ギフトマン

ショー・ケン

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老婆エルド

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パルシュにとって、アレポは妹のような存在だった。小さなころはよく助けたり、いじめっ子から守ったりしていたが、いつしか立場は逆転していた。アレポはそこそこの能力が使えるし、魔力だけでいえば、平均より高いくらいあった。パルシュが冒険者になろうとしたときは周りの大人たちはアレポの方を推薦したくらいだった。



 それでもパルシュは譲れなかった、アレポの祖母、老婆エルドとの約束があったのだ。

「お前が偉大な冒険者になればパルシュは冒険者になる事をあきらめるだろう、あの子の事を頼んだ」

 アレポいわく

「彼女は冒険者になってはいけない最悪の素質をもっている」

 といっていた。それが彼女の祖母が冒険者となることを遠ざけようとした理由。



 ふと後ろをみる、アレポは泥だらけになっている。自分を助けるためにここまで、それに、彼(ノース)と妙な約束まで、結局彼女を助けるためにやったことが裏目に出て彼女を迷惑をかけている。



(このままじゃ……)

(やるか?)

 ふっとふりかえる。一瞬あの《トマス》の姿が木々の合間から見えたきがした。その声にあてられると自分の中の何か熱い感情が膨れ上がり、動機が激しくなるようだった。



(やるしかないか……)

 よろよろとよろけるパルシュ。やがてわざとらしくころぶ、そして立ち上がる瞬間に心をきめた。思い切りこの崖からとびおりる。

「なあ……今度の事であきらめたんだ、アレポ」

「……何?」

 足がすくんだ。それでも勢いよく足に力をいれ、とびだそうとした瞬間。

《ドンッ》

 足元から衝撃が走った。一瞬アレポに押されたのかと思うとそうじゃない。ノースがにやりとして自分にタックルしていたのがわかった。

(おわった……)

《ドスッ》

 空中で、意識がとまった。これが走馬灯か、と思った。だが違った。たしかに空中で自分の体はとまっている。青い魔力につつまれている。

「“停止”の魔法……覚えておいてよかった」

「!!」

 ノースが振り返る、ノースもまたパルシュにタックルをした格好で停止していた。ノースが言い放つ。

「あぶねえ……お前の魔術カ、アレポ、危うく落とされるところだった、ってお前……俺をどうやって戻すつもりなんだ、こいつはドジをして今落ちるとこだ、だが俺はこいつを助けようとしたのに、お前が余計な事をすれば……最悪俺だけは反動で戻るつもりだったが、その反動の筋肉をうまくつかわなきゃ……俺も落ちるだろ」

「あ……そうか」

「そうか!!じゃねえ、まったく、早く助けろ、俺だけ」

 ノースが悪びれもなくいう。

「……いいから、言う通りにして」

 パルシュがいうと、アレポは答えた。

「いやだ、それより、そうだよね、いい事考えた……」

「??」

「入れ替えの魔術、使おう」

「お前、何いって……」

 パルシュは、頭が混乱した。

「どういうこと?俺とノースをいれかえて」

「そう……このロクデナシを殺してしまおう……私ね、さっきの会話聞いてた、だから……こいつさえ殺せばすべて元通りでしょ?」

「そんな事をすれば、俺は村長の孫だ、お前たちがどうなるか……」

「ちょうどいいじゃん、私たち二人で冒険者になる」

「魔物の跋扈するこの世界でお前たちのような間抜けが生き残れるわけが!!」

「黙れよ、あんたに聞いてないんだ、あたしの大事な人を二度も殺そうとした人間に」

 びくっとするノース。それほどの迫力が、その時のアポスにはあった。

「どうする?パルシュ」

 そう尋ねられたとき、どきっとした。どこかその言葉には、奇妙な魔力が宿っている気がしたのだ。その背後に、ある人間を見たことも関係しているだろうが。

「やろう、やってしまおう」

「おい!!やめ!!」

「《入れ替え》」

《パシュンッ》

 その瞬間、ノースは宙へ、二人の位置は入れ替わり、パルシュをだきとめてころげた。

「あああああああ!!」



「これもまた、運命か……」

 ふと、顔を上げると、その二人を見下ろすようにトマスがそこにいた。
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