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心霊の願い
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ある地方で、心霊現象が多発する場所がある。それは廃病院で、あまりにもひどいというので、その土地の所有者が霊媒師に除霊をお願いした。
「ここにおられる霊の方々よ、何でも願いをかなえよう、成仏したまえ」
すると霊たちは、はっきりと姿を現し始めた。何十、何百と、初めに約束をしてしまったために、霊媒師はその霊たちを一人ひとり除霊する事になった。
その一つ一つの願いを一人でするわけにはいかない、弟子などに頼んで、霊たちの頼みをきく。霊媒師いわく、ここはこの地域の霊のたまり場、かつて、ここで死んだ霊媒師が、依頼で受けた除霊の仕事を、除霊をせず、霊たちをその場から離れさせ、ここに集めることで“除霊した”というていで報酬をもらっていたのではないかという。ずさんな話だ。といって、霊媒師は自分の死ぬまで、その廃病院の供養をする事を決意したのだ。
だが、その時は案外早くやってきた。別の仕事の最中に悪霊にとりつかれ、ぽっくり霊媒師が死んでしまった。霊媒師は死後、件の廃病院にいって、霊たちを説得した。
「お前たちの頼みを聞いてやれない、かわりに、お前たちは、人の頼みを聞いてやるといい、すると彼らもお前たちの頼みを聞いてくれるかもしれない」
それは良かれと思っての事だった。きっとこうすることで、人間と心霊、双方の理解が深まるかもしれない。そう思ってその霊媒師は、それを言い残して成仏した。
そこで、霊たちは、その廃病院で、頼みごとをする人間のいう事を聞いてなんでもできうる限り願いをかなえてやるようになった。だがそこにとどまる霊はふえても成仏する霊は増えなかった。というのも、その廃病院自体がただの願いごとをする場所になり、祠のようなものもつくられたはいいものの、だれも霊たちの願いをかなえてやらなかったからだそうだ。
ある時霊は怒り狂い、願いに来る人間を祟り殺してしまった。そのおかげで流行がおわり、祠がすたれると、別の霊媒師がその場所へきて、そこにあった出来事の一部始終を話した。
「ここでは、誰かが願いをかなえてくれることをまっている“供養まち”の霊がたくさんいる、きちんと祭り、成仏していかなければ、この地域全員が不幸になる」
やがて人々は、祠に来て、霊媒師の言伝で成仏したい霊たちの願いをかなえるようになったが、それでも一方的に願いをする人間もおいた、元来寺や祠や神社は願い事をする場でなかったが、人々は一方的に願いをぶつけることもある。霊たちもその数があまりにも膨大で、以来、その地域では死を恐れる人間や自殺を恐れる人間が増え、自殺率が激減したそうだ。彼らの恐れは
「死んだら、人の頼みを聞いても自分の頼みを聞いてもらえず、成仏もできず、成仏待ちの列に並ぶことになる」
ことだった。
「ここにおられる霊の方々よ、何でも願いをかなえよう、成仏したまえ」
すると霊たちは、はっきりと姿を現し始めた。何十、何百と、初めに約束をしてしまったために、霊媒師はその霊たちを一人ひとり除霊する事になった。
その一つ一つの願いを一人でするわけにはいかない、弟子などに頼んで、霊たちの頼みをきく。霊媒師いわく、ここはこの地域の霊のたまり場、かつて、ここで死んだ霊媒師が、依頼で受けた除霊の仕事を、除霊をせず、霊たちをその場から離れさせ、ここに集めることで“除霊した”というていで報酬をもらっていたのではないかという。ずさんな話だ。といって、霊媒師は自分の死ぬまで、その廃病院の供養をする事を決意したのだ。
だが、その時は案外早くやってきた。別の仕事の最中に悪霊にとりつかれ、ぽっくり霊媒師が死んでしまった。霊媒師は死後、件の廃病院にいって、霊たちを説得した。
「お前たちの頼みを聞いてやれない、かわりに、お前たちは、人の頼みを聞いてやるといい、すると彼らもお前たちの頼みを聞いてくれるかもしれない」
それは良かれと思っての事だった。きっとこうすることで、人間と心霊、双方の理解が深まるかもしれない。そう思ってその霊媒師は、それを言い残して成仏した。
そこで、霊たちは、その廃病院で、頼みごとをする人間のいう事を聞いてなんでもできうる限り願いをかなえてやるようになった。だがそこにとどまる霊はふえても成仏する霊は増えなかった。というのも、その廃病院自体がただの願いごとをする場所になり、祠のようなものもつくられたはいいものの、だれも霊たちの願いをかなえてやらなかったからだそうだ。
ある時霊は怒り狂い、願いに来る人間を祟り殺してしまった。そのおかげで流行がおわり、祠がすたれると、別の霊媒師がその場所へきて、そこにあった出来事の一部始終を話した。
「ここでは、誰かが願いをかなえてくれることをまっている“供養まち”の霊がたくさんいる、きちんと祭り、成仏していかなければ、この地域全員が不幸になる」
やがて人々は、祠に来て、霊媒師の言伝で成仏したい霊たちの願いをかなえるようになったが、それでも一方的に願いをする人間もおいた、元来寺や祠や神社は願い事をする場でなかったが、人々は一方的に願いをぶつけることもある。霊たちもその数があまりにも膨大で、以来、その地域では死を恐れる人間や自殺を恐れる人間が増え、自殺率が激減したそうだ。彼らの恐れは
「死んだら、人の頼みを聞いても自分の頼みを聞いてもらえず、成仏もできず、成仏待ちの列に並ぶことになる」
ことだった。
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