哀れな超能力者

哀れな超能力者

ある超能力者。多くの人の命を予知や予言によって救い、人々から慕われているものの、最後は難病に苦しみ、また体のあちこちに常人ではありえないほどの代償がともなった。異常な老化、欠損。そしてやがて人々に惜しまれながら死んでしまった。

その超能力者は師匠がおり、これもまた偉大な人物だったが、この弟子にくらべて救う人間を制限していた。その選別も本人の気に入る気に入らないでしかないという。

別の弟子が、酔った席でついそのことを当人にぶちまけてしまった。
「どうして、彼は偉大な人物なのにあんな悲惨な最後を迎えたのですか」
師匠は答えた。
「自分が愛せない人間には、結局、自分の命や人生、魂を捧げたいとは思わないものだ、そうした思いが"能力"の代償になる」
「でも、彼は……聖人でした」
　師匠は、それには深く同意した。
「私も、彼は聖人だと思う、だがしかし、そんな彼でさえ、人のために自分を犠牲にするときにはその彼らに対する悪意や怒りを抑えることはできなかったのだ、それが僅かにでもある限り、自分を蝕むのだ」