にらむ女

ショー・ケン

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にらむ女

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Aさんは辟易していた。覗きや痴漢を疑われつづけ、その覚えがないのに証拠ばかりがつきつけられる。自分のバックの中に盗んだ覚えのないシャツやら下着が入っていたり、アリバイ的に自分しか覗けないときに、人に覗かれ写真をとられ、その写真をメールで送り付けられたと訴える女性社員がいたり。

彼はバリバリの営業職だったが、会社での居場所がどんどん悪くなっていった。
「こんなはずじゃなかったのに、こんな……」
近頃では自分の居場所はトイレだった。そこでも奇妙な経験がある。夜、残業をしていると女をみるのだ。自分にだけ見える女。明らかに幽霊なのだが、その時はもう疲れ果てていてその奇妙なものさえ、“幻覚だ”と片付けていた。

女は自分をにらめつけている、トイレをしている間中ずっとだ。人間だったら向こうのほうが痴漢だ……。
「なんで自分ばっかり」
 あるとき、幽霊の姿がはっきりあらわれたときに、怒りにまかせてその女性をどなりつけた。
「何だっていうんだ、幽霊もが俺の不正を疑うのか!!」
バン!!と背後の壁をたたきつける。
 その時だった、妙な感触があり、違和感をもった。壁をつきやぶってしまったのだ。
(くそ、またやっちまった、いよいよこの職場はやめようか……)
 たちあがろうとしたとき、睨む女は自分の背後を指さした。自分が振り返る。そこには盗聴器や小型カメラが仕掛けられていた。

「これは……?」
 警察の調査ですぐに犯人が見つかった、同僚の女性だ。さらに詳しく調査をすると、痴漢まがいの事をしたり、女子社員に嫌がらせをしていたのは彼女だったことが判明する。


さらに怖いのが、その女性社員がかつてやっていたこと、カメラと盗聴器は女性のトイレにもあり、その盗撮映像をほかの社員に送りまくっていたというのだ。つまり、彼女の犯行をしりながら、他の社員はそのことをだまっていた。

あまりにその職場が気持ち悪かったので、Aさんはすぐに退職したという。あのときトイレに現れた女は、一体誰なのだろうか、彼女の盗撮によって被害を受けた女性の生霊か、それとも命を絶った人間か、それも、知りたくもないという。


なにせ捕まった同僚は取り調べで
「好きな人や気に入った人が苦しんでいる姿や疑われている姿をみるのが楽しかった」
と話していたという。
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