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印象記憶アプリ
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近未来。技術が発展したスマホにとあるアプリが実装された。
「印象記録アプリ」
人の印象、キャラクター、個性などを記録しておけるアプリである。これに登録するとどんな些細な出会いの人間の記録も記憶も呼び出せる。うたい文句はこうだった。
「街角でであったとき、同窓会で出会ったとき"あれ?だれだっけ"を防ぐアプリ、相手にも自分にも悲しい思いをさせなくて済みます」
今だってそうしたものは多いが、世の中には便利なアプリがふえた、人の役に立つアプリが。
ある女性もそれを長らく愛用していた。とても知的で賢い女性で、周囲から人気もあった。そしてこのアプリ同様、人の役に立つことを望み、仕事もそうしたものを選んだ。だがたった一つ、人の名前と顏を覚えるのが苦手で、このアプリを重宝していた。これで自分の欠点である他人への興味のなさを克服できるのだ。
彼女には家庭があり、小さな子供もおり、仕事が忙しい日々と賑やかな家庭の往復をしていたが、久々にリラックスをしようと、しばらくいけてなかった同窓会にでることに、高校時代の同窓会である。
彼女は、その年齢には珍しく会社で責任ある立場をまかされていた、だから同窓会にあまり顔をだせなかったのだが、その日も急の仕事が入り、夜遅くまで仕事をしていた。時計をみると、もはや会は中盤に差し掛かっているだろうと思われた。
彼女が珍しく同窓会に遅れてかけつけると、大勢でもりあがっており、自分を差し置いて盛り上がっていることや、友人たちや昔なじみに久々にであえることに興奮し、脅かしてやろうかと思いはしたが、そんな中でもないと思いつつ店に入る。とやけに店内がもりあがっており、最も盛り上がっていたのは端っこの座敷席の同僚たちだった。これまであんなに盛り上がっていたことがあっただろうか、と思う。なにせ割と物静かで真面目な人たちが多いクラスだったから。
会話の内容がきになり、それまた珍しく聞き耳を立てる。影からみていると皆が「印象記録アプリ」を起動し、その特徴のメモやエピソードなどをひきだし、彼女の事を思い出している最中だった。
「彼女、珍しく遅刻だね」
昔は太っていて、今は超美人に変貌している親友だったA子がいっていた。女性は自分の事を気にかけてくれている。とうれしくおもった。
次に同級生女子がいう。
「彼女のことは、アプリがなくても思い出せる、でも細かなエピソードはやっぱりこれが必要だね」
「そうね、楽しいわ、一つ一つのエピソードが」
彼女自信も同感だった。自分の学生時代の一つ一つが宝物で、自分は自分の事をすべて覚えているからだ、皆と一緒になつかしみながら、皆と出会えることのうれしく思い、それら一つ一つについて話をしようと一歩を踏み出したときだった。A子がいった
「でもさあ、"ザ・委員長タイプ"だったよね、うざいくらいに」
周囲の女性たちが同調する。
「私たちの細かい情報まで把握して、余計な事にまで口出ししていて"毒親"っていう影のあだ名がついていたわ」
男たちがいう。
「八方美人ていう感じで、"自分"がない感じだったよな、あれほど自分のない人間はほかにいないさ、いくらこれに登録してもな」
「ああ、大手企業に就職したって話だが、あんなに四六時中いろんな人間に気を使って生きていてたのしいのかねえ」
「よく相談にのってくれたり、先生との仲介をしてくれたけど、結局他人の目線にはなっても自分が全く非のない存在だから、人を見下していたんだろうな、彼女の仲介や、相談は結局彼女自身に何のあらがないって自慢のような事が見え透いて見えるものだった」
女性はひどく落ち込んだ、学生の自分にはそんな風に思われていたとは、忘れていられるより悲しい。彼女は、素で人に気を使うのだ、自分がないのだって人をおもってのこと、信頼できる仲間には、もっとはっちゃけるのに……彼女はその後、この同窓会には、二度と顔を出さないことに決めた。
