呪い返し

ショー・ケン

文字の大きさ
1 / 1

呪い返し

しおりを挟む
 ある人間Bを恨み、嫉妬している男A。それもそのはず。彼はゴーストライターであり、その男に自分の未来を潰されたも当然だからだ。本来自分の作品として発表するはずだったものが、騙され、なあなあにされ、彼の作品とされ、爆発的ヒットを記録した。しかし、印税はほとんど入ってこなかった。

 彼のくだらない原案をほとんどすべて書き直し、手直ししたのは自分だったのに。彼には、様々な呪いをかけたし、邪悪な幽霊を彼のところにけしかけたりした。それでも彼はピンピンとしており、近頃では自分に呪いをかけているらしく、体調が悪い。しかし、あの男、どういうつもりだ。自分に作品を書かせておきながら、ありとあらゆる手で自分の創作物が世に出ることを邪魔してくる。

 マルチタレントだか、兼業作家タレントだか自称しているが、ろくなものではない、今に痛い目に見せてやる、といって、彼はある呪術師の元を訪れた。そして“呪いかえし”の術を教わり、実行したのだ。動物の血で風呂敷大の紙に文様と文字をかき、その上で、己を呪うものに呪いを返す文言をとなえる。その祈りは一昼夜続いた。
 ふと、胸元に熱さを感じる。これが呪いを返している合図だという。自分の中の悪いものを熱に変換して解き放つのだと、しばらくして熱さは静かになった、そしてつけっぱなしのテレビからニュースが流れる。
「マルチタレントBが突然倒れ……」
 やった!!とガッツポーズをする。これで報われる。自分の作家人生。ふと、Bと初めてあったときの事を思い出した。デビューしたばかりだが、大作を一つ書き上げたばかりだった自分に、小説の事を一からおしえてくれというので優しくおしえた。そして自分の事も話したっけ。
「俺は、名誉や金が目的なんかじゃない、人の役に立てればいいんだ」
 ふ、その思いは今も変わらない、だが、利用されるのはいいものじゃない。それに、人生のつらさも知らない小僧に。何がわかる。俺がどれほど苦労して、最難関の高校や大学を出て、小説をかきあげているのかを。

 ふと、目が覚めた。いつのまにか酒をのんで泥酔していたようでねむっていた。そこでニュースが流れる。
「Bが奇跡的に回復しました」
 そのニュースに、彼の信頼する、あの呪術師の映像がうつっていた。Bの隣で手を振って笑っている。
「どういうことだ!!そちら側についたのか!!いったいなぜ!!」
 すぐに胸元を熱い痛みがつらぬいた、呼吸が苦しい、血が止まっているような感覚があり、寒気が全身を襲う。息ができない。
「くっ……」
 その言葉が、Aの吐いた最後の言葉だった。

 Bは、病院から自宅に戻る最中、件の呪術師に語りかける。
「いいのですか?本当に、彼はあなたに相当な金額をだしていたのでしょう」
「いえいえ、あなたほどではありません、もともと父親の借金をかかえていたあなたは、中学、高校と苦労して働かれ、整形したり、人気になる術を身に着けたり、そして人から好かれる才能をえた、何より、借金をしてまで、私に多額の報酬を払ってくれた」
「まさか……、先払いしていた“彼から守ってくれ”という契約がきいたとは、それにこんなに早く呪いを返せるのですね、呪い返し返しですか」
「ええ、まあ、そもそも、彼には呪い返しなどしていませんから、一度もね」
「え?そうなんですか」
「ええ、彼の不調はそもそも、彼に帰ってきた生霊のせいです」
「は!生霊返しですか」
「そう、生霊は返しましたよ、でも、それだけです、彼は生霊が帰ってきたのを呪いをかけられたと考えた、その時点で私や呪術師の匂いを感じてはいたのでしょうが、私を信じすぎましたね、誰も彼をのろっていないのですから、呪い返しをしたら、そう、彼に呪いが帰ってくるのです」
 くくく、と笑う呪術師、ひきつるB、やがて窓の外から夜の景色をみて、
「でも、人が死んだのはつらいなあ」
 と落ち込むBに、呪術師はいった。
「まあ、人生のつらさもしらない小僧には、お金の駆け引きの世界の残酷さがわからないという事です」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

『日常の中の怪異』 ― 私が体験してきた不思議な話 ―

かゆると
ホラー
これは私が これまでの人生で体験してきた 不思議な出来事の記録です。 実体験を元に 一部フィクションを交えて書いています。

眠らなかった5分間

皐月ハル
ホラー
これは私の身に起こった本当の出来事です。 友だちの名前は仮名で、モールの名前、国道県道の名前は伏せていますが、それ以外は、起きたことをそのまま書いたものです。 私は、 もしかしたら、少しだけ霊感があるかもー? な、体験がいくつかあるのですが、 これは、もし私に霊感がなかったら… どうなってたんだろう、と怖ろしくなる出来事でした。 それからは、昼間であってもその道を通ることはありません。 私の他の作品(BLだけれども😅)を読んだことがある方なら、どこの県の話かはわかるでしょうし、 その県の住人なら、どこら辺で起きた話かもわかると思います。 心当たりがある方は、気を付けて。

合宿先での恐怖体験

紫苑
ホラー
本当にあった怖い話です…

【1話完結】5分で人の怖さにゾッとする話

風上すちこ
ホラー
5分程度で読める1話完結のショートショートを載せていきます。主に、ヒトコワなホラー話です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...