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転生したら未来人だった
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男は、転生した。しかしそれは思わぬ形でだった。
「これは……どういうことだ、見覚えのある景色に、見おぼえのある世界、ほとんど世界は変わっていないじゃないか、それに、大人のまま転生したのか?」
だがよくよく見ているとところどころ違っていた。建物にはSFチックな粉飾や模様が刻まれているし、人にだってそれはきざまれているようだった。男は目覚めて以降、病院のベッドのような小部屋にねかされ“体調がよくなるまで”とそこで延々面倒をみられていた。確かに“体調”はよくなく、体のあちこちに力がはいらない、筋肉もいくらか委縮しているようだった。彼は目覚めてもしばらく入院生活。その間に、その看護師たちの体にまずそれは確認できた。例えば頬の端、耳の後ろ、ひじなど目立たない場所に〝機械である〟ことを証明するようなバーコード状の文様が刻まれていた。
ある時男は思い切って質問をする
「あなたたちは、機械なんですか?そして私はなぜ大人の姿で転生したのでしょう」
「ええ、私たちはある問題に直面して、だから、今、結束せざるをえなくなっているの、そしてあなたは、確かに赤子の形で転生してきたわ、けれど、生まれたはいいものの、環境の変化によって今の今までほとんど寝たきりの生活をして、大人になったのよ、けれど心配しないで、あなたがこれまで無事だったように、あなたのいた世界のように戦争や貧困はもうないわ、リハビリさえすれば、あなたも自由、人口が少し少ないのだけれど、その分、限られた人たちの楽園ができているわ」
病院のような施設の内部は自由に歩きまわる事ができたので情報収集にはことかかなかった。しかし転生したとはいえ、男はがっかりした。
望んだような“田舎のスローライフ”“剣と魔法の世界”“魔王との闘い”“素敵なヒロイン”どれもかけているのだ。
それでも今は、この時代に来て満足している。なぜなら、事故を起こして記憶をうしなって生まれ変わったかと思えば、突然人類の全てが成熟しており、自分のような根暗なネガティブな人間をさえ優しく包み込んでくる、つまり自分を必要としているからだった。その施設を出て以降も、あらゆる人間が自分によくして微笑みかけて挨拶してくれる。地球環境悪化により生活圏はコロニー状に壁に覆われた個所にバリアをはってギリギリ保たれているため、面積にして2000キロ程度に限られているが、人口が少ないので、仕事に困ることもなく、あてがわれる、それもロボットが重労働をほとんどしているので、仕事といっても軽作業ばかり、
そう考えると男は、うれしくなった。考えようによってはこれも“なれる系転生もの”である、なぜなら、機械化といえばそれは、確かに自分より幾何か高齢の人間が、その中身であろう。つまり、彼らは立派な成熟したおとなである。どんな若い男であろうと女であろうと、彼らはすでに成熟して異世界転生したようなものだ。人となりもとてもいいし、賢い。失敗も経験していて、彼らもまた転生者にふさわしかった。しばらく暮らすうちに何一つ嫌な事のないその世界は男にとってもはや楽園だった。
そして男は満足して、そのおかげかどんどんおおらかになり、体重も太っていった。それでも、人々の態度はかわりなく、むしろ男は女によくもてた。
ところが、それは彼の視点から見ればの話である。人々はというと、実はずっと彼をいやいや監視していた。彼の寝ている時や気づかないときに集まったり、無線通信をして、話を合わせたり、彼に秘密が漏れないようにした。合言葉は
“彼が真実に気付く前に……事をなそう”
男には明かされていなかったが、この男は、実はただ、冷凍保存から目覚めただけの男だった。彼の両親は彼の死後、その事実を受け入れず全財産を使いコールドスリープだけを実行し未来人に彼の処置をまかせた。それがたまたま、すんなりうまくいったのだ。
