは……“印”こそ見られるが、霊能力はほとんど皆無なのだ、そうした人間を食わせるために必要な取り決めなのだ……」
 ふと、Aさんはふつふつと怒りがわいてきた。自分が今不運のさなかにいることも災いしたのだろう。彼女はふと悪い考えがうまれ、ニヤリ、とわらった。
「それなら……」
 それから数週間後、彼女は件の占い師のせがれと結婚した。契約はこうである。
お前の息子と、お前の補佐をする役職をよこせと、占い師は納得し、簡単にそれをさしあげた。息子は嫌な顔をしていたが、Aさんは満面の笑みだった。なにせ地元で有名な占い師の、それまた有名なイケメンの息子、10歳近くの年の差婚だったのだった。





しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...