キャラクター作家

ショー・ケン

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キャラクター作家

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 売れない女性作家。家賃も滞納気味。人にかりをつくったばかり。しかし近所で愛され、好かれている。その理由を尋ねても誰も教えてくれない。ある作家志望の男がなぜ彼女がそこまで愛され曲りなりにも専業作家として暮らしていけているのかを探った。まず、彼女の家の直ぐ傍にすみ、状況を探ることにした。彼は大学生で、自由な時間も多かったので、情報はすぐに集まったしいろんなところに顔を出し、作家として情報収集しているという嘘をつき人々の本音や内情を知ろうとした。

 まず第一の関門、近所の人々などに、彼女の小説が好きかと尋ねる。
「いや?別に」
「ひどいもんだね、支離滅裂っていうか」
「どうしてあれで作家ができるのか」
「ああ、たまにいい小説も書くんだよ、まあ素人にはわからないかもしれないがね、有名作家に推薦される作品はいい作品が多い」
 第二の関門。
「僕のことをしっていますか、僕は、最近こういう本をだして」
 作家であると自称する。詐欺である。人々の小説に対する興味を聞き出し"ある傾向を割り出す"
「ふむ知らんな」
「興味ないねえ」
 そうそうそこまでの小説好きはみつからない。ふむ、と妙に納得する男。第三の関門はすでに突破してある。彼は彼女以外の小説を読んでそこに彼女の”秘密”をついに見つけていた。

 ある路地を歩いてメモを確かめていると、大声で叫ぶ女性の声。
「そこで何をしているの?」
「!!」
 そこで彼女にみつかり、逃げ出した。つかまって、彼女がいった。
「ねえ、あなた私をストーキングしている人でしょう、それに、作家志望なんでしょ?私いまスランプなのよ、どうやってモチベがわいてくるか、おしえてくれない?」
「え……??いったいどういう」
「私はねえ、人に狂っているとよくいわれるけれど、あなたが誰でも構わない、私のダメな創作のヒントになるものならね、そうやって私は、創作をつづけてきた、おかげで、ごくたまにヒットがあり、ギリギリ食いつないでいる、チャンスは逃せないわ」
 女性作家の目は、まるで獲物をみつけた獣の用だった。 

 その夜奇妙なことに、とあるバーで二人で飲んだ。男は女性作家にあらいざらい話した。
「僕は、つい最近ある雑誌の小説大賞で応募し大賞をとりまして」
女性作家はわらった。
「ふっ、よくもまあ、そうぬけぬけと嘘を、まあ創作意欲があるのはいいことだけど」
「その内容はというと、ある女性作家が、とある理由で様々な人から監視されているという話で」
「ふむふむ、きになるわね、それで?」
「その作家の実力は創作以外にあるんです」
「は?」
「同じ作家業の男がその作家を調べて回る、すると面白いことがわかった、その人の人生はドラマティックなものだった、彼女は魅力的な人物だったが、ひどく人に影響されやすかった、彼女は気づかないうちに、いつも他人になりきってしまう、いろんな人の調査をしたり過去の文献を読み漁ると"その人になりきる"クセがあった。それが彼女の不幸だった、彼女はその瞬間作家である事をわすれてしまう、作品はひどいもので、設定や世界観に魅力はなく、人物描写だけは他の物より得意だったがそれもほかの作家と比べて優れたところはない、彼女は彼女の性格のせいで、現実で様々な困難にあう、浮気、離婚、シングルマザー化、そして、周囲の人間もまあそうだ、しかし人の考えに敏感なので、いつの間にか、本人も気づかずに、周囲の人やかかわる人が、暗く不運で辛いときにはその人になりきり不幸な状態や暗い状態になり、明るい気分や調子がいい時には、彼女の明るくなり運気もまたむいてくる、だから人から好かれた、あらゆる人に意欲をもたらすほどに、彼女は本人よりも本人らしく辛い時にはつらく、楽しい時には明るくなるので」
「へえ、要するに人の不幸は蜜の味ってこと?」
「それとも違いますね、”彼女は過剰に他者になりきり他者を演じる”彼女の境遇自体が他人の生き写しになるのです、普通人は不幸とも幸福ともある程度見切りをつけ、それをじっくりみないようにするけれど、彼女の演技はこく、現実のひとびとが深く体感したがらない苦しみや過剰な喜びを変わりに請け負ってくれる、そうすることで人は、ひどく落ち込んだり、ひどく調子ずいて失敗することをさけられる、ゆえに彼女はは存在自体が周囲から大事にされている……彼女は”他人に意欲を与える存在です”でも、そしてその様子が、数々の人々の目に染まる。”作家の目に”彼女は作家でありながら、自分がない、それ自体が不幸だし、なんて絵になる、なんて個性的なのか、彼女は作家ではなく役者だと、やがて数々の作家が彼女を資料集めに調査し、作家の多くがその作家をモデルにした作品を多く発表するので、やがて創作がすべて似たようなものになっていく……そして彼女のもとに……真実を告げるものが現れる」
「……変な話……でも私にも似たような経験があるわね、でも現実にはありえないわ、私のもとに数々の作家なんて訪れていないもの」
 と話し出した。
「私いつもいろんな不幸に見舞われているわ、借金ができたり男に逃げられたり、作品が売れないとおもったら突然妙なヒットをして生きながらえたり、車にひかれて死にそうな目にあったら、見ず知らずのひとに車道にひきもどされたこともあったわ、でも、ずっと誰かに見守られ、守られている気がするの、だからいいのよ、まあ、不満の多い人生だけどそうした、神、精霊みたいな“未知のメンター”に守られているからね」
 やがて酔いつぶれて寝てしまった女性作家。男は後ろを振り向く。ここ最近この近辺でずっと調査していた彼にはわかった。彼らは全員作家だと。

 彼らこそ"彼女"のいうメンター。彼女のずば抜けた”人になり切る”能力と、様々な出来事へのリアクション能力を買っていて、彼女のピンチにかけつけてはいかさず、殺さず、悲劇と喜劇と苦痛を与えているのだ。
 彼らにとっては"彼女こそがキャラクター"なのだ。そう、男の言っていた話は本当で、同時期に発表されたあらゆる作品に"彼女によく似た存在"が確認され、男の創作意欲になっていたのだ。
 やがて、男が彼らに合図を送ると周りの作家連中が男のもとにあつまってきて、封筒を渡した。男が確認すると大金がしくまれていた。そして彼らはいった。
「君はこれから我々の仲間入りだ、うまく彼女の恋人を演じてくれたまえ、彼女に真相をしらせず、創作意欲をもたしたまま、生かさず殺さずするのだ、決してどちらに振れてはいけない、彼女は我々の創作活動の生命線なのだ、スランプに悩む我々の、我々は彼女のように落ちぶれることがない、それが我々の自信なのだ」
 
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