そのすんなりうまく言った理由とはこうである。彼が来る前、本来は、金持ちだけの世界で、それでしばらくはうまくいっていたが、金持ちだけではどうにもならない、ある手詰まりの問題があった。
彼が目覚める以前の少し前、1%程度の富裕層の中でさらに格差が生まれる争いがおき、戦争がおきた。自分の体を機械化できたのは、そこで生き延びたほんのわずかな、超富裕層。村程度の人口しかない人類であった。そして、その間に地球環境の悪化が続き耐えきれなくなった人々は徐々に、機械化できていない人間から死んでいった。格差にまけた富裕層さえ、コールドスリープを実践しなかったものは死んでいったのだ。そこでおきたのが“遺伝子プールの崩壊”である。
つまり、少ない人口だけが生き残ったわけであり、その血筋や遺伝子はとても偏ったことになった。自分たちさえ生き延びればいいとおもっていた超富裕層は、そんなことを考えていなかったのだ。そして、問題は生じる。初めはこんな形で問題が生じた、機械化したとはいえ、長寿によって精神的に苦痛を感じる者たちが現れたのだ。
そして、自死も増えていった。そのため喫緊の課題として“次世代”をはぐくむ必要が生じてきたのだが“ほぼ近親者のみ”で血と遺伝子偏っていたので、生まれる子供たちは障害をもったり、短命である可能性が考えられた。困り果てた彼らが見つけたのは旧文明のある場所で奇跡的にコールドスリープが保たれていたその“男”であった。彼らは男を大事にし、男の前では人格者を演じ、男に気に入られるようにして、なんとか子種をかき集めている最中なのであった。
彼らはひっそり噂する。
「生身の人間とはなんと醜いのだろう」
「直接ふれるのはいやだから、代理アバターを使っていつも接触しているが、それでもいやだ」
「子供さえできれば彼は処分しよう、そして、子供はなるべく早く“我らの仲間”として育ち、彼が同意した時はじめて“機械化”しなければな」
「ああ、大丈夫だ、コールドスリープで生き延びた人類はまだいるようだから」
「これは……どういうことだ、見覚えのある景色に、見おぼえのある世界、ほとんど世界は変わっていないじゃないか、それに、大人のまま転生したのか?」
だがよくよく見ているとところどころ違っていた。建物にはSFチックな粉飾や模様が刻まれているし、人にだってそれはきざまれているようだった。男は目覚めて以降、病院のベッドのような小部屋にねかされ“体調がよくなるまで”とそこで延々面倒をみられていた。確かに“体調”はよくなく、体のあちこちに力がはいらない、筋肉もいくらか委縮しているようだった。彼は目覚めてもしばらく入院生活。その間に、その看護師たちの体にまずそれは確認できた。例えば頬の端、耳の後ろ、ひじなど目立たない場所に〝機械である〟ことを証明するようなバーコード状の文様が刻まれていた。
ある時男は思い切って質問をする
「あなたたちは、機械なんですか?そして私はなぜ大人の姿で転生したのでしょう」
「ええ、私たちはある問題に直面して、だから、今、結束せざるをえなくなっているの、そしてあなたは、確かに赤子の形で転生してきたわ、けれど、生まれたはいいものの、環境の変化によって今の今までほとんど寝たきりの生活をして、大人になったのよ、けれど心配しないで、あなたがこれまで無事だったように、あなたのいた世界のように戦争や貧困はもうないわ、リハビリさえすれば、あなたも自由、人口が少し少ないのだけれど、その分、限られた人たちの楽園ができているわ」
病院のような施設の内部は自由に歩きまわる事ができたので情報収集にはことかかなかった。しかし転生したとはいえ、男はがっかりした。
望んだような“田舎のスローライフ”“剣と魔法の世界”“魔王との闘い”“素敵なヒロイン”どれもかけているのだ。
