奇妙な生霊

ショー・ケン

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奇妙な生霊

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 あるカフェで二人の男女が話している。男が相談を受ける側。女は相談をしている。
「やっとみつけたのよ、私の大事な人、私の好きな人、他人のこと、すきになれなかったのに」
「そうなんだ、で、何がそんなに問題なの?」
「……」
 女性はふさぎ込んだように悩みこんでいる。男は、思い切っていってみた。
「いいじゃない、あたってくだければ、俺がいつだって相談にのるから」
 実はこの男女もともと恋人同士で、しかし女性がどうしても本当には好きになれないといって、ずいぶん前に、学生時代に分かれたのだ。彼女はこういっていたのだ。
“あなただけじゃない、私は人に興味をもてないの”

 ギギ、男は姿勢を変え、その反動で椅子がずれる。
「それで、何なのよ?その“雲のような存在”って、幽霊じゃあるまいし」
「……」
「まじ?」
「もっと、怖い存在かも、でも私、その人の事だけが好きになれたの、ずっと気づかなかったけど、今までずっと一緒にいてくれた人、でもね、私彼に思いをよせすぎて、生霊が飛んじゃったみたい、でも、あなたが私を受け入れてくれることは、きっと悲劇にもなる」
「……??」 
 どきっとした。両手をにぎりしめ、じっくり見つめられる。
「ねえ、お願いよ、私がもし失敗しても、あの人がきえていなくなっても、あなただけは、私の選択をうけいれてね」
「あ、ああ、わかったよ」
 そういうと、彼女は男のすぐ後ろに微笑みかけた。
「??」
 男が振り返る。そこには何もいない。
「どうしたんだよ、そんなごまかさなくたって、俺は君のことうけいれるから」
「そうよね、じゃあ、私の傍にきて、私の唯一愛することのできたひと」
 足音がしてふりかえる。そこには、今男と向かい合ってすわっていたはずの真顔の人、ある女性が立っていた。
「ゴクッ……」
 男は息をのむ、それもそのはず、そこには彼女そのものがたっていた。姿勢を直して正面の彼女をみる、また後ろをみる、同じ人物が同時に存在していた。
「私ね……私の事、大好きになったの、それでね、生霊がとんじゃって……でも生霊も私の事が好きみたいで、だから、初めは知人や友人がが私のいるはずのない場所で私を目撃していたんだけど、だんだん私のそばで私自身の目にふれるようになってきて……いわゆるドッペルゲンガーっていうの?それに生霊、私はふたつの霊体験を同時に体感したのよ、きっと私はこのままどうにかなってしまう……だって、彼女を受け入れたら彼女は私のすぐそばにくるとわかっていたから、でもあなたの前なら、それも怖くない……ドッペルゲンガーを見た人間は死ぬ、私は私を愛し、そのことで私は消滅する、でも、私のこと、忘れないでね」
 二人は、お互いに手を伸ばし、そして、ふっと、男の前で姿を消してしまった。

 ふと、男は周囲を見渡す。そしてポツリ呟いた。
「あれ?今の今まで誰かと一緒にいたはずなんだが……誰だったかな、俺の事を好きな人だったはずだけど……いや、そんな人いないか」
 男はどうやら、今まで唯一本気で好きになった異性の事を忘れてしまったようだった。
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