ループ

ショー・ケン

文字の大きさ
1 / 1

ループ

しおりを挟む
 男はふとめをさます、だが7秒後、意識がなくなった。また10秒後には同じ状態になる。目を覚ます旅に記憶をなくしている。この男は、そんな日常を繰り返している。

 会社の役員と、幹部が男の元に訪れた。
“タイムマシンの研究と開発”
 を行う会社だ。その時代はもうそんな事まで研究されていて、数分間なら、条件さえ整えば過去へタイムワープする事ができた。といっても、軍事機密、国家機密であるので、幾重にも厳重な法律がつくられ、一般人には到底クリア不可能な条件のもと、タイムマシンに乗るのだ。

 男は、病院のベッドで目を覚ます。周囲には会社の幹部と役員と、奥さんがいた。皆いくらか年取ったようだ。しかし、なぜだか思い出せない。自分はなぜ、入院しているのか、皆が自分の手をとって、また自分は意識を失った。

「やっぱりだめか」
「先生は、色々な刺激を与えて試すしかないと」
「そうですか、彼は優秀な研究者でした……」
 役員はじーっとめをふせていて、ふと目線を横の眠っている男にむけると、男の体から、ふと何かが抜け出ていったのを感じた。それは男の透明な姿、まさしく魂のようなものだった。

 男は、そのまま病院を歩き回る。
「あの、私はどうしたのでしょう?」
「あの、ここはどこです?私の研究を」
 ふと、男は頭を押さえた、そして気がついたのだ。
「そうだ、研究所に戻らなきゃ、戻って、“やり直さなきゃ”」
 そうしているうちに、また男は目を覚まし、にこやかな奥さんと訪問客に視線をぶつけた。

 その様子を見て、役員は首をふった。この役員は耐えきれなかった。会社の立ち上げにかかわり、順調だったのだが、あるとき“タイムマシン”にのった人々が皆一様に不具合を訴え始めた。すなわち、“幽体離脱”のような症状だ。それは極秘の秘密であったが、それがこんな結果になるとは……自業自得とはいえ。


 帰り際、幹部と役員の二人はタクシーに呼ぶ間病院の外でまっていると、役員が突然こんな事をいった。
「自業自得とはいえなあ」
「え?なんです?」
「彼は、未来を失い、過去をさまよい続けている」
「一体何を?」
「まあ、君はそろそろ役員になるころだろう、くれぐれも内密に頼むよ」
「は?はあ……」
 役員は、さっきの男と仲が良かったので怪訝な顔をして話をきいた。

「彼は……病気じゃないのだ」
「はあ?」
「極秘のナノマシンによって、彼の行動は制限されている、“時間に関する犯罪”の為だ、だが彼の魂は、今でも“罪をくやんで、あるいは帳消しにしようとしている”」
「いったい何の話です?幽体離脱なら、私もしっていますよ、しかし彼は“被験者”ではないのでは……」
「そうじゃないのだ、彼は禁を破ってタイムワープを実行したのだ」
「は?一体何のために……」
 ふと、幹部は考え込んだ、そして、あっと声をあげた。
「そうだ、彼の同僚に天才がいるだろう、タイムマシンの“発明者”が」
 幹部や親しいものに彼は話していたが、そう、嫉妬だ。嫉妬を隠そうとはしていなかった。
「そのために彼は“過去へ行き、その功績を自分のものにしようとした”」
「だから、だからって、タイムマシンの副作用を放置され、また未来の記憶まで消されるなんて!!!」
「落ち着け……」
 ふと、役員は相手を落ち着かせていった。
「いっただろう?禁を破って行動に移したのだと、しかし、それはうまくいかなかった、なぜなら、今のタイムマシンの稼働時間の限界をしっているだろう、数分間だ、その後、強制的に現実に戻される、彼は何度も挑戦したが、歴史を変えるにはいたらなかった」
「……」
「君は知らないだろうが、役員はしっている、知らなくとも“勘づく”さ、役員のほとんどは、“被験者”の経験があるからね、つまり……“幽体離脱”の症状は、薬で抑制できるのだ、いや、まってくれ、ここからが肝心なんだ……その薬は、一度タイムワープをするたびに服用しなければならない、1時間以内に服用しなければ、例の副作用をとめる事ができないのだ」
 幹部は、落ち込んでため息をはいていった。
「彼は、幸せな夢が見られるのでしょうか」
「さあ?目をつぶって夢を見ていても、過去へは戻れず、未来にもどっても、記憶をうしない、奥さんとまともに会話できない……代償としては、少々大きすぎるものだね」






















しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

『日常の中の怪異』 ― 私が体験してきた不思議な話 ―

かゆると
ホラー
これは私が これまでの人生で体験してきた 不思議な出来事の記録です。 実体験を元に 一部フィクションを交えて書いています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

意味がわかると怖い話

邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き 基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。 ※完結としますが、追加次第随時更新※ YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*) お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕 https://youtube.com/@yuachanRio

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

洒落にならない怖い話【短編集】

鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。 意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。 隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。

処理中です...