「印象記録アプリ」
人の印象、キャラクター、個性などを記録しておけるアプリである。これに登録するとどんな些細な出会いの人間の記録も記憶も呼び出せる。うたい文句はこうだった。
「街角でであったとき、同窓会で出会ったとき"あれ?だれだっけ"を防ぐアプリ、相手にも自分にも悲しい思いをさせなくて済みます」
今だってそうしたものは多いが、世の中には便利なアプリがふえた、人の役に立つアプリが。
ある女性もそれを長らく愛用していた。とても知的で賢い女性で、周囲から人気もあった。そしてこのアプリ同様、人の役に立つことを望み、仕事もそうしたものを選んだ。だがたった一つ、人の名前と顏を覚えるのが苦手で、このアプリを重宝していた。これで自分の欠点である他人への興味のなさを克服できるのだ。
彼女には家庭があり、小さな子供もおり、仕事が忙しい日々と賑やかな家庭の往復をしていたが、久々にリラックスをしようと、しばらくいけてなかった同窓会にでることに、高校時代の同窓会である。
彼女は、その年齢には珍しく会社で責任ある立場をまかされていた、だから同窓会にあまり顔をだせなかったのだが、その日も急の仕事が入り、夜遅くまで仕事をしていた。時計をみると、もはや会は中盤に差し掛かっているだろうと思われた。
彼女が珍しく同窓会に遅れてかけつけると、大勢でもりあがっており、自分を差し置いて盛り上がっていることや、友人たちや昔なじみに久々にであえることに興奮し、脅かしてやろうかと思いはしたが、そんな中でもないと思いつつ店に入る。とやけに店内がもりあがっており、最も盛り上がっていたのは端っこの座敷席の同僚たちだった。これまであんなに盛り上がっていたことがあっただろうか、と思う。なにせ割と物静かで真面目な人たちが多いクラスだったから。
会話の内容がきになり、それまた珍しく聞き耳を立てる。影からみていると皆が「印象記録アプリ」を起動し、その特徴のメモやエピソードなどをひきだし、彼女の事を思い出している最中だった。
「彼女、珍しく遅刻だね」
昔は太っていて、今は超美人に変貌している親友だったA子がいっていた。女性は自分の事を気にかけてくれている。とうれしくおもった。
次に同級生女子がいう。
「彼女のことは、アプリがなくても思い出せる、でも細かなエピソードはやっぱりこれが必要だね」
「そうね、楽しいわ、一つ一つのエピソードが」
彼女自信も同感だった。自分の学生時代の一つ一つが宝物で、自分は自分の事をすべて覚えているからだ、皆と一緒になつかしみながら、皆と出会えることのうれしく思い、それら一つ一つについて話をしようと一歩を踏み出したときだった。A子がいった
「でもさあ、"ザ・委員長タイプ"だったよね、うざいくらいに」
周囲の女性たちが同調する。
「私たちの細かい情報まで把握して、余計な事にまで口出ししていて"毒親"っていう影のあだ名がついていたわ」
男たちがいう。
「八方美人ていう感じで、"自分"がない感じだったよな、あれほど自分のない人間はほかにいないさ、いくらこれに登録してもな」
「ああ、大手企業に就職したって話だが、あんなに四六時中いろんな人間に気を使って生きていてたのしいのかねえ」
「よく相談にのってくれたり、先生との仲介をしてくれたけど、結局他人の目線にはなっても自分が全く非のない存在だから、人を見下していたんだろうな、彼女の仲介や、相談は結局彼女自身に何のあらがないって自慢のような事が見え透いて見えるものだった」
女性はひどく落ち込んだ、学生の自分にはそんな風に思われていたとは、忘れていられるより悲しい。彼女は、素で人に気を使うのだ、自分がないのだって人をおもってのこと、信頼できる仲間には、もっとはっちゃけるのに……彼女はその後、この同窓会には、二度と顔を出さないことに決めた。
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