それでも今は、この時代に来て満足している。なぜなら、事故を起こして記憶をうしなって生まれ変わったかと思えば、突然人類の全てが成熟しており、自分のような根暗なネガティブな人間をさえ優しく包み込んでくる、つまり自分を必要としているからだった。その施設を出て以降も、あらゆる人間が自分によくして微笑みかけて挨拶してくれる。地球環境悪化により生活圏はコロニー状に壁に覆われた個所にバリアをはってギリギリ保たれているため、面積にして2000キロ程度に限られているが、人口が少ないので、仕事に困ることもなく、あてがわれる、それもロボットが重労働をほとんどしているので、仕事といっても軽作業ばかり、
そう考えると男は、うれしくなった。考えようによってはこれも“なれる系転生もの”である、なぜなら、機械化といえばそれは、確かに自分より幾何か高齢の人間が、その中身であろう。つまり、彼らは立派な成熟したおとなである。どんな若い男であろうと女であろうと、彼らはすでに成熟して異世界転生したようなものだ。人となりもとてもいいし、賢い。失敗も経験していて、彼らもまた転生者にふさわしかった。しばらく暮らすうちに何一つ嫌な事のないその世界は男にとってもはや楽園だった。
そして男は満足して、そのおかげかどんどんおおらかになり、体重も太っていった。それでも、人々の態度はかわりなく、むしろ男は女によくもてた。
ところが、それは彼の視点から見ればの話である。人々はというと、実はずっと彼をいやいや監視していた。彼の寝ている時や気づかないときに集まったり、無線通信をして、話を合わせたり、彼に秘密が漏れないようにした。合言葉は
“彼が真実に気付く前に……事をなそう”
男には明かされていなかったが、この男は、実はただ、冷凍保存から目覚めただけの男だった。彼の両親は彼の死後、その事実を受け入れず全財産を使いコールドスリープだけを実行し未来人に彼の処置をまかせた。それがたまたま、すんなりうまくいったのだ。
そのすんなりうまく言った理由とはこうである。彼が来る前、本来は、金持ちだけの世界で、それでしばらくはうまくいっていたが、金持ちだけではどうにもならない、ある手詰まりの問題があった。
彼が目覚める以前の少し前、1%程度の富裕層の中でさらに格差が生まれる争いがおき、戦争がおきた。自分の体を機械化できたのは、そこで生き延びたほんのわずかな、超富裕層。村程度の人口しかない人類であった。そして、その間に地球環境の悪化が続き耐えきれなくなった人々は徐々に、機械化できていない人間から死んでいった。格差にまけた富裕層さえ、コールドスリープを実践しなかったものは死んでいったのだ。そこでおきたのが“遺伝子プールの崩壊”である。
つまり、少ない人口だけが生き残ったわけであり、その血筋や遺伝子はとても偏ったことになった。自分たちさえ生き延びればいいとおもっていた超富裕層は、そんなことを考えていなかったのだ。そして、問題は生じる。初めはこんな形で問題が生じた、機械化したとはいえ、長寿によって精神的に苦痛を感じる者たちが現れたのだ。
そして、自死も増えていった。そのため喫緊の課題として“次世代”をはぐくむ必要が生じてきたのだが“ほぼ近親者のみ”で血と遺伝子偏っていたので、生まれる子供たちは障害をもったり、短命である可能性が考えられた。困り果てた彼らが見つけたのは旧文明のある場所で奇跡的にコールドスリープが保たれていたその“男”であった。彼らは男を大事にし、男の前では人格者を演じ、男に気に入られるようにして、なんとか子種をかき集めている最中なのであった。
彼らはひっそり噂する。
「生身の人間とはなんと醜いのだろう」
「直接ふれるのはいやだから、代理アバターを使っていつも接触しているが、それでもいやだ」
「子供さえできれば彼は処分しよう、そして、子供はなるべく早く“我らの仲間”として育ち、彼が同意した時はじめて“機械化”しなければな」
「ああ、大丈夫だ、コールドスリープで生き延びた人類はまだいるようだから」
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