導きの理由

ショー・ケン

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導きの理由

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 ある男性Aさんには高校生のころ、仲のいい女の友人Bがいた。とてもかわいい女性で、女友達などというものは初めてできた。かなりいい関係で、信頼のおける間柄。しかし、男女の友情が成立するという確信はあった。世間でいわれているような、男女の間柄では友情を持つのは厳しいという事もなく、さっぱりとした関係だった。

 しかし、ある時、友人たちからBの秘密を教えられた。なんでも彼女は霊能力をもっているらしい。そこで、ふと思い出したことがあった。Aさん自身も霊能力があり、ぼんやりとしたものだったが、そう、入学式の時目が合ってお互い言葉は交わさずとも、雰囲気があいそうだと思ったからひかれあったということ。それも納得だ。

 運命的なものを感じて、心は戸惑ったが、その後のBさんの行動がさらにAさんを惑わした。別の女生徒からきいたのだが、どうやら女子限定で無料でお祓いをしているらしい。望まれれば縁切りもするし、神様への願いの仕方も教えてくれるという。

 彼女は評判らしく、嫌な人がバイト先からいなくなったとか、悪い霊が払われたことで病気がよくなっただの、様々な噂がたった。

 それでAさんも、何気なしに、休日一緒にでかけているときに、ぽつりと彼女にお願いしてみた
「なあ、俺の願いをかなえてくれないか?俺、女子に持てたことないから、もててみたいんだよ、それに金運も上げたい、それから、バイト先に嫌な客がくるから、こないようにしたい、神様へのお願いってどうすればいいんだ?」
 
 するとBさんはため息をついた。そしていった。
「それなりの覚悟がいるわよ?いいわね?」
「あ、ああ」
 Aさんは、Bさんにいわれるがままに、ある神社を訪ねた。それはAさんの実家の裏手にある神社で、Bさんはここで、いつも願いをかなえているらしい。

 Aさんがそこでお願い事をする。その瞬間、頭の中がぐらぐらとして、一瞬倒れそうになっていた。
「大丈夫?」 
 Bさんが脇で抱える。

 ふと、頭の中でぐらぐらといろんな考えが渦巻いた。そもそもこの〝願い〟は、Aさんの中にある“雑念”を取り払うためだった。というのも、AさんはBさんのやさしさを知る度に、彼女に想いを寄せるようになっていたのだ。

 しかし、友情も壊したくない。何より嫌われるのが怖かった。だから、ほかの女性と付き合いでもはじめれば、と今回の事をお願いしたのだ。そして、彼が立ち上がるとき、ぽつり、と思ってもいない事を口にする。

「ありがとう、大好きだ」

 Bさんは、ふと呆然として、彼のてをはなし、家に走っていってしまった。


 それからしばらくBさんは学校に来なくなってしまった。悪い事をしたか、と思ったが、退屈でうなだれている休み時間に、別のクラスの絡みのない女生徒が自分のところに尋ねてきて、いった。
「ねえ、あのこ、Bさんだけどさ、大丈夫かな?」
「何が?」
「私ね、霊感があるのよ、母親が霊感があって……」
「ふぅん」
 半分疑いながらそのこの話を聞く。
「あの子……一部の人の願いをかなえているでしょう、それも無性で、あなた、おかしいと思わないの?」
「何?」
「神様は、願いに見返りを求めるものよ、呪いや縁切りなんて、代償があるのがあたりまえ、たしかに彼女自身はお願いをしていないけれど、噂だと彼女、彼女の”気に入らない人間”にだけ、願いをかなえているみたいよ、何か、目論見があるんじゃないかしら、つまり彼女は”願い”をかなえるのではなく、“代償”を他人に与えようとしているんじゃ」
「……」
 Aさんが睨め付けると、その子は、たじろいで、そそくさといってしまった。


 その日の帰り、Bさんの家に向かった。しかし、居留守か、チャイムを押しても人はでてこない。仕方なくかえろうとすると、裏山が目に入った。
(あの場所へいってみよう)

 なんとなくそう思い立ち、裏山に向かう、神社の前に立ちぼーっとしていると、背後から草を踏む音がきこえて、振り返ろうとした瞬間だった。
《ゴツン!!》
 思い切り何か固いもの殴られた感触があった。意識が途切れそうになる前に、Bさんが、太い木の枝をもってたっていた。
「ごめんね……」
 Bさんはそうつぶやいた。

 その日のうちに、Bさんは夜逃げをしたようだ。Aさんが目が覚め家にかえったら夜遅くで家族は心配していたのだが、彼はそれどころじゃなかった。目が覚めると彼はある手紙を握っていたのだそうだ。そこにはBさんの筆跡でこう書かれていた。

「ごめんなさい、”これまでの事やこれからの事は、私の霊感で大体みえていた、だからあなたの願いはかなえたくなかった”……でも、どうしようもなかった。A、初めてあなたに出会った時"運命"を感じたの、それはロマンチックな理由じゃない、"良い生贄"になると思って、私は小さいころ、いろんな人にいじめをうけていた、生意気だって、幽霊が見えるから、変な事をいっていたのもあったかも、男子のいじめもひどかった、力が強いし、なかには私に好意があると思える人もいたけれど、結局いじめに加担した」

「それで男子が怖くなった、あなたと出会うまで、あなたに出会ってすべてが変わった、けれど、これは私が選べる結末じゃない、私……子供の頃、この神様にお願い事をしたの、神様は代償を求めた、ここの神様は女神さまでね、こういったわ"あなたの将来の伴侶となる男を、私の夫とすること、私は、自分の事でせいいっぱいで、代償などお構いなしに願った、"願いはかなったわ、私をいじめた子は全部、転校したか、精神を病んだか、大きな事故にあって、私を恐れるようになった、でも”神様”は私に”生贄”を要求したわ、そう、ここで願いをかなえる人間をつれてくることと、”あなた”ね」

 休み時間に声をかけてくれたあの子の言う通り、Bさんは初めから”見返り”をもとめて人を助けていたのだろうか。そのことが、Aさんはショックだった。

 Bさんは、その先どうなったか消息不明、その後AさんはBさんがいなくなったことで、味気ない高校生活をおくったそうだ。Bさんの家の裏手の管理者は、Aさんの親戚で、Bさんがいなくなったあと、神社は取り壊されたのだが、神様自体は、そのままそこにいるのだろう。

 何十年もたち、それからAさんは、彼は“山の女神様”に気に入られて、30代の現在にいたるまで、彼女がいないらしい。できてもすぐ分かれるし結婚なんてもってのほか。
「男女の友情って、成立しないのかもしれないですね」
 ポツリ、とAさんはつぶやいた。
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